**六**

まだ、漆黒の闇が襲い掛かる真夜中だった。
目が醒めた…いや、僕は眠ってなかった。
怖くて。
どうしようもなく怖くて。
眠ったら、いけない。
そう思えて仕方なかった。
「真次、起きてるかな」
一人でいるのが、どうしても怖かった僕は、枕を抱えて部屋を出た。
真次の部屋へ向かう。
足音が…聞こえた。
怖さに足が竦み上がる。
枕をギュッと抱きしめた。
「朝幸?」

心臓が        張り裂けそうだった。

「どうしたの、こんなところで」
その声は
「眠れないの?」
僕を
「何か、温かい物でも…」
ますます恐怖へと導いていく。
「飲む?」
肩を叩かれ、僕はビクっとした。
振り向けない。
振り向けば…
そこには…
「どうしたの、変だよ、朝幸」
クスっと笑う。
そして、僕の身体は、僕の意に反して彼の方を振り返る。
「顔色、悪いよ?」
「…智」
「怖い、夢でも見た?」
全てが…夢であれば。
その方がどんなにか良い事だろう。
「うん…そうかも」
答えた僕に、智はフワリと笑う。
「夢だよ。朝幸…全ては、ただの夢なんだ」
おやすみ、朝幸
そう言って、智は歩いていった。

僕は…。
急いで真次の部屋へと向かう。
途中で、不図気が付いた。
智が…
歩いてきた方向は…

友一の部屋だ。

++ ++ ++
真次は、僕を嫌な顔一つしないで、迎え入れてくれた。
「怖かっただろ?」
そう言って、僕をベッドに潜り込ませてくれる。
「真次…智は友一の部屋にいたのかな」
「どうだろう…部屋から出てくるところを見たわけではないんでしょ?」
「でも…あっちには、友一の部屋しかないよ」
「…そうだね」
「ねぇ…今、あの場所に行ったら…」
「あの場所?」
「智の部屋」
「…朝幸?」
「また、同じ光景が…行われていると思う?」
僕の目は…恐怖で震えていたかもしれない。
真次も…不安の色を濃くした目で僕を見ていた。
「わ、からない…」
搾り出されたような真次の声。
「僕には…わからないよ」
そう言って、真次は枕に顔をうずめてしまった。

結局

僕等はそれから一睡も出来なかった。

++ ++ ++
「おはよう」
真次と二人で降りていくと、直樹が近づいてきた。
「おはよう、直樹」
「どしたの?二人とも」
顔色悪いけど。
尋ねた直樹に小声で告げる。
「あとで…話が」
すると、最後まで聞かずに直樹は言う。
「じゃあ、食事すんだら庭で」
そして、耳元に唇を寄せて囁いてきた。
「友一…起きてきてない」

                   背筋が               凍る。
「おはよう、朝幸」
不図、横から幸人が笑う。
今、僕にとって幸人は救いだった。
何も知らずに、愛くるしい笑顔。
そう…幸人だけは。
何も知らないまま。
無邪気なままでいて欲しい。
僕等は…もう、戻ることは出来ないから。

「さて、食事にしようか」
奥から智がコーヒーカップを片手に出てきた。
「あぁ、おはよう、朝幸。昨日はあれから眠れたかい?」
「…う、うん」
「怖がりなんだね、朝幸は」
笑って、智が席に着く。
「さぁ、じゃあ食べよう」
智の一言で、皆が食事を始める。
僕は、とにかくただ口にモノを運んでいただけだ。
味なんて全くわからない。
何を食べていたのかも全然わからない。


友一は…結局起きてこなかった。






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6話です。
お久しぶりの更新になってしまいました。
実はものすごく乗っていたらしく、物凄く長くなったので、2話に区切りました。
なので、久しぶりの2話同時UP。
7話もUPしてます。
確信に触れ始めております。
予定よりも早く(爆)。おかしい…思ってる方向に行かないうちに真相が(汗)。
気をつけねば…

って事で、背景も新しく。
BGMも新しく(笑)BUCK-TICKを聞きながら。
ホント、B-T様様状態です(笑)。
気持ちが乗ります〜♪




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