++其の十伍++

確実に、島田と意識が繋がった気がした。
これで、野田君は、とりあえず大丈夫…
安堵の溜息を漏らした萩原は再度死神と向き合った。
「さて、今度はコッチの番だね」
野田の弟を自分の後ろに隠し、萩原は呪文を唱え出す。
      
だが、死神はものともせず、ゆっくりと萩原に近づいてくる。
                      
負けずに必死と唱える萩原。
しかし、死神は萩原を片手で掴み上げた。
「萩原さん!!」
野田の弟が叫ぶ。
それでも、萩原は呪文を唱え続ける。
「ム…ダ、ダ…」
死神の声が聞こえた。
萩原はわかっていた。
自分の力では、コイツは倒せない。
それでも…野田を、野田の弟を守るためには、戦うしかなかった。
力を振り絞り、式神を繰り出す。
式神はもの凄い勢いで死神目掛けて飛び出した。
だが、次の瞬間
「−ッ!!!」
目の前には…無残にも死神に食い尽くされた式神の姿。
死神はニヤリと笑うと萩原へと顔を近づけてくる。
…飲まれる。
このままでは、死神に飲み込まれてしまう。
萩原は自分のもっている力を全て込めて、呪文を唱え始めた。
この先、例え力尽きても…コイツだけは倒さなければ。
ゆっくりと目を閉じ、言葉を紡ぎ始めたその時…
「−ッ」
その断末魔のような叫びに萩原は目を開けた。
そこには…真っ白な、とても大きく美しい鳥の姿。
その鳥が、死神を追い詰めていく。
ふと、死神の力が抜け、萩原は地面へと落された。
「痛…」
尻餅をついた萩原の目の前に差し出された手。
「町田、君…!」
「大丈夫?」
「どうして?」
ひっぱり起されながら、尋ねた萩原に
「屋良っちがね、助けて〜っていうから」
助けに来たんだよ。
そう言って、笑う町田。
「それじゃあ…」
あの、式神の主は…
「慎吾!!おしゃべりしてないで彼を避難させるのじゃ!!」
…間違いなく、大野だった。
「はいはい」
そういって、町田は野田の弟の手を引く。
「ここにいると、危険だから」
逃げようとした町田に野田の弟は首を振った。
「僕だけ…逃げるわけには…」
「なに言ってるの!!ここは大野に任せておけば大丈夫。逃げなきゃ…吸い込まれちゃうよ?」
「でも…」
「いいから、早く」
有無を言わせず町田は弟を引っ張っていった。
「さてと…コレで、戦いやすくなったのじゃ」
呟いた大野は死神に向い、ニッコリと微笑んだ。
「悪いけど、消えてもらうのじゃ」
そう言って、呪文を唱えはじめた大野の体から激しいオーラが放出される。
「凄い…」
息を呑む萩原。
大野の呪文と共に、式神が死神のまわりをグルグルと飛びつづけている。
呆気に取られている萩原に大野が叫んだ。
「萩原!!呪文!!!」
「え!?あ、はい!!」
慌てて呪文を唱え始める。
大野君がいれば大丈夫かも…
そう思い始めていた萩原とは対照的に、大野は呪文を唱えながらも、鼓動が早くなっていっていた。
「ちょっと…厳しい戦いになるかも」
ふと、呟いてお札を手に取る。
死神に近づき、呪文と共にお札を飛ばす。
そのお札は死神に貼り付き、そこから煙を上げる。
…だが。
次の瞬間、お札は跡形もなく飛び散った。
「…やっぱり」
この程度じゃ、きかない。
…長い戦いになる。
大野は確信した。



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第15話です。
ホントにお待たせ致しまして…(汗)。
もう、覚えてる方のが少ないんではないかと…。
実際、私が忘れてましたから(ヲイ)。最初から読みなおしましたよ…。
で、なんとか繋げてみました。でもかなり短いですけど…(謝)。
…もうちょっと「不可思議」の感覚を取り戻さなくちゃ…。

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