+前回までのあらすじ+
自分の様子が、なんとなくおかしいと感じた島田。
それが何の違和感なのか、わからないが……
萩原が自分を避けている事は事実としてわかっていた。
どうしていいのかわからない島田は良知へ相談。
相談を持ちかけられた良知は、自分が何も感じないのは、「霊」ではなく「妖怪」の類なのでは?と感じ、一緒に修行を重ねている大野に相談する為に、会いに行く。そこで、大野は島田に「生きてる人間の念が憑いている」と断言。
萩原の様子も心配な大野は、修行を一旦中止し、萩原の許へと向うことにした。
|
大野を筆頭に一行は萩原の家へと向った。
道中、一体何故大野や良知が修行を積んでいるのか、そして大野の仕事とは何なのか。
それから……妖怪、と呼ばれるものについて、島田はより深く掘り下げて聞いた。
大野は、櫻守の家から、霊力増大の為に、一時的に修行に出されているらしい。
それが、今仕事としている、憑き物落しだ。
良知は、大野から誘われて、時々共に修行を重ねているらしい。
今、二人が修行中に調べているジャンルが丁度いい、というかなんというか……「妖怪」だったのだ。
大野の言葉によれば、
「妖怪と言うのはね。確かに人間とは全く違うように見えるかもしれないけど……でもね?よく考えてみて?河童や子泣きみたいに、元々妖怪として存在しているものもいればさ、小豆洗いみたいに、実は殺された少年が変化したと考えられているものや、猫が変化した化け猫とか。人間に近いものや人間そのものが姿を変えたものも多いわけ。という事はさ、妖怪っていうモノは簡単に一つのジャンルとしてくくる事は出来ないと思うのじゃ。だから……もし、今島田に憑いているモノが妖怪だとしても、それは人間の想いが変化したものだったりする。それって、言い方変えたら「生霊」と同じって感じするじゃない?だから、結局同じだって言ったの」
ということらしい。
それにしても
「ねェ、良知君?」
呼ばれて、良知は島田に振り向く。
「何?」
「生霊……っていうかさ、人の念だったとして……なんで良知君は何も感じなかったんだろ?」
「う〜ん……僕の能力がまだまだって事なのかなぁ」
呟く良知に向って、大野は首を振る。
「違うのじゃ。多分……意図してラッチにはわからないようにしてるのかも」
「え?」
「なんとなく、読めてきたのじゃ」
フフフ、と一人で納得して笑う大野に、3人は首を傾げる。
「ちょっと、大野。一人でわかってないで説明してよ!」
町田の言葉に
「まだ、確信じゃないからダメなのじゃ。萩原に逢って、話を聞いてみないとね」
それから、ちゃんと説明してあげる。
そう言って、やっと辿り着いた萩原の家のチャイムを鳴らす。
しばらく何の反応もなく……
「留守なのかな?」
町田の言葉に大野はもう一度チャイムを鳴らしながら首を振る。
「居るよ。わかる。気配がする。……ふ〜ん、どうやら本格的に島田を避けているようだね」
大野の呟きに、島田はガックリと肩を落とした。
取り憑かれている、という事実もショックだったが……
何より、萩原に避けられてるという事実が結構キツかった。
なんだかんだ言っても始終一緒に行動していた仲なのだ。
それが、こうも顔をあわせない日が続くとなると……
「う〜ん。どうやら、敵は島田狙い、ではないね」
大野はボソリと呟いて、ドアノブに手をかけた。
「どういう、事?」
その言葉に、島田は眼を丸くする。
「島田にも憑いてる。それは間違いない。でも……どうやら、僕の思った通りなのじゃ」
「……だから、大野!」
町田が叫ぶと
「他の人間には気付かれたくないから、極力気配を消してるんだ。生霊にしては自在に想いを操りすぎだね。物の怪に変化してると言っても過言じゃなさげなのじゃ」
「よく、わかんないけど……」
島田は、思わず良知を見る。
すると……
「そっか。でも、萩原は邪魔なのか……」
良知が呟いた。
「え?どういう事?」
「そう、萩原は邪魔なのじゃ。島田を手に入れるには、萩原がどうしても邪魔になる。だからこそ……萩原にだけ、念を強く出して、島田に寄り付かないように……萩原が能力者だったのが、却って災いしたのじゃ。一心に向けられた憎悪を人よりも敏感に感じ取ってしまう。相当強い念みたいだから……萩原の精神部分にも体力的にも影響が出てるはず。それに……きっと、萩原は直接相手とやり取りしたんじゃないかと思う」
「え?」
「島田を助けるために……迂闊には手を出せなくなるような。そんなやり取りがあったんじゃないかと、僕は思う」
そこまで言うと、大野はドアを思い切り引っ張る。
「ちょっと!無理だって!!鍵、かかってるから!!」
町田の制止も聞かず、大野はガンガン引っ張る。
「だからって、このままはよくないのじゃ。全く、何を弱気になってることやら。甘やかしちゃいけないから、強行手段」
ニッコリ笑う大野に
「ちょっと待って!ドア、壊れたら流石に弁償問題だから……大野君、此処は任せて」
良知の言葉に大野はやっと手を止める。
「どうするの?」
「説得する」
そう言って、良知は家の周りを少し歩いて、萩原の部屋の窓が見える位置に立つ。
「島田に、今逢えないっていうなら……僕と大野君だけ入ったらダメ?一人で悩むより、皆で考えた方が、島田を救う事が出来ると思う。……それに、萩原も。萩原が、島田を助けたい気持ちはわかるけど……それでも、今の状態なら……萩原一人じゃ、いい考えが浮かぶとは思えない」
そこまで言って、良知は呼吸を整え、告げた。
「ねぇ、萩原……僕は……僕と大野君じゃ……頼りにならないかな?」
数秒後、窓が少し開いて……
「ごめんね……?大野君と、良知君だけ……上がってきて」
その言葉に、良知はニッコリと微笑み、
「あ〜恥ずかしかった……近所の人に、変に思われただろうなぁ」
と、少し紅くなった顔を両手でピシャっと叩き、一人ごちて、玄関へと向った。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
27話です。
すっげー久しぶりの更新になりました。
久しぶりに書いてみると、今と若干小説の書き方が違っていたのかなぁと感じる今日この頃(笑)
言葉の選び方とか表現方法とか。
きっとわからない程度なんでしょうけど(爆)、若干ニュアンスが違って、感覚がつかめなくなりました(苦笑)。
その若干の違いが表現能力の「成長」ならいいですけど……「退化」だったら嫌だな〜。
一応、どういう話にしようかはなんとなく覚えていたので、それに向けて書いてきたいなぁ〜と。
今回、久しぶりに大野君の大げさなまでの「〜じゃ」と言う台詞を書いたので、ある意味ちょっと新鮮(笑)。
どうしても、普通の言葉になっちゃうのをなんとか気をつけました。
逃亡者の番外編とかたくさん書いてたから……あんまり使ってなかったもので。
皆さん……この連載、久しぶりすぎて、続きもう待ってなかったりします?(爆)
でも、書きます(爆)
TOP