第三幕

「なぁ、これから何処行くわけ?」
ただただ街中をウロウロする町田に向かって森田が問いかけた。
「えっと…。学校、途中で抜けてきちゃって…家にも帰れないし…」
「だったら、さっきカバン取りに行った時に言えよ〜!!店で時間つぶし出来たのによ〜」
全く…
ブツブツと文句を言う森田に町田はすっかり俯いてしまった。
「ごめんなさい」
あまりにもシュンとする町田に、森田は溜息をつく。
「そこまで落ちるなよ!!ったく、オメェも冗談通じねぇタイプだな。それがダメなんだよ」
「え?」
「重てぇ感じすんだよな。ま、俺が何とかしてやるよ」
安心しろって。
肩をバシバシと叩かれる。
「は、はい…お願いします」
オドオドと答える町田。
「で…名前」
顔を覗き込まれて町田はビクっと身体をそらす。
「だから、いちいちビビんなって!」
「あ、すいません…」
「いいよ、もう。それより名前!!」
「えっと…町田、です」
「…お前、馬鹿か?」
「えぇ!!な、なんでですか?」
「「町田」はわかってんだよ。お前さ、俺はこれからお前の「親友」っていう設定で生活していくわけだよ」
「はぁ…」
「親友が「町田」しか知らなかったらおかしいだろ?下の名前を教えろっつってんの」
「あ、すいません…」
「だ〜!!!!だから!!!いちいち謝るなっつーんだよ!!!」
「ごめんな…さ、い」
「………。で、名前は?」
「慎吾、です」
「じゃあ、これから慎吾って呼ぶから」
「はぁ…」
「お前も、俺の事「剛」って呼べよ?」
「あ、わかりました」
「…それから。その喋り方何とかなんねぇ?」
「え?」
「敬語使ってたらおかしいじゃん。親友なのに」
「で、でも…」
「いいから!!!今度敬語使ったら都度ぶっ飛ばすかんな」
「は…い、っと…う、うん」
目を白黒させてアタフタする町田。
「ウヒャヒャッ…お前、よく見ると面白ぇな!!」
気に入ったわ。
「な、お前の事聞かせろよ。俺、お前の事全然知らねぇからよ。家族の事とか、学校の事とか。好きな事嫌いな事…とにかく、色々聞かせてくれよ」
「うん、わかっ…た」
「なぁ、腹減ってね?」
「…そう、いえば」
「俺さ、すげー美味い店知ってんだけどさ。行く?」
「え?連れてってくれるの?」
「おう。慎吾も行った事ある場所だけどな。そこで色々話聞かせろよ」
「うん!」
「お、いい感じになってきたな。お前、今みたいに元気にしてる方がいいんじゃね?」
「そ、そうかな?」
「俺が言うんだから間違いねぇって。よし、じゃあついて来いよ」
「あ、森田…じゃなかた、剛君、待ってよ!!」
颯爽と歩き出した森田を町田は慌てて追いかけた。
++ ++ ++
たどり着いた場所はさっき町田が怯えながらドアを開けたあの店で…
「えっと…剛君、ココって…?」
首を傾げる町田に「まぁ、いいから」と森田は勢いよくドアを開けた。
「坂本君〜!!!腹減った!!!何か食わして!!!…あれ?」
ガランとした店内。
「誰もいねぇのかよ」
チっと舌打ちをして、奥を覗き込む森田。
「あれ?なんでいんの?」
奥のソファに腰掛けて本を読んでいる人物に声を掛けた。
「おん?剛君やん。久しぶりやな」
「っつーか、なんで起きてんだよ、お前」
「忘れてんの?今日からメンテやん」
ニッコリと笑うその男は、眉目秀麗な顔立ちに、漆黒の前髪がハラリとたれてきたのを鬱陶しそうにかきあげた。
「誰?その子」
本をパタリと閉じて、森田に問いかける。
「あぁ、コレ、町田慎吾。今回の俺の雇い主」
「ど、どうも…」
ペコリとお辞儀した町田に、男は手を差し伸べた。
「よろしく。俺、岡田准一。と言っても、またすぐ眠るから、そないに逢わへんと思うけどな」
岡田と森田に視線を何度も向け、町田は不思議そうに首をかしげた。
