■++其の弐拾六++■
「ねぇ」
電車に乗りバスに乗り…
それから、相当歩いていまやほぼ山の中。
「何?」
体力には自信がある。それでもそうとう歩き続けて汗をかいて、息も少し切れている。
なのに…
「良知君、余裕な感じだね」
「何が?」
隣で汗もかかず、いつもと変わらないさわやかな笑顔で歩いている。
「結構きついんだけど。何処まで行くわけ?」
「あぁ、もう少しだから。このくらいで疲れてるようじゃダメだね〜島田」
一緒に修行する?
笑顔で尋ねられ
「遠慮しときます」
丁重に断った。
「さて、見えてきたでしょ?」
言われて島田は視線を良知の指さすほうへと向けた。
小さな小屋が見える。
「あれ?」
「そ、あれ」
やっとたどり着き、良知が小屋のドアをノックする。
「大野君、いる?」
「ラッチ?」
聞こえてきたのは
「町田さん、来てたんですね」
町田の声だった。
「大野なら、奥入ってったケド?ラッチ、今日修行の日じゃないよね?どしたの?」
町田に尋ねられ、
「実は…」
と大まかに説明する。
「ふ〜ん。とりあえず、それは大野に相談してみるのが確かに一番かもしれないね」
そう言って、町田は「どうぞ」と小屋の中へと入れてくれた。
「もう暫くすれば戻ってくるから」
お茶を出してくれながら、町田が言う。
「すいません…っつーか、聞いてもいいです?」
島田が町田へ問いかける。
「何〜?」
「此処に、住んでるわけじゃないっすよね」
「まさか〜!!修行の時だけ使う小屋だよ〜。こんなトコ住めないって〜」
お風呂も入れないじゃん〜
と、いささか修行とはかけ離れたキャラの町田。
「…まぁ、町田さんが修行してるわけじゃないから」
島田の心の声を読み取ったかのような良知の言葉。
「何、どういう事?」
不満そうな町田に
「いえ、別に」
と笑顔で答える。
「もう一つ質問なんだけど」
島田の問いに、良知が振り向く。
「物の怪…って結局どんななわけ?」
「だから、百聞は一見にしかず、だってば」
「だけどさ。全然想像もつかないし、何の話だかさっぱり、だし」
「物の怪って言っても色々あってさ」
町田が話しに加わる。
「人の念が集まって形どられていくモノもあるし」
「へぇ〜」
「物の怪といっても塗り壁とか目玉の親父を想像してちゃダメなんだよ」
「…」
「あ、その反応は想像したんでしょ?」
笑われて、島田は「ちょっとだけ…」と苦笑いする。
「かといって、じゃあ何か?と聞かれたら…」
「聞かれたら?」
「答えようはないんだけどさ」

「町田さん!ふざけないでくださいよ!!」
「ふざけてるわけじゃないよ〜。だってさ。僕は見えないんだもの。わかる?ラッチと違って見た事ないの。全部大野の受け売りなの。だから、説明できないの」
「…じゃあ、最初からしなければよかったんじゃないかと思うんだけどね」
苦笑しながら良知が続ける。
「いわゆる河童とかだって物の怪なわけ。百目だってそう。それこそ、こなきだってそうだしね。色々な表現をされているんだよね、物の怪は」
「やっぱり、鬼太郎の世界じゃん」
「それはそうなんだけど、変化のモノを例えるのに、色々な表現がされて現在に残っているんだけど、その残されたイメージのが強くなって実際の姿とかけ離れてしまっている事も多々あるんだよ」
「えっと…若干意味がわかんないけど」
「たとえば「河童」と聞いたらイメージするのはどんなの?」
「皿があって…水かきがあって…」
「でしょ?でも、もしかしたら、本当はその姿じゃないかもしれない。イメージが先行しすぎて、実際の姿をわからないものにしてしまっているものは結構あるんじゃないかな?」
「…まぁ、どちらにせよ鬼太郎の世界なわけでしょ?」
「…う〜ん。霊とは違っても、近いものがあるかもしれないよ?妖怪変化といってもね、人から変化しているものだっているだろうし」
「よくわかんねぇ〜」
島田は仰向けに倒れた。
「ま、だからさ。大野君が帰ってくるまで大人しく待ってようよ」
「そうそう。それがいいと思うよ〜」
まぁまぁ、お菓子でも食べて…
と町田はニコニコとお茶菓子を差し出した。
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「結局同じなのじゃ」
帰ってきた大野の第一声がコレ。
「は?」
「幽霊、とは違うけど…人とかかわりが深いのに人ではないもの…として考えれば同じ事なのじゃ」
「…だけどさ」
「確かに、ちょっと姿かたちは違うけどね。そんなに見たいの?」
「…いや、別にそんなに張り切って見たいわけでも」
しどろもどろな島田に向って大野はニ〜っと笑った。
「じゃあ、見せてあげるのじゃ♪」
「えぇ!!」
「…なぁんてウソ」
「…大野君」
「あのね、物の怪…というか、今僕が修行しているのは人の心に住む妖かしが実体化してしまったものを排除していく「憑き物落とし」というものなんだよ」
「??」
「物の怪とはね、人間の心が作り出してしまった悪の事も含めるわけね?」
「…じゃあ、実在はしないって事?」
「いや、実在するものもいる」
「…。意味わかんねぇ」
「ま、いいか。そんな話はどうでもいいよ。ようは島田が今どんな状況に置かれているかを知れればいいんでしょ?」
「そう言ってしまえばそれまでだけど」
「はっきり言おう!!」
「な、何?」
「島田…憑かれてるよ?」
「霊って事ですか?」
良知の問いかけに大野は首を振る。
「生きてる、人間の念だね、これは」
そりゃ萩原も迂闊に手を出せないよ。
「除霊すればいいってモンじゃないのじゃ〜厄介なのじゃ〜」
「…どうすれば、」
「仕方ない。修行は一旦中止。慎吾、一緒に降りるよ」
「了解。やった〜!!久しぶりに皆と遊べる♪」
「遊んでる暇はないのじゃ!!島田を助けるのじゃ!!」
そう言って大野は立ち上がった。
「早速だけど…萩原のトコ行こうか」
全く、いくら厄介だとはいえ、なにをそんなに手間取ってるのやら。
「もしかしたら…」
萩原にも念が影響しちゃってるのかも…

「膳は急げ…なのじゃ」
大野は修行用の黒装束のまま、小屋を飛び出した。
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26話です。
登場人物は徐々に増えていく予定(笑)。
何となく、説明っぽい回なのに、説明し切れていないところがダメダメ感満載ですね(爆)。
とりあえず、今後はちゃんと屋良も石田も幸人も出てきて活躍予定!!

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