++其の十弐++ 「え…?」 塾から帰ろうとした野田は、携帯に山のように入っていた留守電を聞いてそのまま良知の家にやってきた。 ついたとたんに良知から説明された事はあまりにも唐突すぎた為、驚きに目を見張ったまま固まってしまった。 「聞いた事、ない?弟の事」 良知に尋ねられ、野田はなんとか返事をする。 「前に…ホントは双子だったってだけは聞いた事あるけど…」 まさか。 「その、まさかが現実に起こってるんだよ」 良知が言う。 「ココに、いるの?」 尋ねた野田に、萩原が頷いた。 「野田君、ホントに見えないんだね」 「うん、俺そういうの全然見たことないし…」 「ちょっと、手伝うから…」 そういうと、萩原は野田の手を取り、呪文を唱え出す。 野田の目の前にうっすらと霧のようなものが見え始め… 「あッ…」 野田は、息を呑んだ。 そこには、まさしく自分の姿が見えたのだ。 「お兄ちゃん…」 「…ホントに、俺の弟なのか?」 「やっと会えたね。いつも傍にいたのに、こうして会うのは初めてだなんて、変な感じだね」 苦笑する彼になんて言っていいかわからない野田はとりあえず尋ねた。 「俺に、伝えたい事って…」 「あのね、狙われてるから…気をつけて。事故とか病気とか…」 「狙われてる??」 「うん。死霊が付きまとってるんだ。だから、なるべく一人にならないで…」 一人になると…ヤツらにつかまりやすくなっちゃう。 「死霊…俺、死ぬって事?」 「僕が助けてみせるから…」 絶対に… 「…」 そのまま黙り込む野田と弟。そんな二人に萩原が苦しそうに言う。 「ごめん、そろそろ限界…もう、言い残した事、ない?」 「ごめんなさい!!あと1つだけ…。僕の分まで…幸せになって。いつも、祈ってるから…」 そう言って、弟は野田を見て笑った。そのまま姿は薄れていく。 「…ふぅ」 フラッとした萩原を傍にいた島田が支える。 「大丈夫か?萩原」 「うん…ちょっと、力使いすぎたかも」 そう言って、床に座ると、萩原は野田に言った。 「ね?ちゃんといたでしょ?」 「うん、ビックリした…。俺の事、助けるって言ってたけど…」 俺、かなり危険なのかな… すっかり不安いっぱいになってしまった野田に 「大丈夫。僕等もお手伝いする事にしたから」 笑顔で萩原が答える。 「え??」 「野田君を助けてみせる。だって、彼と約束したから」 萩原の言葉に全員が頷く。 「…ありがと」 野田も、少し笑顔になる。 「でね、良知君」 萩原は良知を見た。 「何?」 「早速今日から野田君を一人にしないようにしたいんだけど…」 「とりあえず、今夜は家に泊まればいいよ」 「え?でも…」 戸惑う野田に 「一人にならないでって言われたばっかりだろ?」 と島田が言う。 「でも迷惑じゃ…」 「全然迷惑なんかじゃないから。狭い部屋だけど、泊まってってよ」 「ありがとう、正直一人で帰るのはちょっと怖かったんだ」 そう言って、申し訳なさそうに笑う野田。 「いいんだよ、野田。遠慮する事ないんだから」 ベッド、使っていいからね。 と、野田に笑いかける良知に向って 「良知く〜ん」 背後から聞える甘えた声。 「…」 「ねぇねえ良知君〜」 「…何、」 「俺も家遠いから泊まってってもいい〜?」 もう、夜も遅いし。 ひっそりと溜息をつく良知。 「石田ん家、遠かったっけ?」 「いいじゃ〜ん。俺、結構役に立つよ?」 甘えモードな石田には勝てない…。 「…いいよ、泊まってって」 仕方ないな…。 そう呟いた良知に、 「じゃあ、俺も」 と眠そうな声の屋良。 「はぁ?ちょっと、屋良っちまで…」 「だって、もう眠いんだもん」 そういって屋良は良知の部屋のソファに猫のように蹲る。 「…うそでしょ」 呟いた良知をじーっと見つめる人物が約2名…。 「わかったよ!!お前等も泊まってっていいよ」 島田と萩原の視線に負けた良知が溜息混じりに呟いた。 「お前等はもうちょっと遠慮って言葉を知ってくれ…」 ******* 第12話です。 つーか、全然終わってないじゃん(爆)。 今回のサブタイトルは「良知君の憂鬱」って感じです(何)。 苦労が絶えないですね〜、良知君(笑)。 あぁ…私も良知君の家に泊まりたい(殴)。 全然ホラーじゃなかった今回ですが(苦笑)、次回は、死霊と対決編…の予定(ぇ)。 TOP ≪≪BACK NEXT≫≫ |