第弐話 前よりもより幼くみえる屋良は、そのくせ、やはり誰よりも存在感を持っていた。 それでも、前に感じた氷のような冷たさはなく、どちらかというと、透明な…いや、無垢な天使のような、澄んだ眼をしていた。蒼く、どこまでも吸い込まれそうな、透明感のある蒼。 「ラッチの、おかげだね」 しばらくは皆に囲まれて、もみくちゃにされていた屋良が、やっと開放され、微笑みをたたえて僕に近づいてきた。 「僕は、何も」 首を振ると、屋良は僕の手をとった。 「ラッチが、助けてくれたんだよ。ありがと」 それは、前以上に舌っ足らずな喋りで、「あぁ、彼は幼少に戻ったんだ」と妙に納得してしまった。 僕は、もう一度屋良に告げた。 「お帰り、屋良」 屋良は、嬉しそうに抱きついてきた。 温かな、感触。屋良を抱きしめる手から伝わる鼓動。 全てが、屋良の生を証明するかのように。 言葉に出来ない安堵。 屋良は、僕の手からスルッと抜け出し、振り向く。 全員に、告げた。 「パーティーをしよう」 「再会の?」 尋ねた町田に、屋良はニッコリと微笑む。 「そう。そして、僕の復活のお祝いに」 そして、口元が微かに続きを綴っていた。 聞こえなかったが、とくに気にもしていなかった。 ++ ++ ++ 結局、遅くまで盛り上がり、というよりも、全員屋良と離れたがらず、時間はとうに夜中を過ぎていた。 「そろそろ眠いや」 眼をこすり、屋良が呟いた。 「まだ、身体になれてないかもしれないから、ゆっくり休んだ方がいいのかもな」 今更言っても遅いか。 と原君が苦笑する。 「おやすみ、屋良っち。また、明日遊ぼうね」 良侑が笑う。 そして、皆がそれぞれの部屋へと戻っていく。 僕も、立ち上がろうとしたその時… 不図袖を引っ張られた。 「何?」 「一緒に、寝よう?」 少し傾げられた顔は、無邪気な子供のようだった。 あぁ、違う。 彼は、子供なのだ。 そう、何も知らない、純粋な子供。 「いいよ。じゃあ、眠ろうか」 僕は屋良の手を引いて、階段を上る。 僕の部屋へと向かい、ドアを開けた。 屋良は嬉しそうにベッドへと飛び込む。 「フフ、柔らかくて気持ちいいや。まるで、夢みたい」 そうだ。屋良は、今まで、暗く冷たい場所にいたのだ。 そう… 杜松の木の下に。 彼はそこから這い出てきたんだ。 「疲れただろ?ゆっくり眠ろう」 僕は、ベッドに入り、屋良をやんわりと抱きしめた。 以前より、遥かに小さな屋良。 あぁ、守ってあげなくては、と思った。 彼は、子供なのだ。 僕が、守ってあげなくては。 「おやすみ、屋良」 囁くと、屋良も小さな声で答えた。 「おやすみ」 それは、ほぼ声にならない口の動きで。 でも、優しく耳に届いてきた。 不図 記憶が遡る。 あぁ 屋良は… こう告げていたのか。 そう気がついた時には、良知はすでに夢の中に入っていった。 起きた時には、もう忘れているだろう。 「彼もね…」 天使の寝顔で、 残酷な夢を見る。 |
うひゃ〜vv 書いちゃったよvv続き♪ ダークにダークに行きたいっす!!! もう、暗いの大好きだぁ〜!!! ってな訳で、この先なにが待ち受けているのか!!! 私も気になる(ヲイ)。 |