++Happy Birthday++〜萩原幸人の場合〜
今日、僕は誕生日を迎えたらしい。気がつけば17歳。
皆、色々お祝いしてくれたけど…。
1人、なんにも祝ってくれてない人がいる。いや、いいんだけど…。
でもさ、一応なんかあってもいいと思うんだよね。シンメだし。
ま、島田の性格上、ない方が自然な気もするし…。
でも…ちょっと寂しい。
「萩原〜」
呼ばれて振り向くと、すっかり帰る支度を終えた島田が立っていた。
「帰んないの?」
「あ、帰るって。待ってよ」
「遅ぇよ、準備が」
…一緒に帰るんなら声かけてくれたっていいじゃん。
せめて、そのくらいの会話はしてくれてもいいんじゃない?
と、思いつつも口には出さず、急いで帰る準備をする自分がちょっと虚しかったりして。
+++
「疲れたな」
はぁっと白い息を吐きながら、島田が言う。
今は舞台の真っ最中。頭の中は舞台一色…。
あ、そうか。だから僕の誕生日なんて覚えてられないよね。
だいたい、自分でも忘れてたくらいだし。
「疲れるけど、楽しいよね」
そう答えた僕を見て、島田は少し笑う。
「変だよなぁ。体はすっげー疲れてんのに、舞台に立つのがすげー楽しい」
「ホント、変なの」
つられて笑う僕。
そんな会話をしていたら、島田との別れ道。
バイバイって言おうと思って島田を見るとなんか、考え込んでるみたい。
「なに、なんかあった?」
「や、別に…」
「そ、」
これ以上は聞かない。
こういう態度をとってる時は、あんまり聞かれたくないって時だから。
長く一緒にいると、だんだん相手の気持ちもわかってくるみたい。
「じゃね、また明日」
バイバイ。
と言って先に歩きはじめた僕の背中から
「萩原〜」
と呼ぶ声が。
「何?」
振りかえった僕に、島田が少し照れくさそうに言う。
「おめでと、」
一瞬、なんの事かわからなかったけど…
「覚えてたんだ」
そう聞くと、
「あたりまえだろ。こんだけ一緒にいる相手なんだから」
そう言って島田はくるっと背中を向ける。
「じゃな、」
手をヒラヒラさせて、帰ってく島田。
島田からのお祝いの言葉は誕生日が終わるギリギリで。
きっと、島田は照れくさくてギリギリまで言えなかったんだなって思うとちょっと笑えて、でも嬉しかった。
何気ない言葉でも、嬉しくなっちゃう僕を見ぬいた島田らしいお祝い。
やっぱり、シンメっていいな。
僕の17歳はちょっと幸せな気分で始める事ができた感じ。
島田に感謝…。
…あれ、
ていうか、僕はプレゼントあげたよね…。
なんか…だまされた気分。
END
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