++其の十参++
「ここがその教室か…」
ドアの前に立ち、島田が呟く。
「さて、入ろうか」
良知がドアを開ける。
教室内はなんとなく冷たい空気が漂っていた。
「なんか、ヤな感じだな」
石田が島田に話しかけ、振り向いた時、ドアが閉まった。
「…またかよ」
どいつもこいつも出口塞げばいいと思いやがって…
屋良が文句を言っていると、どこからともなく声が聞こえた。
『助けて…』
「..聞えたやろ、今。オレが聞いたのと同じや」
福原が言う。
『助けてよ…』
もう一度聞えてきた声に、萩原が問い掛ける。
「一体、何を助ければいいの?」
窓の傍に1人の少女の姿。
『知ってるくせに…あの時、結局助けてくれなかったじゃない』
少女の視線は良知に向けられている。いや、良知を通して彼へと…
「大野君は、君を助けたじゃないか」
『違うわ、言われたのよ。あれはただ、憎しみを忘れさせられただけで、本当に君を救ったわけじゃない。彼は自分達を救っただけだって』
「それは違うっ!!」
『私の望みは私が窓から落ちそうになったあの時、笑いながら見ていた男に復讐する事。憎しみを忘れて成仏する事じゃないわ』
そういうと、少女は不敵に笑う。
『飲まれちゃえばいいのよ、あんた達なんか』
そう言って少女の姿は消えた。
「どこ消えたんだ?」
島田が窓の傍に駆け寄ろうとしたその時、
「うわっ!!」
地面が揺れる。
「じ、しん??」
「や、違うよ。この教室が揺れてる!!」
空間が歪むように教室の床がグニャグニャに揺れている。
「飲まれろって…教室にか?」
ふざけんなよ、
島田がドアを蹴る。が、ビクともしない。
「なんとか方法はねぇのかよ」
島田が叫ぶと同時に、天井から触手のようなものが飛び出してきた。
「うわぁっっ!!!!なんだよ、これ!!」
逃げてもしっかりと追いかけてくる。
「いてぇっっ!!」
石田が捕まる。それは体中にまきつき、締め上げる。
「髪の毛だ…」
大堀が呟く。
触手のようなそれは、少女の髪の毛だった。
「2年前より…強力になってる。こんな事、起きなかったよ」
唖然とする良知。
「彼女、教室と一体化しちゃったんだ…」
とにかく、石田君たすけなきゃ…
そういって萩原は何とか、石田の傍までたどり着くと呪文を唱えながらポケットに手を入れる。
「 っ 」
ポケットからお札をとりだし、髪の毛目掛けて振り下ろす。と、石田を締め付けていた髪はバサッと床に落ちる…。
が、
「げッ…なんだよ、これ」
落ちた髪は床を這いながら彼らを追いかける。
そして、天井からは新たな触手が…
「キリがないよ…」
萩原が言う。
空間の歪みはどんどん酷くなっていく。
「なんとかならないのかよ?」
叫ぶ石田。
「大野君、助けろよ〜〜!!!」
屋良も叫ぶ。
良知と萩原は触手を退治するのに精一杯だった。
「せめて、この教室の歪みさえなくなれば…」
「あのコとこの教室を結ぶ何かがあるんちゃうの?」
大堀が言う。
「結ぶ…モノ?」
少し、考えた島田が突然走り出す。
「わかった!!この教室は、止まったままなんだよ。彼女が落ちた時から」
そう言いながら歪んで上も下もなくなってきている教室の黒板の上を目指す。
そこにあるものは…
「だから、動かしてやればいいんだ。そうすれば、あのコとのつながりが消えるはず…」
触手を振りきり、目指すものへと必死に向かう。
そして、たどり着いた先は、この教室の時計だった。
「これさえ、動かせば…」
時計目掛けて拳を振り落とす。
表面のガラスが割れ、文字盤が剥き出しになる。
その文字盤の針を動かす。
かなり強力な力で封印されているのか、なかなか針は動かない。
「ちくしょう..。動けよッ!!!」
全身の力を振り絞って針を掴む。
微かに針が動いたと同時に時計が時間を刻みはじめた。
「島田、危ない!!!」
教室の歪みが元に戻った為、島田は黒板の上にある時計にぶら下がった状態に。が、時計の針が島田を支えきれるはずがなく、そのまま床へと落下する。
「..ってぇ」
声がして下を見ると、そこには
「早くよけろよッ!!重たいだろ」
落下地点に先回りして、島田を抱きとめようとした良知の姿が…。
「あ、ごめん…」
そういって、良知の上からよける。
まわりを見ると、触手は消えていた。
「終わったのか?」
呟く石田に
「まだ、くるよ」
萩原が向けた視線の先には、さっきよりも不敵な笑みを浮かべた少女が立っていた。
*******
いやぁ…。十参ですよッ!!
それにしても短くてスイマセン…(汗)。しかもわけわかんなくなってきてるしッ。
今回幸人活躍なし(笑)。直樹メインなお話になってしまいました。
それに、MAOもほとんど出てないし…。
次回は屋良っちをメインにしたいなぁ…と。
でも、結局最終的には幸人に頑張ってもらおうと思ってますけど(笑)。
あとは、大野君ですね。もうすぐ出てくると思われます、多分(ぇ)。
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