第六話

どうやら、また眠っていたらしい。
魘され続けて…目を覚ました僕は、階下でのざわめきに気が付いた。
「どうしたんだろう」
ゆっくりとベッドから降りる。
ドアを開け、階段を下りようと階段へ向かうと、その下で、皆が走り回っていた。
「どう、したの?」
慌てて降りていく。
「良知君!!大野君が!!」
良侑が、泣きながら叫ぶ。
「大変なんだ!!大野君が、誰かに…」
誠君の言葉に…
脳の中で、何かがカチっと光った。
           なんだろう
「ラッチ…」
不図、届いた声。
哀れむような…温かい様な。
「屋良…」
屋良の方を向くと、その奥のベッドに…町田さんが寝ていた。
あぁ、
「目が、覚めたんだね」
告げると、屋良はコクリと頷いた。
「誰も…見てないって」
屋良が告げた。
どういう意味だろうか。
「でも…良かったね」
またしても    
     カチッ
閃光が走る。

        仄の暗い、意識の奥の意識が…

     
目を覚ましても…

                    何かと共鳴するかのように…

               
覚えていなくて…

                      火花を 散らす。


僕は、頭を左右に振った。
「ねぇ、大野君は?」
尋ねると、屋良は静かに首を振る。
「今は…逢わないほうがいい」
「…そっか、わかった」
何故だか…それ以上追求する気にはなれなかった。
++ ++ ++
大野君は、あれからずっと眠ったままらしい。
原君は大野君に付きっきりで、奥の部屋から出てくる気配はなかった。
「一体…」
夕食の席で、良侑が呟いた。
「何が…」
そのまま、全員が黙り込む。
その時、丁度水を取りに鈴木君が入ってきた。
「あ、」
誠君の声に顔を上げると、鈴木君と目が合った。
「…」
少しだけ…鈴木君の目が…狼狽したように、怯えたように揺れた気がした。
「原君は?」
鈴木君は目をそらし、尾身君に尋ねる。
「大野君に、ついてる」
「そっか…俺も、この後は、慎吾についてるから」
何かあったら…呼んで?
水を持って、鈴木君もリビングを後にする。
「何が…起きてるんだろう」
再度繰り返される疑問。

朱色の…

      カチッ!!

   目の前が…

  カチッ!!

          深紅に染まる

        カチッ!!!

飛び散る…

 カチッ!!

           ねっとりと温かい

カチッ!!!

    降り注ぐ

                  カチッ!!!

                             血  液
「うッ…!!!」
こみ上げる吐き気。
そして…

いいようのない    恍惚感

ガクンっと音がした。
それは…僕の頭が大きく揺れた音だと

気付いた時には

僕は床の上に崩れ落ちていた。

「良知君!!」
「ラッチ!!!」

あぁ…声が、

廻る      廻る
永遠に

そして僕は堕ちていくんだ
夢の中へ
それはそれは綺麗で     おぞましい

朱色の  夢の   世界へ





夢魔が待つ…世界へと




Nightmare is in my head.




第6話です。
進んでおります。どんどん怖い方向へ(苦笑)。
段々、読めてきたでしょ?そうだったんですね。いや〜そうだったのか(何が)

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