++第2話++

「「記憶!?」」
二人が同時に叫んだ時、
「失礼します〜」
と、呑気な声で幸人が入ってきた。
「粗茶ですけど」
幸人は4人分のお茶をテーブルへ置く。
「…なんで、4人分?」
島田の問いに
「僕の分」
と答える幸人。
「お前は関係ないだろ」
「だって、僕お手伝いさんだよ?」
「だからなんだよ」
「聞く権利があると思う」
「ねぇよ!」
どなる島田を良知が宥める。
「いいから、いいから」
「…良知君、やっぱり甘いな」
ぶつぶつと文句を言いながらも、従う島田。
「で、この人、何を探してるの?」
尋ねる幸人に良知は困ったように告げた。
「記憶…なんだって」
「記憶〜?そんなの探せないじゃん」
「えぇ!!!探せないんですか?そんなっ!!だって、見つけるって言ったじゃないですか!!」
どうしてくれるんですか!!ウソだったんですか!!
と、大騒ぎな町田を何とか宥める良知。
「落ちついてください。幸人も勝手な事言わないの」
「…だってぇ」
シュンとする幸人に向って
「怒られてやんの」
と含み笑いの島田。
「…確かに、難しい依頼です。でも、約束したからには必ず見つけ出しますから」
横で突付きあって「ケンカ」という名のジャレ合いをしている二人をよそに、良知は町田に向って告げた。
「ホントですね?信じていいんですね?」
「大丈夫です。必ず、あなたの記憶を見つけます」
大げさに胸を叩いて見せた良知だったが…胸中は不安でいっぱいだった。
++ ++ ++
「見つけ屋」という仕事はどうやら先祖代々ひっそりと受け継がれてきたらしい。
あの胡散臭い看板も先祖代々のものだ。電話番号やらを時々書きなおすために、板を削った後が要所に見られ、より一層胡散臭さを演出している。
その訝しげな家業を良知は半年前に親から引き継いだ。
かといって、別に両親を亡くした訳ではなく…
『今日から、新たな人生を歩む事にした。後は頼んだぞ』
と、父が突然母を連れて海外へ逃げた…基、移住してしまった為、引き継ぐ事になったのだ。
「…押しつけられたかな?」
と、一時期は悩んだりもしたが、始めてみると案外面白い仕事だったりもするので、良知は結構気に入っていた。
とはいえ…彼の本業は学生である。
平日ともなれば、日中は学業に専念しなければならない。
「…記憶かぁ」
窓の外を見ながらボソっと呟く。
つい、仕事の事を考えてる自分に不図気づき、慌てて教科書へ視線を戻す。
あくまでも、本業は学生である。大学も受けようとしている良知は学校にいる時間はしっかりと勉強しておきたかった。何せ、学校から1歩外へ出てしまえば、「見つけ屋」として活動しなければならず、勉強する暇もないのだ。…や、正確には、暇はあるが、環境がそれを許さない。
「…あいつ等、いつから入り浸ってんだっけか」
つい、深く溜息をついてしまう良知だった。
++ ++ ++
「なぁ、どう思う?」
良知の溜息の原因の一人がもう一人の原因に話しかける。
「何が?」
「記憶って、どうやって探すんだ?」
「そうだよね〜、探しようがないよね」
机にペタっと突っ伏して、答える。
「良知君、あぁ言ってたけど…探せンのかな?」
腕組しながら首を捻る。
と、そこへ…
「何?依頼の話?」
と、首を突っ込んでくる人物が約1名。正確にいうなら、彼も少なからず溜息の原因である。
「そ、なんかわけわかんねぇの」
「何?何??」
「記憶、見つけてくれってんだよ」
「はぁ?」
そんなの、見つけられないじゃん。
「だろ?石田もそう思うよな」
「だってさ、探しようないじゃん。今回はさすがに手伝う事出来ないなぁ」
と、ボソっと呟いた。
石田は良知の家の隣にある探偵事務所の息子である。
