○●水たまり●○ 小さい頃、よく水溜りをわざと狙って歩いたり。 覗き込んでみたり。 そんな事をしながら、びしょびしょになって怒られたり。 今ではさすがにそこまでしないけど(や、長瀬と一緒だとやったりもするけど…)、それでもたまに覗きたくなったりする。 そう思って、不図しゃがんで足元の水溜りを覗き込む… 「あれ」 少し、おかしい。 何が?といわれると、説明できないが… 何かが 「おかしい…」 「何が?」 言われて振り向くと、そこには山口君が同じように水溜りを覗いてる。 「なんていうか…」 そう言って、また覗き込む。 水溜りに映っているのは、僕と山口君。 「何となく、おかしくない?」 そう水の中の山口君に尋ねると、 「確かに、おかしい感じするなぁ」 と首を捻る。 「「何だろ」」 しばらく覗いて、二人で一緒に小さく声を上げた。 「あ!!」 そして、顔を見合わせ、息を飲む。 一呼吸の間を置き、同時に言った。 「「ずれてる!!!」」 そう、ずれてる。微妙にだけど、ちょっとだけ時差がおきてる。 実際の僕と…水の中の僕との間に。 それは、隣に座る山口君にも言える事だった。 「なんでだろうね?」 首を傾げて山口君を見ると、 「わかるわけないじゃん」 とあっさり答えられた。 そりゃそうだけどさ。 「それにしても、不思議だな。水面が揺れてて遅れて見える、とかいう感じじゃないもんな」 う〜ん、と唸りながら呟く山口君。 「ねぇ、なんかさ、あれじゃない?ホラ、よくあるじゃん。怖い話とかでさ」 言ってて、自分でも意味のわかんない説明だな、と思ってたけど… 「はぁ?何、何のこと言ってんの…あぁ、もしかして、あれ?ドッペルゲンガー?」 何故わかる!!! 「山口君って凄いね!!!」 思わず感心してしまう。 「何年一緒にいると思ってんの。太一の考えてる事ぐらいわかるよ」 笑う山口君。 「そんなもんかなぁ〜。俺、あんまりわかんないけど」 首を捻ると水の中の山口君が苦笑した。 「ま、人それぞれだからね」 それにしても… 「なんで、ずれてるんだろうね」 話を戻して、山口君が呟く。 「ホント、不思議」 思わず水溜りに手を伸ばす。 「え?」 思わず手を引っ込める。 今… 「掴もうとした…よ、ね?」 隣の山口君を見る。 「え?見てなかった」 不思議そうな顔で答える。 「や、何か…」 水面に触れた瞬間、水の中の僕は、僕の指先を掴もうとしていた。 確実にそう見えた。 「何だか、怖いや」 呟くと、山口君が笑った。 「怖がりだなぁ、太一は」 どれ、 と山口君が手を伸ばす。 「あ!!止めた方がいいって!!!」 静止するのも聞かず、山口君は水面に手を伸ばした。 「ほら、なんでもないよ?」 そう言って、笑う山口君。 でも、僕は見た。 僕の方を見ているはずの山口君。 でも…水の中の山口君は、僕ではなく… 山口君を見てた。 じっと…見ていたんだ。 「や、まぐち君…」 恐る恐る指を指す。 「何?」 僕が指し示す方を見る。 「何にもないじゃん」 そう笑って、山口君は立ち上がった。 「そろそろ、撮影始まるぞ」 僕の頭を撫で、山口君は行ってしまった。 水溜りには…僕一人。 もう一度、手を伸ばしてみる。 ゆっくりと、恐る恐る。 そして、水の中に手を入れたその時… 「う、わっ!!!!」 確実に引っ張られてる!!! そのまま、引きずり込まれるかと思った時、後ろから勢いよく引っ張られた。 「危ないでしょ、気をつけないと」 まったく、もう… そう言って、僕の頭をポンポンと叩く。 「ま、つおか?」 わけがわからず振り向くと、松岡はニヤリと笑った。 「チャンスを、狙ってるんだから」 「チャンス?」 「そう…入れ替わるチャンスをね、」 だから、気をつけた方がいいよ そう言って、松岡も行ってしまった。 入れ替わる…水の中の僕等は…ここに居る僕等と入れ替わるチャンスをずっと待っているのだろうか。 もし、引き込まれていたら…今度は僕が水の中の住人になる事になっていたかもしれない。 でも… 本当にそんなことが? けど、引っ張られたのは事実だ。 不図 疑問がよぎる。 「何で…」 松岡は、知っていたのだろうか。 無意識に向けた水溜りの中に、映るはずのない松岡が見えた気がした。 Noveltopへ |
いやぁ…当初考えてたのと全然違うお話になってしまった(苦笑)。 お題、難しいですね。 こんなんで、20のお題クリアできるんでしょうか? 本当に不安になってきました(苦笑)。 |