○●世界を変える方法●○

僕が暮らすこの世界が、もしかしたら偽りのものだとしたら。
僕が、こうして音楽をやって、普通に暮らして、何気ない日常を送るこの世界が、偽りだとしたら。


僕は、どうするだろう


「太一君どうしたの?元気ないじゃん」
言われて、不図顔を向けると、隣に松岡が座ってた。
「そう?」
「うん、元気ない。考え事?」
「…うん、ちょっとね」
会話しながら、ちょっとだけ考える。
もしかしたら、松岡だって偽りかもしれない。
そう思うと、ちょっと怖くなった。
「…何?何な訳?」
思わず、少しだけ身体を引いてしまった僕に、松岡が苦笑い。
「あぁ、ごめん。ちょっと、怖くなっちゃって」
「何が?」
「松岡が」
「はぁ!?なんで!!」
「松岡が、松岡じゃないのかな、って思ったら」
「…あの、国分さん?意味わかんないんですけど」
目をパチクリさせる松岡。
「あのね、この世界が偽りだったらどうするかなぁって考えてたの。何もかもニセモノで。松岡だって偽りかもしれない。もちろん、こうして喋ってる僕自体も偽りなのかもしれないよね。ね、そう考えたらちょっと怖いでしょ?」
「…てか、そんな事考えてる太一君がちょっと怖い」
松岡が笑う。
「なんだよ、それ。だってさ…」
と、食って掛かろうとした矢先に、元気な声が僕等の会話を遮った。
「何話してんすか?」
犬のようになついてくる長瀬。
もしかしたら、長瀬だって偽りなのかもね。
「…長瀬」
「なんすか?」
「長瀬、だよね」
「…?太一君?」
「って、聞いた所で意味なんてないんじゃない?」
松岡が言う。
確かに、「そうだ」と言われたとしても、その答え自体が偽りかもしれない。
あぁ、堂々巡りだな。
「ねぇ!!!何の話っすか!!!」
会話の見えない長瀬が少し脹れながら言う。
「あぁ、ゴメン…あのね、」
と言いかけたら、松岡が答える方が早かった。
「長瀬には難しすぎてわかんねぇんじゃね?」
ハハっと笑う松岡。
「松岡君ヒドイッす」
いじける長瀬に、僕はクスリと笑いながら言った。
「あのね、世界の全てが偽りだったらどうしようって話」
「偽り?」
「そ、全部ニセモノだったら怖いよね、って話」
「なんでそんな事考えてんすか?」
「なんとなく、思っただけだけど」
「うーん、確かに怖いけど…でも、俺だったらそんな世界、すぐ変えちゃいますね」
「変える?」
「そ。だって、信用できない世の中って事でしょ?だったら、変えるしかないでしょ」
「う、ん。まぁ、何となくわかるけど」
「世界を変える方法ってすっげー簡単だと思うんだよね」
「簡単?」
何となく、長瀬の会話のペースに巻き込まれていってる。
でも、それは何となく楽しかった。
「全員がさ、ちょっとだけものの見方を変えればいいだけだと思うんすよ」
「見方?」
「そう、見方。そうすればさ、偽者だと思ってたものだって、本物になるかもしれないじゃないっすか」
あぁ、何となくわかる気がするな。
「長瀬、お前案外頭いいのかもね」
言うと、目をランランと輝かせる。
「マジっすか!!!」
「や、ものの見方を変えてみただけだけど」
ニヤリと笑うと長瀬は苦笑した。
「ま、そういう事ですよ。見方が変わるだけで180度変わるって事っすね」
「…世界中が長瀬みたいな人ばっかりだったら、争い事もない世界になるかもしれないね」
何気なく言うと、
「それ、すっげー褒められてる感じ」
そう言って、長瀬は満足そうに戻っていった。
「末っ子は、無邪気でいいねぇ」
隣の松岡が言う。
「松岡だってたいして変わんないじゃん」
言うと、松岡は大げさに肩を竦めてみせた。
「俺、長瀬みたいに純粋じゃないからねぇ」
「確かに、松岡穢れちゃった感じだよね、色んな意味で」
そう言って笑うと松岡が苦笑する。
「ひどいな、太一君」
「冗談、冗談だって。松岡だって俺から見ればまだまだ純粋な子供だって」
そういうと、松岡はビックリしたような顔をした。
「俺より、絶対太一君のが子供に見えるけど」
「うるせぇよ」
クスクス笑いながら、話をしていたら、少し眠くなってきた。
「太一君、眠いの?」
「…ん、ちょっと寝る」
「そっか」
そう言って、松岡は暫く黙り込んだ。
意識が少しずつ遠くなる。
現実と夢の丁度狭間をユラユラと漂っている感覚に溺れていたら、松岡が耳元で囁いた。
「世界をね、変える事は本当に簡単なんだよ」
何?何の話…?
「目を、覚ませばいいだけの事だから」
目を、覚ます?
「所詮ね、全ては夢なんだよ」
夢…?何が??
「世界はね、偽りというよりも…夢なんだよ」
だから…
「世界を変えたいなら…目を覚まして、もう一度眠ればいいだけの話なんだ」
別の夢を見ればいいんだ…
だから…


「おやすみ」


低く…頭の奥に届く声。
もう、何を言ってるのかもよくわからない。
僕の意識は、確実に夢の奥深くへと堕ちていた。

次に、目が覚めるとき

僕は、どの世界にいるのだろうか。




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えっと、意味わかんない(爆)。
私の中で、マボは不思議な人ってイメージなのかな(笑)。
何となく、そういう感じなんだな。やっぱ、夜のイメージがあるからかな(何)。
難しかったな、このお題…。