堕ちていく
堕ちていく
朱色の海の底
僕は
ただ
真っ逆さまに
堕ちていく



第七話

ここは…何処だろう。

   あぁ…

あの、櫻の木。

屋良が…眠っていた…あの…

…眠って、いた?

あぁ…なんだろう

よく、わからない。

無意識に僕の足は櫻へと向う。

妖しく咲き誇る櫻の下。
土が少しだけ軟らかく、盛り上がっていた。

何故?

言いようのない不安を感じ…
僕は、手で掘り起こす。
掘り進める間に
僕の意識は
別の場面へと飛んでいく。

此処は?

車が…止まっている。

     この車…

一人が…車を降りてくる。

   鈴木…君?

その時…

「!!!!」

断末魔のような悲鳴

   町田さん…!

車のフロントガラスが朱色に染まる

「慎吾!!」
駆け寄る鈴木君

…何故?
僕は、この光景を今見ているのだろう。

そして…何故?
今…僕は…遠くからこの光景を見ていたはずなのに…

何故、フロントガラスが朱色に染まる瞬間を眼にする事が出来ているのだろうか

繰り返される嘔吐感と…こみ上げる恍惚感
これは…一体…何の…何が…

僕が…?

「うわぁ!!」

鈴木君の悲鳴が響く
漆黒の闇の中
深い深い静寂の中に
二人の絶望的な叫び声が木霊する
あぁ…
なんて…
素敵な…
消えゆく魂の共鳴…

場面は…また櫻の下へと戻ってきた
僕は、彫り続ける。
ただひたすらに
此処から、現れるであろうモノが
何であるかもわからずに
言いようのない不安を抱えながらも
夢中で彫り続ける

指先が

触れた


慌てて土をよけていく

そして…
現れた
その死に顔は…

「…う、うわぁ!!!!!」

僕だった

僕が眼を開ける
ゆっくりと
そして
僕を見つめ
こう言ったんだ

「お前は、もう死ぬんだよ」






全身が汗だくになっていた。
慌てて体を起こし、周りを見渡す。
そこは、自分の部屋のベッドで…
「ゆ、夢…?」
密かに安堵する。
物凄く、怖ろしい夢を見ていた。
夢…
夢で…良かった。
額から流れる汗。
それを、拭おうとして…


「うわぁ!!!!!!!」


一気に恐怖の底へと叩き落される。

僕の手は

土に塗れ

そして、

血塗れだったんだ


フラッシュバックする…恐怖に歪んだ顔
意識をなくしていく空ろな眼

あぁ…あれは夢なんかじゃない

彼が
倒れていく光景を

僕は

目の前で

うっとりとしながら

眺めていたんだ


堕ちていく
堕ちていく
恐怖の闇の底
僕は
ただ
真っ逆さまに
堕ちてい
 


第七話です。
今回は一人称…というか、夢の中をお送りいたしました。
セカンドはもうすぐ終わるのかなぁ?
まだまだ引っ張りたい気もするんだけど(苦笑)。
これで、大体全貌が明らかになってきたと思いますが…
えっと、いくらなんでもまだ終わらないと思います。
どうなっていくのでしょうね〜
って聞くなよ(笑)。

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