++其の伍++

生徒会室で良知と話しこんですっかり遅くなってしまったある日。
歩道橋を上がると、身を乗り出して下を覗いている女の人がいた。
「まさか、自殺…」
慌てて止めようかと駈け寄りかける。
が、彼女は別に飛び降りようとしているわけではないようだ。
「びっくり、させんなよ」
ボソっと呟いてから、彼女に声をかけて通り過ぎた。
「危ないですよ」
すれ違いざまに何気なく言った一言。
自分では何気なくても…その言葉は彼女を振り向かせた。
驚きと、喜びの感情を混ぜ合わせたような表情で。
見られていることには全く気がついていなかった…石田本人は。
++ ++ ++
翌日、学校から帰ってきた石田は家の前で後ろから突然声をかけられた。
「こんにちは」
振り向いて、数秒固まる。
「…えっと、誰だっけ?」
見慣れない女の人がにっこり笑って立っている。
「昨日、声かけてくれたよね」
言われて「あぁ」と思い出した。
「あー、あの時の。それにしても…どうして」
ココに居るんですか?
尋ねた石田に女性はニッコリと微笑む。
「偶然、見かけたからついてきちゃった」
ごめんなさい。
…綺麗な人だな。
石田は思う。
「で、何か用ですか??」
聞いてみると、女性は少し黙ってから切り出した。
「…友達に、なってくれないかな?」
「へ?」
「こうして、1時間でもいいから会ってくれないかな」
「…なんで、」
「…私ね、上京してきて友達も居なくて…一人ですごく寂しかったの。だから、あの時声かけてくれてすごく嬉しくて…」
「そっか、じゃあ俺で良ければ…」
言うととても嬉しそうに目を輝かせて石田の手を握る。
「ありがとう!!毎日…そうね、夜から会いましょう」
「なんで?」
「仕事があるの。だから遅くからじゃなきゃ」
「わかった…とりあえずさ、名前教えてよ」
「マナ」
「マナさん?」
「マナでいいよ。君の名前は?」
「俺…石田、友一」
「じゃあ、友一クンって呼んでもいい?」
「いいけど…」
「決まりね。じゃあ、また明日」
「あ、ちょっと。明日何処に行けばいいの?」
「…そうだなぁ。じゃあ、昨日の歩道橋で」
待ってるから。
そう言ってマナは走っていった。
++ ++ ++
「今日飯食べに行かない?」
生徒会が終わって、帰り支度をしている石田に良知が話しかける。
「あー、ごめん。俺今日は帰る」
「…なぁ、石田。ご飯食べてる?それに…顔色も悪いし」
ちゃんと、寝てる?
心配そうに覗き込む良知に石田は笑って答える。
「大丈夫、早く帰って寝てるんだよ。夜、ちょっと用事あるから」
「…石田、なんか隠し事してない?」
「し、てない」
「でも…」
「してないから。心配しなくていいから。じゃ、また」
逃げるように去っていく石田の後姿に溜息をつく。
「…思いっきり心配なんだよ」
だって、石田の顔色の悪さは…尋常じゃない。
ここ最近島田からの呼び出しもなかったし、忙しくて生徒会でしか会っていなかったけど…。
1週間前に生徒会で会った時よりも確実に…生気が減っていってる。
それに、微かにだが、霊の波動を感じるのだ。
「バカ…」
心配、かけんじゃないよ、全く。
鞄を手にとって、良知は学校を出た。
…萩原の家を目指して。



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第伍話です。
今回のナビ役はなんと石田vたまには生徒会メンバーがナビ役でもいいだろうと思いまして。
石田の次は…野田君とかナビ役にしようかなぁとも思ってます(笑)。
それにしてもラッチ…石田の違いに気がつくなんて…愛ですね(蹴)。
今回、そんなに長くならない予定。

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