5.接触

「さてと。何処から手をつけようかなぁ〜」
町田とは別行動をとり、情報を収集するべく、屋良は学校の近くをウロウロと歩きながら辺りを見回していた。
「...やっぱり、お姉さま達が狙い目って感じ?」
不図思いつき、フフと笑って、屋良は走り出した。
学校も終わり、ショッピングも終わり、少しスウィーツでも食べて行こうかなぁ〜的に店に入っている先輩達を早速見つけた。
「ラッキー♪僕ってば凄くない?」
誰に聞いてるのかわからないが、一人で満足し、屋良は彼女達が窓際の席に座っている事にも感謝した。
コンコン。
窓を叩くと、おしゃべりに夢中になっていた彼女達が一斉に此方を向く。
「せ〜んぱい♪」
ニコ〜っと笑い小首をかしげる。
「屋良君じゃない〜!!どうしたの?入っておいでよ〜奢ってあげるから」
手招きされて
「えぇ〜、そんな悪いしぃ〜、そんなつもりぢゃなかったんだけどぉ〜、ぢゃあお言葉に甘えて〜、先輩達って、超優しい〜♪」
なんていいながら、気がつけばもう店の中に入ってきて、すっかり彼女達の輪の中に加わっていた。
「屋良君、何食べる?」
聞かれて、そうそう別に食べたいわけでもないのだが...
「うんと...僕、チョコクレープvv」
と、とっさに町田の大好物を上げてしまう辺り、意味なく町田に懐いてしまっている習性が顔を出してしまう。
「屋良君、可愛い〜♪」
おかげで、演出効果も得られてしまう。

僕って...罪作り〜ってヤツ?

普段は可愛いと言われることが大嫌いだが、こんな時には最大限に利用する。
一番年下の屋良は、一番計算高かったりもするのだ。
しかも、無意識だから性質が悪い。

「ねぇねぇ、先輩〜。僕、聞きたい事あるんだけどぉ」

上目遣いで相手を見つめ、舌っ足らずな声で問いかければ、今まで答えを引き出せなかった相手は皆無だ。
もちろん、男女問わず。この攻撃にはなかなか勝てないらしい。

ま、こんなもんかな?

聞いてもいない事までドンドン喋ってくれる先輩方に感謝しつつ、屋良は出てきたクレープを頬張り、ニッコリと微笑んだ。
「美味しい〜♪」

サービスも忘れないところが、屋良の計算高さの一つである。
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「あれ、町田君?」
学校の近くに戻りフラフラと部活帰りを捕まえようとしていた町田に、同じクラスのヤツが声をかけた。
「部活、終わったの?」
「っつーか、お前何やってんの?」
「ん...ちょっと」
少し視線をそらせる。
「どうしたんだよ。悩み事か?相談に乗ってやるぞ?」
思わず手を差し伸べてしまう。

何故か守ってあげたくなる、助けてあげたくなる。
そう思わせてしまうのが、町田の武器の一つだ。
これも天然だから性質が悪い。
「ちょっと、知りたい事があって...詳しく、知ってる人探してるんだ」
お願い!!
っと、眼で訴えられれば、もう勝てる人間はいない。
「よし、手伝ってやるよ。どんな事だ?」

案外、簡単そうかも。

町田は、そう思いながらニッコリと微笑んだ。
「ありがとう。助かるよ」

駄目押しの笑顔で100%町田の思うままに情報が入ってくる。

光一君、待っててね♪

...町田の思考回路は最終的に全てが光一へと繋がっているのだ。
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「此処かぁ」
秋山はその頃、時計台へとたどり着いていた。
一見、何の変哲もない古い時計台。
しかし、目の前まで近づいたと同時に、秋山は後ろへと飛びのいた。
「...不吉」
邪悪なオーラを感じる。
まだ、微かにだが...
「普通の人間にはわからないだろうけど...これは...」
危険だ。
時計台の外にまで溢れ出している霊気。
近くを歩いているだけで、捕まってしまう。
「こんな状態で放置されているなんて...」
すぐ報告に戻らなくては...
被害は広がるばかりだ。
「その前に」
秋山は息を吸い、印を結んだ。
「・・・・・・!」
少しでも、押さえておけば。
時計台の周りに、簡易的な結界をはり、秋山はそこを去った。
事態は一刻の猶予もない。
急がねば、危険が広がっていく。
それに...

「光一君...」
大丈夫だろうか。
嫌な胸騒ぎがするのだ。

堂本剛

一体、何者なのか...

