○●初雪●○

「雪だ!!!太一君、雪っすよ!!」
役場で、ゴロゴロとしていたら、外から長瀬の声。
「ん〜?」
まだ、戻ってこれない意識をゆっくりと働かせながら、長瀬の方を向く。
「雪ですって!!!ねぇ、太一君ってば!!」
ドカドカと俺のところまで走ってきた
                  (犬、みてぇだな)
長瀬が俺の身体を揺する。
「ん、なんだよ…ちょっと、待てって」
眠さと戦いつつ、ゆっくりと身体を起こす。
「あ、ホントだ…」
目の前にはヒラヒラと舞い落ちていく雪。
「積もるかな〜?」
ちょっとワクワクして尋ねた俺に、
「雪だるま、作りましょうね!!」
と笑う長瀬。
「そんなに積もんねぇよ」
苦笑して、長瀬を見る。
「え〜!!!せっかくなのに」
       (何がせっかくなんだか…)
大げさに溜息をつく長瀬の肩越しに外を見る。
深々と…とまではいかないけど、雪は降り続けてる。
「綺麗だな」
思わず呟いていた。
「そうですね。何か…」
ちょっとだけはにかんで、長瀬は俺を見てニィ〜っと笑った。
「美味しそう」

………………

「は?」
聞き間違いかと思って思い切り聞き返してみる。
「だから、美味しそうっすよね」
                                    (…あ、そ〜ですか)
長瀬にかかれば、初雪の美しさも「食い気」に変わってしまうものなんだな…。
クスっと笑った俺に
「何笑ってんすか〜!!!もしかして、馬鹿にしてる?」
拗ねた顔で覗き込んでくる。
「ちょっと、な」
ニヤリと笑って答えてやった。
「ヒドイッす。太一君」
泣き真似する長瀬の頭をペシっと叩く。
「デカイ図体でいじけるなよ」
「図体デカイのは関係ないじゃないっすか」
口を尖らし、ふっと息をつく。
「でも…」
呟いて、しばらく黙り込む長瀬。
「何?」
続きを促すと、長瀬は雪へと目を向けこう言った。

「何か、切ないっすよね。雪って」
儚く消えゆく運命だなんて。

そう告げた長瀬の顔が何だか少し寂しげで。
俺まで少し悲しくなった。
「なんだよ…」
「え?何??太一君」
覗き込んできた長瀬の頭を両手でグシャグシャにする。
「何、するんですかぁ!!!」
抵抗する長瀬に、言ってやった。

「馬鹿。お前らしくないよ」

抵抗する長瀬の手が止まる。
「太一君…それって、慰めてるつもり?」

「は?」

「やだな〜太一君。別に、何にも悩んだりとかしてないっすよ。俺」
ちょっとロマンチスト気取ってみただけですよ。
ニヤ〜っと笑う長瀬。
俺は、更に長瀬の髪をグシャグシャにした。
「ちょっと〜!!!太一君!!!」
「五月蠅い!!!お前はね、「食い気」出してるくらいが丁度いいんだよ!!!」
「ナンすか、それ」
脹れながらも笑う長瀬に、俺もつられて笑った。
「切なくなんてないよ」
笑う長瀬に、俺はそっと呟いた。
聞こえてないかもしれないけど。

「例え、消えてしまうとしても。消えるまでの時間を精一杯生きているんだよ。その瞬間をね…」
だから、綺麗なんだ。



長い沈黙の後。
長瀬が言った。

「そうですね」


外の景色は、徐々に白い色を濃くしていった。

「雪だるま、作りましょうね?」
笑う長瀬に、俺は小さく頷いた。




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いや…すんません。
全然考えてない方向へ走ってしまいました。
やっぱり体調崩しながら小説を書くものじゃないってことを学びました(苦笑)。
精進します…。