++其の十八++

「この先、ここにいると危険かもしれない。どうする?」
それは、島田や石田に問い掛けられた言葉だった。
「ここまできたら、最後まで見届けるよ」
島田が言い切る。石田も頷いている。
「じゃあ、」
とりあえず、アイツを探してみるか?
そう言いながら、封印されているはずの場所に向かう。
「ちゃんと、封印されてるみたいだけど」
良知の言葉に、大野は首を振る。
「これ、僕の封印じゃないのじゃ」
「え?」
「誰かが…封印しなおしてる」
誰が??
誰もがそう思った時、背後からいきなり声がした。
「僕が、やったの。このくらいの封印、解くの簡単だったよ」
振り向くと、そこには一人の少年が立っていた。
「いつのまに…」
良知の囁きに彼は答える。
「さっきから、ずっと…」
見てたんだよ。
唇の端を少し持ち上げる。
「だって、お兄ちゃんが呼んだから」
「お兄ちゃん?」
怪訝な顔で尋ねる島田。
「助けてって…お兄ちゃんが呼んでたから」
だから、出してあげたの。
少し…おかしい。
焦点の定まっていない眼。
「アイツ、弟がいたんだ…」
呟く大野に少年が近づく。
「あなた、お兄ちゃんの事閉じ込めた人でしょ」
「違うよ、閉じ込めたんじゃない。あのままじゃ、アイツは…」
罪を重ねてしまうから。
そう辛そうに答えた大野に、少年は吐き捨てるように言った。
「だったら、なんで浄化してくれなかったんだッ!こんなところに封印されて…」
どんなに辛かったかわかるか?
それは、少年の口から発せられている言葉のはず。
だが、紛れもなくアイツの声だった。
「…君は、誰?」
尋ねる大野に、少年はニィっと笑って答えた。
「山下智久。腹違いの弟だよ…」
…俺のな。
言いながら、大野の手を掴む。
「どうして、この場所に留めておいたんだよ」
俺は、お前に浄化して欲しかったのに…
「…出来なかったんだ。お前の力が強くなりすぎて」
僕の力じゃ、封印するだけで精一杯だったんだ…
涙眼の大野の腕をさらにキツく掴む。
「あの時、俺は誓ったんだ。もう一度、この学校に復讐してやるって」
お前にも…復讐する為に。
そう言い放った少年の手が大野の腕に食い込んでいく。
「ッ…」
「俺はもう、あの頃の俺じゃない…」
お前等の事も…
「傷つけても…平気なんだよ」
「うぁッ…」
大野の腕から血が流れ出る。
駆け寄る町田。
「やめろよッ…もう、コレ以上人を傷つけんなよ」
そんなヤツじゃなかっただろ…
涙する町田に少年の手が触れる。
と、同時に町田は吹き飛ばされる。
「くッ…ゲホッ…」
机に背中を強打し、咳きこむ。
「遅いよ、俺はもう…心が傷つかないんだ…」
俺を殺した、アイツ等のように…
そう呟いた少年の眼は、寂しそうな色をしていた。
「…だったら、気が済むまでやれよ」
大野が呟く。
「でも、俺だけにしてくれ。俺…一緒に行くから」
もう、終わりにしよ?
訴える大野。それを振り払うように頭を振り、少年は答える。
「言っただろ?もう、遅いんだよ」
「うぁ         ッ…」
大野の悲鳴が聞える。
「復讐してやる。全てに…」
血だらけの大野の腕を捻りながら、少年は呟いた。


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十八です♪
まだボスの名前出てないですね。でも、もう腹くくりましたんで(笑)。次回登場します。…笑ってやってください(爆)。といえば、きっとわかる人はわかるでしょう(汗)。
今回、山Pも登場。ほら、やっぱりあの人の弟といえば、山Pがいいかな?と(笑)。
あ、幸人が出てないですね…(汗)。
ぢつは、今回かなり話長くなりそうだったんで割ったんです。
もう、すでに十九話も書き始めてます。いよいよ、ホントにラストスパートですvv


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