++其の十四++ 「どこに行くんだろ…」 萩原は、ただひたすら野田の弟の後ろをつけてきていた。 突然、野田の弟が起きあがって部屋から出ていったので、慌ててついてきたのだ。 「良知君に…言ってくれば良かった」 今更気づいたところで遅い。 それにしても…一体、彼はどこへ向かっているのだろう。 と、ふと彼が足を止めた。荒れ果てた空き地の前だ。 「…霊の気配がする」 しかもかなり強力な。 彼が中へと入っていく。 「もしかすると…危険かもしれない」 大きく深呼吸して、萩原も後へ続いた。 「そこに居るのは、解ってるんです」 彼の、声がする。 「僕が替わりに吸収されますから…兄は助けて下さい!!」 そう叫ぶ彼の向こうには… 真っ黒いコートのようなものを羽織った霊が。 「うわ…絵にかいたような死神…」 絶句する萩原をよそに、死神は彼に振り向いた。 「…モウ、オ…ソイ」 …もう、遅い??そう聞こえた。 「しまった…」 野田君が危ない。 死神がやたらと霊気を感じさせていたのは、ココから野田君に霊の波動を送っていたからなのか。 「兄は…連れていかせない!!」 そう言って飛び掛ろうとする彼に萩原が声をかけた。 「ダメだよ!!!君が消えちゃう!!!」 「…は、ぎわらさん」 どうして、ココに? 驚く彼に、萩原は答える。 「それは僕の台詞。僕が助けるって言ったよね。一人で行動するなんて…僕、信用できなかった?」 「…違います。でも、危険な目に合わせるわけには…」 「ま、そんなこと言ってる場合じゃないや。なんとかしなくちゃね」 とりあえず…遠くから霊の波動を直接野田君に送っているのなら…霊気がしないかもしれない。そしたら…良知君は気づかないかもしれない。 とにかく…野田君の身体に霊気が入らないようにお札で結界を張ってもらわなくちゃ… 急いで出たから、携帯電話はおいてきてしまった…でも、どうしても伝えなくちゃいけない。前に、大野君が良知君の精神につながって、言葉を伝えたように…。 僕は…大野くんほどの能力者じゃないけど…僕にでも、精神を繋げる事が出来そうな…僕の一番近くにいる存在の…お願い…繋がって… 萩原は、必死に心を繋げようと祈った。 ++ ++ ++ 一向に霊の気配は感じない…でもコレ以上は放っておけない。 「よし、とにかく除霊しよう」 そういって、良知がお経を唱え始めようとした時、 「…待って!!」 島田が叫んだ。 「…島田?」 「何か…聞こえる」 そう言って島田は黙り込む。 と… 「…お札」 「え?」 「お札で結界を張ってって言ってる」 「…萩原、なのか?」 「うん、この声は…萩原」 「よし、結界だね」 結界って事は…遠くから霊気を送り込まれているに違いない。 そうと解れば対処の仕方はいくらでもある。 「島田、しっかり支えてて」 良知はお札を手に取ると、呪文を唱え始めた。 ++ ++ ++ 「大野くん、遅いよ」 待ちきれず、玄関先で蹲っていた屋良が口を尖らせた。 「ゴメン、慎吾がね…」 「ちょ、俺のせいじゃないでしょ。大野が起きなかったんでしょ」 「慎吾の起こし方が悪いのじゃ」 「…いいから、そんな事言い争ってる場合じゃないから」 珍しく、屋良がまともな意見で二人を良知の元へと案内した。 「どう?どうなってる?」 屋良が声をかけると… 「シィ〜。やっとね、眠ったところ」 にっこりと笑う良知。 「じゃあ、何とか助かったの?」 「うん、とりあえず落ち着いたよ」 ベッドに横になって、野田は静かな寝息を立てていた。 「お札って事は…誰かが霊気を送ってきてるって事だね」 大野が良知に問う。 「多分…島田の意識に、萩原が話しかけてきてそう言ったから…」 「じゃあ、萩原が危ないかも」 慎吾、行くよ そう言って大野はクルっと振りかえる。 「大野くん?」 尋ねた屋良に 「萩原、手伝ってくるから。良知くん、ココよろしく」 「わかりました」 「何かあったらすぐ知らせるから」 「お願いします」 「島田くんと屋良っち…」 と大野は二人を見ると、いつになく真剣な眼差しで 「もしもの時は…良知くんを助けてやってね」 そう言って町田とともに部屋から出ていった。 …と同時に石田が入ってくる。 「…萩原…見つかった?」 「あ、お帰り、石田」 「…って、野田は?」 「大丈夫、落ち着いて眠ってるよ」 「なんともないの??」 「うん、なんとか…」 「良かったぁ…」 ぺタっと座り込む石田。 「ゴメンな、石田。疲れただろ?」 良知に言われ、首を振る。 「や、いいんだけど…なんかさ、空が変に光ってたからヤな予感がしてたんだよ…」 でも、何もなくって良かった… そう言った石田に良知が詰め寄る。 「どの辺??」 あまりにも至近距離で問い詰められて、思わず硬直する石田。 「石田!!!」 「え、えっと…あの、川沿いの空き地あたり…」 「そこだ、そこに萩原が居る」 助けに行きたいが…野田を守らなくては。 でも… 「良知くん…大丈夫。大野くんがついてるから」 島田に優しく言われ、コクっと頷く。 そうだ、大野くんがついてる。 僕は…とにかく野田を守らなくちゃ。 静かに眠る野田に視線をやり、良知は誓った。 ******* 第14話です。 とうとう、死霊と…出会うとこまではいきました(ヲイ)。 久しぶりの大野さんと町田さんコンビの登場ですv とにかく、なんとか続きが繋がって良かったです(ホッ…) それにしても、異常に小説を更新しつづける私(笑)。 TOP ≪≪BACK NEXT≫≫ |