++其の十弐++


あれから1週間が経つ。
特別何事もなくすごし、萩原の怪我もすっかり良くなったみたいだった。
もちろん、大野君からも何の連絡もない。
こっちから電話してもつかまらないし…
多分、大野君は俺を通して状況を見ているんだと思う。
だから、時々声が聞えてくるんだ…
「なんだかんだ言って、もう5つも解決したんだねぇ」
すごいすごい…
と、まるで人事のように感心している石田が、しばらく考え込んでた良知に話しかける。
「ん、そうだね。それにしても…なんで俺のベッドに石田が寝てるわけ?」
いつのまに…
少し飽きれたように言う。
「だって…もう、帰るのめんどくさかったし」
良知君、話しかけても全然かまってくれてなかったじゃん。
「ま、いいけど」
俺も寝ようかな…
そう思った矢先に良知の携帯がなる。
「…島田だ」
もしかしたら…
良知にも石田にも緊張が走る。
「もしもし…」
通話ボタンを押した良知の耳に島田の興奮気味な声が聞えた。
「良知君、とうとう6番目の登場だよ」
「やっぱり。じゃあ、俺の家に…」
と言いかけたら、すかさず島田が口を挟む。
良知君の家、集合。皆、集めといて
あまりにも簡潔に切れた電話を見つめていると後ろから石田が得意げに言う。
「ね、帰らないで正解だったでしょ」
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「で、目撃したのはいつ?」
さっそく島田に連れてこられた「目撃者」に尋ねる。
「先生に言われて治樹と旧校舎に机とりに行ったんやけど」
「なんや、教室出た後、ふと時間見たら時計が止まってんねん」
「止まった時計は18時24分をさしてたんや」
「…偶然じゃないの?」
疑う石田に大堀が反論する。
「違うって。俺のも止まったんやで。しかも、同じ時間で」
不思議やろ?
福原が首をかしげて良知を見る。
「…確かに。ねぇ、屋良っち。確か2年前の旧教室の話も…」
「ビンゴ。旧教室の時計は18時24分で止まってたはずだよ」
萩原と二人で並んでポッキーを嬉しそうに食べている屋良が答える。
「シンクロしたのかなぁ」
最後の一口を名残惜しそうに食べた萩原がやっと口を開く。
「シンクロ?」
「そう、たまたま二人がその時間に教室入っちゃったから…」
…なるほど。
萩原の言葉に頷いた島田が、大堀に向かって言う。
「それにしてもさ…2回も七不思議に当たるなんて」
物好きだよな…
そう言った島田に大堀が答える。
「あんな、直樹…なにも好き好んで霊に会うてるわけちゃうんやで」
こっちもええ迷惑や…
ぼやく大堀をなだめながら福原が続ける。
「それに、教室出るとき…微かにやけど誰かの声を聞いた気がしたんや」
『助けて…』
確かにそう聞えたという。
「それにね、この時計…どんなに頑張っても動かへんのやけど」
なんでやと思う?
萩原に尋ねると、萩原は少し考えてからこう言った。
「確かめに行ってみる?」
+++++++++
「だいたいさぁ。なんで机とりに行ったの?」
余計な事するから、お化けに会うんじゃん…
屋良が文句を言うと
「俺の机、壊れてんねん。使いづらくてしゃあないから文句言ったら持って来い言われて…」
「…壊れたんちゃうで。治樹が壊したん」
「壊したぁ??」
「あんな丈夫なモノどうやって?」
全員が声をそろえて尋ねると…
「ダンスの練習してて。ぶつかって倒したら脚とれた」
…うそだろ?
思わず声にだした島田に、
「ネジ、バカになってたんやって!なんとかつけ直してもグラついてしゃーないから取り替えてもらう事にしたんや」
ウソついてどないすんねん…
呟く大堀。
そんな会話を交わしている間に旧校舎にたどり着いた。
「ねぇ、さっき二人は偶然シンクロしたっていったよな」
石田が不思議そうに首をかしげる。
「うん。言ったけど」
「だったら、今の時間にいってもダメなんじゃない?」
時間、全然違うし。
納得のいかない顔をしている石田に、萩原は笑顔を向ける。
「大丈夫。二人の時計がシンクロしたままだから」
会えるよ、きっと。
まるで友人に会いにいくかのような萩原の台詞に、屋良はため息をついた。
「…できれば、会いたくないんですけど」


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ハイっ!!なんとか十弐まできましたねぇ(拍手!!)。
これ、書いてる途中に地震ありました。ちょっとドキドキ(笑)。
…てか、この回、ちょい短め??(笑)
今回のナビは…かなり悩んだんですが(笑)、一哉と治樹。
またしても治樹(笑)。前回は出番薄だったんで…。
それにしても…相変わらず、展開は遅いです(爆)。
…実は、今の段階でもこの霊の設定何にも考えてません(爆)。
これから考えます…(汗)。

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