第8話
ゆっくりと眼を開けると
大きな窓から、蒼白い月の光が差し込んでいて。
あぁ、まるで氷で出来ているかのような冷たい月の光が、僕の奥深くまで突き刺していくようだ
なんて思いながら、僕は静かに体を起こした。
恐怖感はもう消えていた。
意識も自然と回復した。
そして
記憶も。
変わりに僕の中に芽生えたものは
絶望感と…
喪失感
屋良と、話をしよう。
屋良が怖かったんじゃない。
僕は、僕が…
僕の中の悪魔が怖かったのだ。
いや…
だからこそ、僕は屋良を恐れた。
彼にはきっと気付かれてしまう。
何よりも…あの澄んだ眼で見つめられると…全てを見透かされているようで。
それでいて、その澄んだ眼には僕はもう見えていない気がして…
いいようのない恐怖が襲ってきたのだ。
僕は…もう戻れないんだ、と宣告されているようで。
そう
町田さんと鈴木君を襲ったのは僕だ。
そして、大野君も。
『や、やだ!!こないで!!ラッチ!!』
大野君の怯える顔が鮮明に浮かぶ。
『近づかないで!!怖いんだ!!ラッチじゃない…何かが、ラッチの中にいるんだ!!』
彼は…気付いていたんだ。
僕が…どんどん「彼」によって捕らえられていく様を。
まるで、張り巡らされた蜘蛛の糸に絡め取られていくように
身動きが取れなくなっていく僕を。
自分でも気付いていなかった僕に…
彼は、気付いてしまったのだ。
まだ、僕には僕の意識がある。
眠りさえしなければ、僕は僕でいられている。
だから…
今のうちに。
屋良と、話をしよう。
そして…
僕を…
「彼」と一緒に…
埋葬してもらうんだ。
そう…僕の犯した罪と共に
焼き尽くしてもらおう。
それができるのは
…屋良しかいない
post script
はい。
第8話です。
もっと解説っぽくしようかと思ったんですが、それは屋良の口から語らせたかったので、今回は7話に続き、良知君一人称でお送りしてみました。
これで、ほぼ明らかになりました。
彼がどうしてこうなったのか、とかその辺のことは…屋良っちの口から説明されると思います。
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