…探偵事務所と見つけ屋。なんとなく似たような職業が隣同士にあればライバル意識が芽生えそうなものだが、如何せん「見つけ屋」が胡散臭すぎる為、扱う依頼も全く異なり、問題なく仲良くお隣さんを続けている。というか、石田は自分の家の仕事よりも、何故か良知の仕事を進んで手伝おうとする。
それでも、今までの依頼は見習探偵な石田の活躍も結構役に立つ事もあったのだが…
「記憶なんて…どう探すつもりだろ」
石田も首を傾げてしまった。
「「「うーん」」」
三人が一斉に唸ったところで、響き渡る叫び声。
「お前等〜!!!まじめに授業を受けろ〜!!!」
…何度も言うようだが、彼らの本業は「学生」である。
++ ++ ++
依頼者である町田は、記憶が見つかるまでは良知の家に住まわせる事にした。
朝、良知が学校へ行く時には町田は熟睡中だったので、食事を置いてそのまま出かけてきた。
少しばかり心配だったので、学校が終わると同時に急いで家に向う。
…そんな良知の後ろには溜息3大原因がピッタリとくっついてきていた。
「良知君、どうすんの?」
石田に問われ、
「何が?」
と問い返す。
「だって、記憶って探せるもんじゃないでしょ?」
もっともだ。それはもっともなのだが…
「でも、依頼受けちゃったし」
何とか探さないとね。
良知の言葉に、島田が口を挟む。
「でも、どうやって探すわけ?」
「それを、これから考えないとね」
「でも、記憶ってどうやって落すんだろうね〜」
不思議だね〜。どうやって落ちてるんだろうね〜。
と、一人ちょっと不思議な感性で話しているのは幸人である。
「…幸人。多分ね、落ちてるわけではないと思うよ」
一応、幸人の想像を気道修正してやったところで、家に到着。
「ただいま」
鍵をあけて、奥の階段へと向う。
ちなみに、一階が事務所で、二階が自宅となっている。
階段を上り、ドアをあけると…
「誰ですか!?」
と、いきなり裏返った声で尋ねられた。
「誰って…町田さん、僕ですよ」
「…あの、誰でしたっけ?」
本気で不安そうな町田に
「…あなたから依頼を受けた良知ですよ」
ニッコリ笑って答える。
「依頼…えっと…あの、どうして僕、ココにいるんでしょうか?」
ココって…どこでしたっけ?
町田の問いに全員が思わず絶句してしまった。
「あのですね…」
順序だてて良知が説明すると、町田は数回目をパチパチさせた後…
「あ、あぁ!そうでした。思い出しました」
と、苦笑した。
「記憶…そうとう深刻ですね」
良知が言うと
「そうなんですよ〜。困ってるんですってばぁ〜」
と半泣き状態の町田。
「えっと…とりあえず、昨日の事は全部思い出せましたか?」
「…全部というか、ここに来た事は思い出しました」
「じゃあ、昨日の夕飯なんでした?」
「え…?」
固まる町田。
「ふぅ…わかりました。とりあえず、記憶を見つける為の糸口を探す為に、町田さんの行動をゆっくりと遡っていきましょう」
どこまで、覚えているか。いや、思い出せるのか。
「思い出せなくなったあたりが…あなたが記憶を無くしてしまった地点だと考えられます」
まずは、それを調べましょう。
良知の言葉に、町田はゆっくりと頷いた。

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第2話です〜。
今回は今までとは違う書き方をしてみてるんですよ。
今までってどうしても心理描写重視だったんで、会話文が9割占めてる感じだったんですが、今回はそれを…7割くらいにしたいなと(ぇ)。心理描写も大切にしつつ、小説としての形も形成していければ…と思っております。
えー、先は全く考えておりません(ヲイ)。
コメディタッチなので、勢いで書いていきたいと思いますv


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