第八幕
目を覚ましたとき
そこは、真っ暗な闇の中。
静かに、体を起こして……周りを見渡す
漸く、目が慣れて
意識も、覚醒してくる。
そうだ
僕は……
倒れたのか……

「朝幸……」

ベッドから降り、スーツを着込む。
仕事用の、真っ白なスーツ。

僕は、狩りにいく時には
必ず、白いスーツを着る。
そのスーツを、彼らの血で染める事で
彼らの、命を背負った気分になる
この手で奪ってしまった命を
最後の時まで、背中に背負って生きていく
それが
僕の、
ハンターとしての、
僕の、使命だと思うから

引き出しを開けて
銃を手に取った。

隠し通す事は
もう、出来ない

なぜなら、僕は……
何が、あっても
朝幸を手放せない、と
気がついたから

だから、僕の正体を彼に見せる事になったとしても
探し出して
彼を追い詰めるヴァンパイア達を消滅させて……

彼を、この手に引き戻す
そして、今度こそ……離さない

鎖に繋いで
枷をつけてでも


僕の、自我の為に


ドアを開けて
エレベーターへと向かう

「……そのままじゃ、寒いぜ?」

話しかけられて、顔を上げた
「……康哲」
「行くのか……?どうしても」
「……」
「……止めや、しないさ。だが……それが、お前達にとって……本当に、」
「康哲、それ以上は言わないで欲しい」
「……わかって、いるんだな?」
言われて、頷いた。
「だったら、もう何も言わないさ」
康哲は、そっと
僕の肩にコートをかけてくれた
「お前が風邪引くと、大変なんだよ……怪我人、他にも連れてくるんだろ?俺一人じゃ、面倒見切れない」
「康哲……ッ」
背を向けて、部屋に戻っていく康哲に声を掛けた。
振り向かないまま、康哲は手を振った。

エレベーターに乗り、1階へと辿り着く

「……こっちから、気配を感じるよ?どうする?」

声のする方へ、視線を向ける
「……智」
「一人でなんて、行かせない」
微笑む智は
そっと、近づいて
僕の頬に、触れた
「言ったでしょ?慎吾の傍には……常に、僕がいるって」
「……ありがと、智」
「さて、どうする?かなりの人数が出回っているらしいね」
気持ちを、切り替えさせてくれる智。
「……そうだな。相当焦ってるらしいね、彼らは。痕跡を残しすぎだ」
「とりあえず、痕跡を追ってみる?」
「あぁ、99%間違いないだろう……行こう」

僕には、こんなにも
僕をわかってくれている仲間がいる

それでも

どんな事をしてでも
彼を手に入れなくちゃ、いけないのか……?

自問自答を繰り返す

けれど
辿り着く答えは一つ……


喩え
彼を、苦しめる事になるとしても


僕には

彼が、必要だと……

僕の心が、そう告げていた







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