「岡田も俺と同じ「傀儡」なんだよ」
町田の疑問を察して、森田が答える。
「メンテ…って?」
「あぁ、俺等、出番がなけりゃ年中寝っぱなしだからよ。年に一度、長野君が魂吹き込んでくれて、俺等の体の調子を確認してくれんだよ」
「それにね、寝てばっかりやと突然起こされたときに、時代の変化についていけへんからね。年に一回、一回の魂でもつ2週間。その時代の事を覚えるんや。その年に仕事をしててもしてなくても。皆と顔合わせする意味も含めて必ずメンテがあるんよ」
「ま、時代の事覚えたところで、出番のない年もあるけどな」
二人は笑う。
「…あの、僕、よくわからないんですけど…お二人は、人形、なんですか?」
その質問に、少しの沈黙の後、森田はお腹を抱えて笑った。
「あ、あの…剛君?」
オロオロとする町田に
「お前、今頃その質問かよ?おせぇよ!!お前、マジ面白れぇ!!!」
「だって…」
「ま、いいや。それも含めて、話しようぜ」
そう言って、思い出したように岡田に問いかける。
「なぁ、坂本君たちは?」
「ん?まぁ君達なら買い物行ったで」
「やべぇな。食材の買出しなら、俺等の分も頼まねぇと飯にありつけねぇ」
慌てて、ポケットから携帯を取り出す森田。
「携帯、持ってるんだ」
普通に呟いた町田に
「だから、時代に合わせて進化してるんだよ、俺達も」
そう笑って答え、通話を押した。
「あ、坂本君?俺。…違ぇよ。そんなんじゃねぇって。今、何処?買出し??あ、そうなの??ラッキー!間に合った。…そう、よくわかんね。さすが年の功。…あ、冗談!!冗談だって。頼むよ。もう腹へって死にそう〜!!…うん、いいよ。任せる。じゃね!!!」
携帯を切って、岡田を見る。
「なんで俺が電話するといっつも「何かやったのか??」って聞かれんだ??」
不思議そうな森田に岡田はクスっと笑う。
「やって、剛君いっつも何かやらかすやん。しゃあないわ、それは」
「なんだよ、お前まで」
ブスっと脹れて岡田の隣にドカっと座る。
「あ、慎吾も適当に座れって。飯、作ってくれるっていうからよ。待ってようぜ」
「あ、うん…」
言われて、町田も空いている場所に腰掛ける。
「剛君、相変わらずやね。その性格」
「何が?」
「や、なんでもない。なんか、安心するわ。変わってへんねやなって」
「ば〜か。変わんねぇよ」
岡田の頭を小突く森田。
「あ、あの…」
そんな二人に、町田がやっと声を掛けた。
「何?」
「あの…さっきの質問なんだけど…」
「あぁ!!俺等が人形なのかってやつ?」
「うん…」
「話すと長くなるんだけどよ」
「や、別にそんな長くならんで」
「うるせぇな、横から口出すなよ」
「せやかて、剛君の話やったら、彼、わからんかもしれんよ?」
「いいんだよ。とりあえず説明すっから」
そう言って、剛は町田の方を見た。

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更新。第三幕!!!
しかも、長いので、ココで切っただけ。同時に四幕も更新してます!!!
すごい!!!すごいけど!!!!!内容全然進んでねぇ〜(爆)。
とりあえず、四幕で剛ちゃんと岡っちの過去がわかります。
そして、坂本君と長野クンの事もチロっとね。
だって、一応この話、この二人が主役ですから。
で、五幕から、町田さんの回、という事で、町田さんに活躍してもらう…予定(笑)。
何せ、初期段階なので、背景を色々と書き込んでいかないと、話が進められないのです。
今回は、背景いっぱい考えちゃってるんで大変なのです(苦笑)。
多分、そのうちの8割は書かずに終わると思いますけど(爆)。

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