++其の十七++

「ゆ、きと…、」
もがき苦しむ田口が萩原を呼ぶ。
「た、すけて…よ、苦し…ッ」
すがるように差し伸べられる手。思わず掴みそうになり、慌てて手を引っ込める。
「ゆき、と?」
「…田口、じゃないでしょ。今、喋ってるの」
「な、に…、言って…」
「違う、僕にはわかるよ。田口じゃ、ない」
田口は、苦しそうな顔を萩原に向ける。
「幸人…助け、てよ。苦しくて…苦しくて…」
涙を流す田口に、一瞬萩原の気持ちが揺らぐ。
その瞬間に田口は近づき、萩原の両肩を掴んだ。
しまった…。
そう思った時にはすでに遅く。
「苦しくて…我慢できなかったから」
顔を上げた田口は…笑っていた。
「殺しちゃったよ、コイツ」
田口が吐き出したモノは…
「式神ッ…」
「まさかッ…」
良知が呆然とする中、田口は萩原を掴む手に力を入れる。
「こんなの、効かないんだよ」
さぁ、どうする?
田口は笑う。
「傷つけたり、できないよね。だって…」
トモダチなんだから。
萩原の両肩には、田口の手が食い込んでいく。
「た、ぐち…」
血が滲む。でも、抵抗できない。
例え、操られているとはいえ、この身体は田口自身だ。
傷つけるわけには…でも、どうすればいい??
田口を…救うことはできないのか?
萩原だけじゃなく、ここにいる全員がそう思っていた。
…1人を除いては。
「うッ…」
蹲る田口。
その田口の背中にお札を貼りつけながら印を切る大野。
「…悪いけど、」
オトモダチじゃないのじゃ。
大野は呪文を唱える。
「お前みたいなトモダチ、作ったことないのじゃ」
だから、バイバイ…
大野が呪文を唱え終わると、お札が光を放つ。
「ぅ、ぁあ・……ッ」
もがく田口。その口から苦痛と共に、黒い霧のようなものが飛び出していく。
「慎吾、それ逃がさないでッ」
「OKッ!!」
町田が黒い霧状のモノを四角い箱のようなものに詰め込む。
「ッ…」
床に倒れこむ田口。
「もう、大丈夫。でてったから」
大野が手を離す。駆け寄る島田達。
「田口ッ!!大丈夫か??」
「ん…」
「しっかりしろよッ」
石田が揺すると、田口は眼をあける。
「…あれ、ここは?」
「田口?田口だよな??」
「島田君…。石田君も…どうしたの?」
「…よかったぁ」
紛れも無い田口本人の声を聞いて、萩原が安堵する。
「まだ、安心はできないのじゃ」
大野が言う。
「とりあえず、コイツを浄化しないと…」
町田が差し出した箱には…
「これが、田口の中にいたモノ?」
良知が近づく。
「ん。ラッチの読みはほぼ当たってたのじゃ」
「じゃあ、これは…」
「そう、色んな人達の悪意を具現化したものなのじゃ。誰でも、少しは持ってる悪意。それを集めて1つにした事で悪意自体に人格のようなものが生まれちゃったんだ」
「…でも、悪意が自然に集まったわけじゃないですよね」
尋ねる良知に大野は頷く。
「誰かが、故意的に悪意をかき集めて、田口君にいれたのじゃ」
「誰が…?」
「とりあえず、浄化が先」
そう言って大野は萩原に近づく。
「僕、力使いすぎちゃったのじゃ」
だから、よろしく。
そう言って微笑む大野。
萩原は箱に手をかざす。
「・・…       ッ」
光が箱を包む。そして、箱の中身はキラキラと散っていった。
「さすがなのじゃ」
笑う大野。
「ゴメンナサイ…。僕が、躊躇したから…」
大野君、すごく力使う羽目になって…。
俯く萩原の肩に大野が手を置く。
「あそこで、躊躇しなかったら…逆に怒ってたかも」
トモダチは大切にしなくちゃ。
にっこり笑う大野に、萩原が答える。
「…ありがと、大野君」
「それより、ラッチ。肩、手当てしてあげて」
力、残ってるでしょ。
大野に言われる前に、萩原の両肩に手を当てていた良知は力を注ぐ。
うっすらと光が萩原の肩を包み、痛みが引いていく。
「スゴイね。ラッチ、そんな事もできたんだ」
屋良が感心していると、
「屋良っち、昔助けてもらってたじゃん」
町田が言う。
「え??そんな事あった?」
「ほら、よく転んだりしたとき、ラッチが手を当ててくれてたじゃん」
「あれって、治してくれてたの??」
「なんだと思ってたの?」
「おまじない」
はぁ…
深く溜息をつく町田。
「さて、どうやら大詰めみたいなのじゃ」
大野が話を戻す。
「一体、誰が…」
悪意を田口の中へ入れたのか。
今までの霊を操っていたのは…
「どうやら、僕らは思い違いをしてたみたいだよ。ね、ラッチ」
「思い違い?」
尋ねる良知。
「そう、あの封印は…解かれていなかったわけじゃない」
ボスは…アイツだよ。
「もう騙されないのじゃ」
大野は不敵な笑みを浮かべた。

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十七ですv
結構順調に書き上げられました。…が、内容的にはどうなんでしょうね(汗)。
徐々に主役が大ちゃんになりつつある今回(笑)。
何気に田口を助けた大ちゃんですが、かなり力を消耗しております。
かなり大変だったのよ?私の文才の無さで伝わってないと思うけど(爆)。
最終的には幸人に大活躍していただく予定です。
なにより、田口君…助かって良かった(ホッ…)。
ボス…一体、どんなヤツなのか??
あ、Jrの誰か…ではないですよ、多分。だって…うらまれそうだし(爆)。

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