NO1.出会い

「寒いだろ?おいで…ボクの家に」
…その言葉と同時に伸ばされた手に、僕は拾われる事になった。
病院を抜け出して丸3日。無理やり抜いた点滴の痕が痛み、何も食べずにフラフラして、ファーストフードのゴミ捨て場に力尽きて蹲っているところを、僕は無理やり引き起こされた。
「すっかり汚れちゃって…洗えばきっと綺麗なネコなんだろうね」
微かに微笑んだその人は、まるで作りもののように美しい顔立ちをしてた。
青い瞳はまるでガラス玉のように…金髪の髪は絹のように…白い肌は…まるで血が通ってないかのように。その人に、僕はネコとして拾われることになった。
「ほら、立てる?」
言われて、コクっと頷いた。
「声、出せる?」
「…うん、」
「可愛い声じゃない」
「可愛いっていうなよ」
「助けてあげた人に向かって言う台詞じゃないね」
「…ごめんなさい」
「どうする?僕の家に、くる?」
「…」
「いいんだよ、僕はどっちでも」
選ぶのは…君だ。
そう言って笑った眼は、やはりガラス玉のようだった。
感情を映さない瞳…。
「行っても、いい?」
「もちろん。イイ子に出来るよね?」
「うん…」
「じゃあ、一緒においで。僕ね、ちょうどネコを飼いたかったんだよ」
嬉しそうな彼に、ボソっとつぶやく。
「ネコじゃ、ないのに」
「何?」
「なんでも、ない」
「いいんだよ。僕がネコって言ったらネコなんだから。だってね、僕が拾ったんだよ?」
わかった?
覗き込まれて思わず頷く。
「よし、イイ子だ」
そう言うと、彼は僕を抱え上げた。
「ちょ、っと…」
「歩けないでしょ?大丈夫。抱えていってあげる」
「おろしてよ…」
「全く、イイ子にするっていったでしょ?」
「…」
「わかればいいんだよ」
さぁ、帰ろうか。
歩き出した彼が嬉しそうに尋ねた。
「ねぇ、名前ある?」
「…朝幸。屋良朝幸」
「朝幸か。いい名前だね」
「アンタは?」
「僕?慎吾。町田慎吾」
「…ふーん」
そのまま、会話も続かず黙ってしまった僕に、町田慎吾は苦笑した。
「ま、仲良くしようね」
++ ++ ++
たどり着いた先は、海辺にある小さな家だった。
真っ白な壁に囲まれた部屋を通り、バスルームに向かう。
「さて、まずは毛並みを綺麗にしないとね」
言ったと同時に、服を引っ張られ、あっという間にバスタブの中に入れられて、頭から滝のようにシャワーを浴びせられた。
「何すんだよっ!!」
何とか不満を口に出すと…
「ネコってどうしてお風呂が嫌いなんだろ…」
と溜息をつく。
「嫌いとか、そういう問題じゃ…」
まだ続けようとする僕の頭にシャンプーをかけ、ワシャワシャと洗い始める。
「ちょ、ちょっと…」
暴れようとすると
「全く、躾のなってないネコだなぁ」
と苦笑しながら立ちあがる。
「しっかり綺麗になったら出て来るんだよ?わかった?」
そう尋ねられて、仕方なく頷く。僕は、拾われた身なのだ。
「イイ子だ」
そう言うと、町田慎吾は出ていった。
一生懸命綺麗に体を洗って出ると、洋服が一式用意されていた。
少し、大きめな洋服に手を通し、町田慎吾がいる場所を探す。
と、台所で、彼は料理をしていた。
「綺麗になった?」
「うん…」
「こっちにおいで」
「…」
近づくと
「うん、やっぱり綺麗なネコだね」
にっこり笑って僕の頭をクシャっと撫ぜた。
「お腹、空いただろ?今、作ってやるから待ってな」
言われてテーブルについて待つ。しばらくすると目の前に3日ぶりの食事が。
「美味しそ〜!!!」
「ちゃんと食べてなかったんだろ?早く食べな?」
優しそうに笑う町田慎吾に、大きく頷いて勢い良く食べる。
そんな僕を見ながら町田慎吾は質問をしてきた。
「ね、どこから来たの?」
「…」
「間違えた。どこから、逃げてきたの?」
ビクっとした。どうして、逃げてきたってわかるのか…もしかして、彼は…僕の敵??
「点滴、無理やり抜いた感じするから…」
僕の気持ちを見透かしたように、彼は続けた。
そっか、そういわれれば…点滴の痕が不自然に腫れていた。
「…答えたく、ないんだけど」
ダメ?
尋ねると、彼はにっこりと笑う。
「いいよ。君が話したくなったときに聞かせてくれればいい」
「ありがと…えっと、」
「慎吾だよ」
「慎吾…ありがと」
「どういたしまして。さて、コレを食べたら今日はもう寝たほうがいい」
疲れてるだろ?
慎吾は食べ終わった僕を慎吾のベッドに寝かせてくれた。
「今日はココを使いなよ。明日になったら君の部屋を作ろう」
じゃあ、おやすみ。
そう言って、慎吾はドアを閉めた。
久しぶりの休息…。
やっと息をつくことが出来た僕は、大切な事を思い出した。
「…どこ、行ったんだろ」
大丈夫だろうか…見つかって、連れ戻されたりしてないだろうか…。
「探さなきゃ…」
明日になったら、お礼を言ってココをでよう。
それから…薬はどうしただろ。
確かシャツのポケットに入れてたはず…
慎吾が捨ててなければいいんだけど。
聞いてみなくちゃ…
そう思いながら僕のまぶたはゆっくりと閉じていった。
**********
きゃ〜vv連載開始してしまいました!!!
だってだって…こういうの書きたくて書きたくて(笑)。
コインロッカーに通ずる感じがあるかもしれません!!シリアスです〜!!!
やっぱり、私はこういうの(どういうの)好きなんだな、って感じで(笑)。
まだまだ屋良と町田しか登場しておりませんが…いっぱい出てくる予定(笑)。
どんな内容かはまだ内緒。でも、ちょっと痛い感じですから覚悟した方のみお読みになった方がいいかもしれません…。コインロッカーより痛いかも(苦笑)。

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