■第壱話■
「へぇ、これがそのソフト?」
その男はCD‐ROMを興味深げに見つめている。
女性と見紛うほどの容姿と肩までのサラサラヘアー。ブルーのカラーコンタクトがとても似合っている彼の名前は「町田慎吾」。屋良達の高校の3年生である。
「でも、普通のソフトに見えるけどねぇ」
「けど、ホントにヘンなんだって!!!なんかアヤシイよ!!。どうしよう…俺、死んじゃうかも」
「屋良っち落ち着けよ…とにかく、あれ以上画面は変化しなかった。俺たちの体にもなんの変化もない。少し様子を見てみるしか…」
そう言った植村に向って、屋良は少し苛立った口調で問い掛ける。
「様子見てどうするっていうんだよぉ!!良侑なんでそんなに冷静なわけ?」
「だって、皆で慌ててもどうしようもないだろ!!!誰か一人くらい冷静じゃなきゃ…」
俺だって…不安なんだ。
植村が呟く。
「…ゴメン。俺、ちょいパニクっちゃって」
うなだれる屋良の頭を「ヨシヨシ」と撫でてやる。
屋良はこうされるのが好きなのを植村はよくわかっている。
「とにかく、このゲームがいったいどんなものなのか、少しでもわかれば…」
「…ねぇ、ゲーム動かないんでしょ?」
「うん。ROMを抜いてみても、どこをクリックしても全く反応しないんだ…」
モニターは一向に警告画面を映し出している。
「ふ〜ん…」
いいながら、町田は近づいてくる。
はっ!っと顔を上げる植村。目の前では町田がROMをセットしようとしている。
「止めなよ、町田君!!!!」
あせって止めに入ったのは誠一郎だった。
「なんで?」
「だって、こんな怪しげなゲーム!!!俺のせいで二人とも巻きこんじゃったんだ…コレ以上、誰も巻き込むわけにいかないよ…」
誠一郎はかなりのショックを受けていた。自分が貰ってきたソフト、それを気軽に使おうと二人を誘ってしまった自分。しかも二人が止めるのも聞かず、二人をゲームの世界に巻きこんでしまった。もし、これが本当に危険がゲームであったら…どんなに謝っても足りないはずだ…
「でも、1度始めちゃったもんはさ、やり通さないとダメでしょ?」
「けど!!」
「知りたくない?コレが一体なんなのか?」
「…そ、それは」
「大丈夫。俺は俺の意思でこのゲームに参加するんだ。誠の責任じゃないよ」
「…町田君」
町田がROMをセットして画面に向う、と今まで動かなかった画面が切り替わった。
「動いたね。名前、入れればいいの?」
尋ねる町田に植村はコクっと頷いた。
ピッ…
【Name:Shingo Machida】
【Age:17】
【No.1004】
【Team:BLUE】
「…BLUEか」
「なんなんだろうね、コレ」
不安そうに尋ねてくる屋良に町田は少し困った顔で答えた。
「これだけじゃ、わかんないよね」
ふと、画面へ眼を向ける。
「え?なんだろ、コレ…」
町田の呟きに全員が画面に集中する。
真っ青なディスプレイに、次々に浮かび上がる文字。
『破壊セヨ…全テヲ』
「な、んだ…?」
『死守セヨ…全テヲ』
「…破壊?死守?」
『蒼ノ世界ハ…君達ノ手ニ…』
「蒼の…世界?」
『リセットセヨ…コノ…狂イ出シタ…蒼ノ世界ヲ…』
『助ケヨ…コノ…枯レ果テタ…蒼ノ世界ヲ…』
「一体…どういう事なんだ?」
『全テハ…君達ノ手ニカカッテイル…RE・MAIN OR RE・BORN』
しばらくすると、ディスプレイが真っ赤に染まった。
『健闘ヲ祈ル』
そして…ディスプレイには…
『…マデ 168:00:00』
カウントダウンが始まった。
「一体…?」
高木の言葉に、植村はボソっと呟いた。
「とりあえず…期限は1週間って事だ」
「どうして?」
「この時間…1週間分の時間を示してるよ。だから期限は1週間って事だ」
だから…
「その間に…僕等は何かをしなくちゃいけない」
「でも…何すればいいのかわかんないよ」
屋良の言葉に、町田は少し考え込んだ。
「なぁ、これ…学校で拾ったんだろ?」
「そう、だけど…」
高木が頷く。
「…だったら、他にもやったやつがいるかもしれない」
「そっか…そいつ等探し出してみれば何かわかるかも」
「学校に…戻ろう」
4人は急いで学校へと向った。

『消滅マデ…167:56:18』


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