秋山は、不安を拭い去るように一目散に走った。
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「こんにちは」
窓の外から声が聞こえ、光一は慌てて振り向いた。
「...!」
何故。
最上階の窓の外に...
「お前...」
背筋に冷たいものが走る。
「遊びに来ちゃった」
フフと笑いながら窓に手をあて...
「!!」
瞬時に、通り抜けてきた。
「な、にもの!!」
「何者って...冷たいんやね。剛やっちゅーねん」
「...そういう意味やないっ!」
「そしたら、そちらも何者なん?お互い様やろ?まぁ、僕は聞かんでも知ってるからえぇけど」
あぁ、そしたら僕に分がある事になんねやなぁ〜。
飄々と一人呟きながら近づいてくる。
「来るな!!」
「そないに毛嫌いせんといてや。知りたいんやろ?時計台の事」
「...お前、なんで」
「時計台より、僕の事知って欲しいねんけどなぁ」
相変わらず片思いのままやん、僕。
苦笑する剛。
「お前が、知られるのを避けとるんやないか」
近づいてくる剛を、睨みつけ、言い返す。
「他人には知られたくないねん。僕は貴方に知って欲しいんやって」
やから、
「貴方自身が近づいてこんと、教えたらへんで」
一気に近づき、光一の頬に手を伸ばす。
「...!」
その手が、不図止まる。
「汚い手で触るな」
剛の後ろから、締め、首に忍刀を当てている。
「いつのまに...油断してしもうたみたいやね」
全く、気配など感じなかった。
「さすが、米花一族の末裔や」
「我等一族も知っているのか」
「堂本家に仕える忍。いや、ホンマ見事やわぁ」
警戒して、身を潜めて光一を守っていたとは。
「けど...」
呟き、剛はクッと笑った。
「!!!」
米花の手の中から、一瞬にして剛の姿が消えた。
「何!?」
気が付けば、剛の姿はすでに窓の外にあった。
「僕も、堂本やっちゅーねん。敬って欲しいわ」
笑いながら、剛の体はフワリと浮いた。
「時計台。事の発端は5年前に遡る。その辺を重点的に調べればすぐわかるやろ。でも、気をつけたほうがいい」
ベランダの柵を超え、剛は飛んだ。

「アイツは...強いで」

ニヤリと笑ったのを最後に、剛の姿は消えた。

「ご無事ですか」
米花の問いに
「お前のおかげで怪我一つない」
「堂本家を守るのが我々米花家の使命。いつ、いかなる時であろうとも、命に代えてもお守りいたします」
「すまない。俺が油断していた」
「いえ...あの堂本剛という男。どうにも読めません。一体...」
「アイツに関しては、もうお前は手を引け」
「ですが!!」
「俺でなければ、ダメらしいからな」
「...御意」
「お前は、他の3人と共に、時計台を調べてくれ。まずは...5年前。何が起きたのか...そこから調べて欲しい」
「あの男のいう事を信用するのですか?」
「...調べておくにこした事はないやろ」
「御意」
そう言って、米花はスッと消えた。
「堂本剛か...」
光一は椅子へと座った。正確には...座り込んだのだ。
にらみ合っただけで、力を相当消耗した。
正直、立っているのもやっとだったのだ。
「俺に...近づいて来いと...」
呟き、光一は項垂れた。






「えぇ、度胸やないか」


頭を上げた光一は...
普段見せる事のない

残忍な笑顔をたたえていた。
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「米花一族...あなどれへんなぁ〜」
光一のマンションの屋上で風に吹かれる剛の姿。
「せやけど」
フフ...と剛は笑った。
「気付いてへんやろなぁ〜僕の所有の証は」
これで何処へ行っても何をしていても手に取るようにわかる。
光一の頬に触れる瞬間、動きを止められたように思っているだろうが...
「ちゃんと触らせて頂きました」
彼の項辺りに...僕の気を植え付けさせてもらったから。
「徐々に僕のモノになってくるわけや」
楽しみやなぁ〜。
「僕の想いが報われるのはいつの事やろ?」
そう言って、剛は屋上から飛び降りた。




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5話です。
今回は、全員活躍させてみました。
屋良っちと町田さんは癒し系ですね(爆)。
このお話の中の息抜きポイントとでもいいましょうか(笑)。
でも、彼らもカッコよく活躍する場もこれからちゃんと出てきますので(笑)。
元々、剛がつける所有の証は...光一の左胸にしようと思っておりました。
心臓の部分なので。
でもね...そこって、中々直接触る機会ないやん!!(爆)。
って事で首筋で(笑)。
ってそこの方が中々触らないやん!!(爆)
まぁ、項のが色気があっていいかなぁと(ぇ)。
何の色気を求めてるんだ(笑)。

それにしても...
この先、どうしよ(ヲイ)。


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