6.揺心
「光一君!!」
勢いよくドアを開けた秋山は、一目散に光一に駆け寄ってきた。
「なんや、暑苦しい」
「そんな事言ってる場合じゃないんですってば!ありえませんよ!」
「どうした。ちゃんと報告せぇ。」
「先程、時計台の付近まで接近してみました。邪悪なオーラが時計台の外まで漏れていました。あれでは、うっかり側を通ってしまった人は簡単に捕まってしまいます。」
「で?」
「はい。結界を張っておきました。ただ、あくまでも一時しのぎ。猶予はあまりありません」
「そうか。やはりな」
呟き、俯く光一に秋山が問いかける。
「やはり、とは?」
チラリ、と秋山を見て、光一は肩をすくめてみせた。
「わざわざ、教えてくれたんよ。「アイツは強いで」ってな」
その言葉に、秋山は先程の嫌な予感を思い出した。
「まさか!あいつが?」
「くるな、うっとおしい」
驚きに、目前まで勢いあまって、近寄ってしまった秋山に、光一は苦笑しながら言った。
「そんなことより!!きたんですか?」
「あぁ。せやけど、米花がおったから、大丈夫や」
「米花...そうか、さすがだな」
秋山は胸をなでおろした。
「で、その米花は?」
「剛が...」
「剛?」
「堂本剛が言ぅたんや。5年前に遡る...と。せやから、その辺を調べに行かせた」
「堂本剛は追わなかったんですか!!」
「ヤツは俺やないとあかんらしいから」
そう言って、光一は立ち上がる。
「それよりも、あまり時間もないようやし。全員戻ってきたら、即報告をまとめて知らせろ。それを見て、すぐに時計台へと向う」
そう告げると、奥の部屋へと繋がるドアを開く。その部屋は、彼らの「裏の仕事」を行う際に、霊力増大の為に入る瞑想室だ。
「あぁ、それから」
入りかけて振り向いた光一は、秋山へと言葉を付け加えた。
「30分待っても帰ってこないヤツがおったら、強制的に呼び戻せ。お前なら、出来るな?」
「御意」
秋山が傅くのを見て、光一は頷くと奥の部屋へと消えていった。
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−呼ばれている−

かなり、深い所まで話を掘り下げていた屋良は、頭に直接伝わる呼びかけに気がついた。
「お姉さま達ごめんなさい!僕、もう行かなくちゃ!!」
これ、僕の分です。
と、ちゃんとお金を置いて、後ろからかけられる声にも振り向かず、急いで店を出た。

「怒られちゃうかな...時間、忘れてた」
ちょっと反省しながら、先を急ぐ。

「屋良っち!」
呼ばれて、後ろを振り向くと、同じように走ってくる町田の姿。
「あれ?町田さん?町田さんも今呼ばれたの?」
「うん。色々調べて回ってたら...戻って来い!って偉そうな声が...」
「あぁ、わかるわかる。何故か偉そうなんだよね、あの人」
「なんでだろうね」
「ホントだよね。立場的に別に違いはないのにね」
「...急げ、当主は準備に入られている」
盛り上がっていた二人の背後から、声がした。
「ヨネ!何してんの?」
「...仕事だ。お前等と違ってな」
「...僕らだってお仕事してましたぁ!」
「してましたぁ!!」
「いいから急げ。当主は瞑想に入られたぞ」
その言葉に、二人にも緊張が走る。
「急ぐよ、屋良っち」
「はい!」
「悪いな、俺は先に行く」
そういって、米花は姿を消した。
「...ずるいよ。忍ってば」
全速力で走っても追いつかないもん。
少しだけ拗ねてみる辺りは、まだ屋良が子供な証拠だ。
「町田さん...」
「何?」
「5年前の話...聞いた?」
「5年前?」
「...たどり着いたんだ。僕」
全ての...始まりに。
「屋良っち?」
「どうしよう。僕ね...かわいそうなんだ」
走りながら、意味不明な言葉を繰り返す屋良。
「どうしたの?」
「だからね...可哀想なんだよ。あの子」
「屋良っち...」
町田の呼びかけに、屋良はもう答えなかった。


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6話です。
招集かけました。
そろそろ、彼らのカッコいい部分が!!
頑張ります。

今回のタイトルは...最後の屋良っちの心境から。
そろそろ1話1話にタイトルつけんの辛くなってきた(爆)。



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