序章 眼が覚めた時… 僕は土の中にいた。 暗くて…息が出来なくて… 必死でもがいて這い出てきたんだ。 突然、眩い日差しが眼に飛び込んできて… 僕は眼を瞑った。 耳に聞こえた微かな泣き声。 「シン…?」 土の中から這い上がり、声のする方へ向かう。 それは…杜松の木の下。 僕がいた木の横で。 間違いなく、僕が埋めた場所だった。 「今、助けてあげる」 急いで土を掘り起こす。 徐々に眼が光に慣れてきて、僕は天を仰いだ。 澄み切った青空。 雲一つない空。 不図、手が止まっていたことに気がついた僕は、また土を掘り起こす。 指先が 触れた。 「シン!!」 抱えあげると、甘えるように擦り寄ってくる。 「よかった。お前も戻ってこれたんだね」 頬を摺り寄せると、シンはミャ〜っと声を上げた。 僕はゆっくりと立ち上がる。 少しふらつくけど、歩く事は出来る。 今更、気がついたようにシンを抱えてる手を凝視する。 あぁ…僕の手だ。 僕は…戻ってこれたんだ。 僕の中に。 あの時、眩いばかりの閃光が彼の体から放たれて… 僕は飛ばされてきたのだ。 彼の僕を助けようとする思いによって… 僕は戻ってくることが出来たのだ。 「シン、帰ろうか」 呟き、僕は歩き出す。 途中、公園の桜に差し掛かった。 この桜の下に…彼は眠っているだろう。 「シン…知ってる?」 独り言のように語り掛ける。 「桜の木の下にはね、死体が埋まっているんだよ?」 「ほら…」 「彼の…心臓の形をしてる」 自然と、口元が緩む。 あぁ…違うな。 死体は…埋まってはいないのかもしれない。 何故なら… 彼は… 僕の中にいるから。 |
なんと!!! とうとう書いてしまいました、コインロッカーベイビーズ・セカンド。 や、これ大好きなシリーズなので、いつかは…と思っていたのですが、まさか今書こうとは(汗)。 でも、一応短編扱いで(汗)。 連載にするにはまだ何も考えていない状態なので。 ゆっくりじっくり色々練りながら連載に出来ればいいなぁと思っています。 とりあえず、この序章を読むと、前回の終わりの謎が解ける事になってます(笑)。 |