深夜2時
誰も通る気配のない裏通り
僕は
息を潜めてた
見つからないように
気が付かれない様に
僕
という存在が
闇に同化してしまえる様に
ただ
ひっそりと息を潜めていた
「大丈夫?」
後ろから急に肩を叩かれ、勢いよく振り返る
「あ……っと、ごめん。びっくりさせちゃった?」
柔らかく微笑むその人は、長い髪をかきあげて、僕を見る
「怪我……してるの?」
言われて、自分の体を見る
こんなにも血を出していたのか
自分でも呆れてしまう。
こんなんで隠れられると思っていたのか
「大丈夫……」
やっとの事で搾り出した声
「大丈夫って感じじゃないね」
その人は軽々と僕を持ち上げた
「……え?」
「僕の家、すぐそこだから」
それだけ告げて、彼はスタスタと歩き出す。
「ちょ、ちょっと……」
「何か、訳ありなんでしょ?救急車呼ぶよりいいんじゃない?」
言われて、小さく頷いた。
確かに、救急車を呼ばれるのはマズイ。
何故なら……僕は
人間ではないのだから
「……血、止まらないね」
急いだ方が良さそうだ
彼の言葉に、ハっとして見回すと
道路に点々と続く僕の血の跡。
そして……
「スーツ……」
僕を抱えている彼のスーツは真っ白だったはずなのに
僕の血を吸い、鮮やかな朱色に染まっていた。
「……あぁ。いいよ。気にしなくて」
このスーツ、あまり気にいってなかったから。
そう言って、微笑んだ彼は、ある高層マンションの前で立ち止まる。
「此処が、僕の家だ」
そして、オートロックをあけて、エレベーターへ乗り込む。
「あとで、掃除させておかないとな」
そう呟きながら最上階のボタンを押す。
「意識、ちゃんとある?」
聞かれてコクリと頷いた。
「そう。良かった。出血の具合から、少し不安だったんだけど」
エレベーターは高速で、静かに最上階へと到達する。
「さて、まずはバスルームへ行こう」
洗い流さない事には、傷口が見えないからね
そういわれて、少し慌てた。
「いや、自分で……」
「そんな大怪我しておいて、一人で入れるわけないでしょ?」
「でも……」
「いいから」
……まぁ、一見人間と変わらない体は見られても困る事はないのだけれど
回復の早い傷口は……余計な詮索を受ける材料になってしまう
それでも
こんなにまでさせておいて、逃げるわけにもいかず……
「ホラ、大丈夫?脱げる?」
広々としたバスタブに入れられて、服を脱がされた。
「……」
傷口を見て、彼の動きが止まる
「あ、あの……」
「……出血の割りに、傷口、浅かったみたいだね」
一瞬だけ眉を潜めていた彼は、そう言って優しく微笑むと
「これなら、自分でシャワー浴びれそうだね。傷口、消毒しておいて。担当医を呼んでおくから」
彼は立ち上がる。
「ちょっとまって!」
医者は困る。騒ぎになられるのは……
「大丈夫。僕のお抱え医だから、秘密は守るよ?」
見透かされたように告げられた台詞に、僕は何もいえなくなった
「とにかく、まずは傷口を洗って。話は治療が終わってからだ」
何かあったら、呼んで
そういい残して、彼はバスルームを出て行った。
後書き
いいんです。わかってます。
馬鹿だってことぐらい(爆)。
新しい連載開始。
前に言ってた吸血鬼モノです。
ちょっと長くなりそうだったので、1話と2話いっぺんにUP。
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