■第弐話■
学校に戻ると、丁度休み時間に差しかかるところだった。
「とりあえず…誠がROMを拾ったのはどこ?」
町田の問いに、高木は少し考えてから
「1年の教室前。確か…C組だったと思う」
「そのまま落ちてたの?」
訝しげな植村の問い掛けに高木は肩をすくめてみせた。
「ありえないようだけど…このまま、落ちてたんだ。俺が拾うまで、誰も気がつかなかったか…落とされたすぐ後にたまたま俺がここを通ったのか」
それは、わかんないけどね…。
高木の言葉に、
「とにかく、1−Cに行ってみよう。他にもこのROMを目撃してる奴がいるかもしれない」
町田が言うと同時に全員が駆け出した。
++ ++ ++
休み時間ということもあり、教室はかなり騒がしい空間となっていた。
「とりあえず…目撃者、もしくは捨てた張本人を探そう」
町田の言葉にコクっと頷き教室内を見渡す。
「あ、いた!!」
屋良はそういうと、教室内へ駆け込んでいった。
「ラッチ、ちょっといい?」
屋良に声をかけられたのは、1−Cの学級委員を務める良知真次。
次期生徒会長と噂されている人物だ。
屋良とは中学からの付き合いだった。
「屋良っち。どうしたの?」
「や、ちょっと色々あって…とにかく、話したいことがあるんだ」
「いいけど…ココ五月蠅いから場所かえる?」
確かに、闇雲に話を広げるのも危険な感じがした。
良知に聞けば、このクラスの事は99%確認が取れる。良知は神経を研ぎ澄して、学級内全ての情報を脳に仕入れていた。その良知にさえ聞けば、事を大きくする必要もない。
慎重に探っていくのが無難に思え、屋良は声を潜めた。
「その方がいいや。あんまり人がいない方がいいかもしれない」
屋良の言葉に、良知は少し考えてから
「生徒会室にしよう。あそこなら、今誰もいないだろうし…」
良知は生徒会役員でもあるのだ。
「OK。じゃあいこう」
すぐに良知の手をとって、歩き出す。
「ちょっ!!屋良っち、待ってよ!」
良侑達が後を追った。
生徒会室に入ると、案の定誰もいなく、がらんとした室内には、不気味なまでの静寂が漂っていた。
「で、話って何?」
椅子に座り、問い掛けてきた良知に、屋良はどう切り出すべきか、ちらっと町田を見た。
「今日、教室の前でROMを見かけなかった?」
代わりに問い掛けた町田の言葉に
「ROM?」
と、良知は首をかしげた。
「そう、ROM。誰か、見掛けたり、落としたりしてないかな」
しばらく考え込んだ良知は、思い出したように顔を上げた。
「そういえば…昨日、奇妙なゲームがどうの…って話をしてたけど」
その事かな。
「奇妙なゲーム?」
良侑が問い掛ける。
「そう。なんだっけ…。あぁ、『蒼の世界』…がどうのって…」
良知の言葉に全員が身を乗り出した。
「誰が!!!」
迫力に圧倒されながら、何とか答える。
「松本君が…」
その言葉と同時に全員が立ち上がる。
「急ごう」
「そうだな。良知、ありがとう」
町田は良知にお礼を告げ、足早に生徒会室を後にした。
「どういたしまして」
良知は、いつもと変わらぬ笑顔で答え、彼らを静かに見送った。
++ ++ ++
教室を訪れても、姿の見えなかった松本を全員で手分けして探すことになった。
「何処にいるんだろ、松本君」
良侑の言葉に、屋良はあいまいに頷いた。
松本を探しながら…屋良は不図、違和感を感じたのだ。

何に…

それはわからないが。
胸と頭の奥の方がモヤモヤとしていた。
気になって…正直、松本を探している場合じゃなかった。


何か、おかしい気がする。



『消滅マデ…167:02:46』


TOP