++バレンタイン狂騒曲++

…えっと、どういう事だろ。
靴箱をあけた時、落ちてきたモノに、良知はしばし呆然とした。
これは、紛れもなくバレンタインのチョコレート。しかも綺麗にラッピングしてあるし。
普通なら嬉しいんだろうけど…
良知には素直に喜べない理由があった。なぜなら、ここは今は男子校だからだ。
溜息をついて、良知はその箱を拾う。なんのメッセージもなく、誰からのものかもわからない。
「…なかった、ことにしたい」
そう呟いた時、後ろから声が聞えた。
「おはよ、良知君」
振り向くと、そこには島田がいた。
「あ、おはよ」
と、答えてから良知はふと思い立った。
「島田、これ」
あげるよ。
そういって、箱を差し出す。
「…え?」
箱を手に取り、驚いた顔をした島田を後にし、良知は解放された気分で教室へ向かった。
「…良知君、ちょっと」
なんだよ、コレ。
綺麗にラッピングされた箱を見つめる。
「これって…チョコ?」
なんで、俺に?
良知君、なんかあったのかな。なんで俺にチョコなわけ?
頭がパニック寸前だ。どうしていいかわからないまま立ち尽くしていると、肩を叩かれる。
「よ、おはよ」
「あ、石田…」
「どうしたの、ボーっとして」
尋ねた石田に、箱を差し出す。
「…コレ、チョコ?」
「ん、」
「や、俺受け取れないけど…」
「なんで、俺がお前にやらなきゃなんねぇんだよッ」
睨みつける島田。
「だって、差し出すからてっきり俺にかと…」
焦った〜。
ホッと胸をなでおろす。
「…でも、俺にじゃないんだったら、それってどうしたの?」
「…もらったの」
「えッ!!誰に?誰に?」
ウソ!!どこでもらったの?通学路???どんな子??可愛い??
興味津々で聞いてくる石田に、島田は溜息をついて答えた。
「良知君」
数秒の沈黙の後、石田の叫び声が響き渡った。
++ ++ ++
「それにしてもさぁ、なんで島田なんだよ?」
なぜか不満そうに言う石田を横目で睨みながら、
「ってか、それは俺のセリフ」
とぼやく。
「本人にさ、聞いてみればいいじゃん」
「なんて、聞くんだよッ」
「…どうして、俺なの?って」
ダメ?と尋ねる石田。
聞けるかよ…
心の中で呟く。
「でも、とりあえず、返そうかな」
なんか、落ちつかないし。
「そうだね、一緒に行こうか?」
「ん、頼むわ」
++ ++ ++
放課後、少し早めに生徒会室へ向かう。
「良知君、いる?」
ドアをあけると、良知が顔をあげた。
「あれ、島田早いじゃん」
石田まで。どうしたの?珍しい。
そういって笑う。
「…あのさ、コレ」
そういって、箱を差し出す。
「あー、コレ」
そういって、少し引きつった笑顔に変わる。
「もらえないよ…」
「え?チョコ、嫌いだった?」
「や、嫌いじゃないけど…」
「だったら、遠慮すんなって」
「ってか、なんで俺なの?」
「はぁ?そりゃ、たまたま…」
「…たまたま?何それ」
「何それって…たまたま島田が通りすぎたから」
「え、それって誰でも良かったって事?」
「そりゃそうだろ」
噛み合わない会話を交わす二人に、石田が口を挟む。
「ちょっと待って。このチョコ、良知君が島田に買ったわけじゃないの?」
「はぁ?なんで俺が島田に買わなきゃならないんだよッ!!」
何考えてんだよ、
呆れたように言う良知。
「じゃあ、コレってどうしたんだよッ」
俺、すげー困ったんだけど。
島田が文句を言うと、
「…や、コレは」
言葉を濁す良知。
「もしかして、良知君がもらったの?」
尋ねた石田に、仕方なく頷く良知。
「え、何?どういう事?」
わけがわからないという顔で島田が二人を見る。
「朝、靴箱に入ってたんだよ。で、困ってたら、タイミング良く島田が来たから…」
ゴメン、つい…
笑ってごまかす良知。
「…そ、」
俺が、悩んだ時間を返せよ…
溜息しか出てこない島田。
「それにしても…」
石田がポツリと言う。
「誰が、良知君の靴箱に入れたんだろうね」
なんか、手紙とか無かったの?
聞かれた良知は頭を振る。
「何にもついて無かったよ。この箱だけ」
一体誰が…
3人が机のチョコをじっと見ていると
「あれ〜?皆何やってんの?」
萩原が入ってきた。
3人の顔を見て、机に視線を落す、と
「あ、良知君まだ食べてないの?」
と、何事も無いように問い掛ける。
「…萩原。このチョコの出所知ってんの?」
島田が聞く。
「知ってるも何も…僕が入れたんだもん」
にこやかな萩原に、3人が問いただす。
「どうしてッ!!」
「どうしてって…良知君にはいつもお世話になってるし、お菓子もいっぱいもらってるからお礼に」
何、怒ってんの?
と、3人の顔を不思議そうに見る。
「…萩原、それならそうと。直接くれるとか…せめて名前を書いておくとか…」
してくれたってよかったんじゃない?
そう呟いた良知に
「そっか。誰からかわかんないもんねぇ。今度から気をつける」
だから、そろそろ食べよ?
そういって包みをあける。

「あれ?皆食べないの?」
こんなに美味しいのに…
そういいながら、幸せそうにチョコを食べる萩原。
3人は、ただただそんな萩原を見て、
「バレンタインなんて嫌いだ…」
と、声をそろえて呟いていた。


**********
や、なんか突然書きたくなって(笑)。
本当に何の設定も無く、ものの20分もかからず書いてしまいました(汗)。
ただただ何の意味もないお話書きたかったんです(笑)。
七不思議メンバー使って書いちゃったんですけど…こんなので、皆様怒ってません?(汗)
今度は、ちゃんとこのキャストで番外編書きますッ!!

<< NOVEL