++第1話++

「今日は暇だな」
そういって、窓の外をボーッと見つめる。
青空に、白い雲が風に流されていく様を見ながら、少し眠くなってきた彼は大きくあくびをした。
「お茶、飲まない?」
絶妙のタイミングで、片手にポットとティーカップの乗ったトレイを乗せて、ドアから顔を覗かせてきたのは…
「幸人、すごいね。丁度喉が乾いたところだったんだよ」
ニッコリと笑うと幸人、と呼ばれた人物もニッコリと微笑み返す。
「そうでしょ?そんなころだと思ったんだ。たまにはのんびりお茶するのもいいんじゃない?」
そういって、幸人は紅茶を注ぐ。
「そうだね、たまにはゆっくりとお茶するのもいいもんかもね」
カップを手に取り、ゆっくりと口に運ぶ。
…と、その時
「な〜にが、「たまにはゆっくり…」なんだよ。いっつも暇じゃねぇかココ」
ドアに凭れ掛りながら、腕を組み悪態を垂れる人物が。
「うるさいなぁ…ちょっと優雅な気分に浸りたかったんだよ」
幸人は口を尖らせてぼやきながら少し睨みつける…が、倍返しに睨まれた。
「あのな、そんな暇があったら、他にする事あるんじゃねぇの?」
「何を?」
首を傾げた幸人に
「とにかく、玄関でも掃除しながら依頼主でも探して来いよ」
ほら、行った行った。
と、幸人をドアから押し出す。
「ちょ、ちょっと〜!!まだお茶飲んでないのに〜!!!」
と、虚しい抵抗をしてみるものの、結局幸人は追い出されてしまった。
「…ちょっと、冷たいんじゃない?」
尋ねると、
「…だからって、ちょっと甘すぎるンじゃねぇの?」
と返される。
「ケドさあ」
「つーか、いちいちアイツのやる事に付き合ってたら大変だよ?」
「でも、楽しいけどね」
ニッコリ笑う。
「…良知君、人が良過ぎだよ」
大きく溜息をついてみせる。
「そう?島田ほどじゃないと思うけど?」
「ま、お互い様ってとこか」
苦笑する島田。
「そうだね。…それにしても、暇だね〜」
「確かに、最近暇だな」
1度仕事が入ると、しばらくは忙しい日々を送るのだが、仕事が途切れるとぱったりと暇になってしまう。
そういう商売をしているのだから仕方がないのだが…ここ数日はあまりにも暇すぎた。
「僕って、信用ないのかな?」
尋ねた良知に
「つーか、仕事自体が胡散臭ぇんじゃねぇの?」
答える島田。
「…そんな胡散臭い仕事手伝ってるのは何処の誰だったっけ?」
「…や、でもさ。実際胡散臭いし。あの看板もかなり胡散臭いし」
「酷いなぁ…」
と、会話してたら
「失礼します〜。依頼人探してきました〜。お客様ですよ〜」
とヒョコっと顔を覗かせる幸人。
「「お客様??」」
声を揃えた二人に幸人はニッコリ笑ってから中に入るように勧める。
「失礼…します」
入ってきたのは、サラサラの髪を肩くらいまで伸ばし、一瞬女性のような風貌の、目の青い少年だった。
「いらっしゃいませ。どうぞ、そちらへ」
良知は椅子へ座るように促す。
「…あの、ホントに見つかりますか?」
裏返った声で恐る恐る尋ねてくる少年に
「とにかく、少し落ちついて。さぁ、お茶でも飲んでリラックスして下さい」
と、少しぬるくなった紅茶を進める。
「ホントに、困ってるんです」
紅茶を一口飲んで、顔を上げた少年は訴えるような目で良知を見た。
「まずは…お名前を聞かせてもらえますか?」
良知の問いに、少年は少しオドオドしながら答える。
「あの…その前に。本当に見つけてもらえますか?」
執拗に尋ねてくる少年に良知はにっこりと笑った。
「大丈夫。表にも書いてあったと思いますが…うちは「見つけ屋」です。どんなものでも探し出してみせます」
                 
「…や、でもなんだか胡散臭い看板だったんで」
その言葉に「ほらみろ」という顔の島田。
「よく、入ってきたよな」
島田の言葉に
「や、なんか外で掃除してた人に引っ張られて…」
とモジモジ答える依頼人。
そんな姿を見て、ちょっとだけ溜息をつきながらも良知は依頼人に笑いかけた。
「確かに、あの看板は胡散臭いかもしれませんが、腕は確かです」
必ず、探し出しますから。
その良知の言葉に、依頼人はやっと少しだけ笑った。
「よかった。本当に困ってるんです。助けて下さい」
「まずは…お名前を教えていただけますか?」
良知の問いに、少年はまたオドオドしながら答えた。
「あの…多分…町田、慎吾」
「多分ってどういう事だよ?」
島田が良知の隣から身を乗り出す。…とビクっと怯える町田。
「…島田、怖がってるよ」
「失礼なヤツだな、俺の何処が怖いってんだよ」
「や、全部だと思うけど?」
サラっと答えて、良知はまた町田に尋ねる。
「あの…多分って、どういう事なんですかね?」
「覚えて…ないんです」
「「はぁ?」」
これはさすがに二人の叫び声だった。
「覚えてないって…」
「だから…探して欲しいんです」
「え??」
「お願いします!!!困ってるんです!!!助けて下さい!!!」
必死に腕にすがり付いてくる町田を何とか引き剥がし、良知は目をパチパチさせた。
「あの…町田さんの探して欲しいモノって…?」
町田は、大きく深呼吸をし、真剣な眼差しで良知を見つめて答えた。
「…記憶です」


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唐突に新連載開始(爆)。
あ、でも連載になるか、短編になるかは私の気分次第(ヲイ)。
だって、ホントに何にも考えずに思いつきだけで書いちゃったんだもん。
一応キャラ設定はずっと使おうと思ってた探偵モノの設定を使ってみました(笑)。
ちょっと不思議な世界を書いていけたらいいなぁと思ってます。
ちょっとコメディも入った感じの…

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