+第1話+ 君は、ふと怖くなるときがないだろうか。 誰かに見られているような気配。 誰かにつけられているような感じ。 振り向いても、そこには誰もいなくて…。 視線を戻すとまた感じるあの気色悪い感覚。 今まで、誰でも感じたことはあるんじゃないだろうか。 でも…俺は今、毎日その言いようのない感覚に怯えている…。 ++ ++ ++ 「石田ッ」 叫ばれて、ビックリして顔を上げると… 「何ボーっとしてんの?」 そこには、2年先輩の良知君の顔。 「あ、ゴメン…」 「なんだよ、素直に謝るなよ」 気持ち悪いなぁ。 と、良知君は苦笑する。 「や、つーか…俺、ボーっとしてた?」 「気づいてなかったの??俺、ずっと目の前で「石田〜」って呼びつづけてたんだけど」 「ウソッ!?」 「お前にウソついても何の得にもならないって」 確かに…考え事はしてたけど。 「そんなに、良知君の存在に気づかないなんて…」 俺、よっぽど悩んでたのかな。 少し考え込んだ俺に向かって、良知君が心配そうに尋ねてくる。 「大丈夫?顔色、悪いよ?何か暗いし…悩み事?」 優しいなぁ…。俺、良知君のこういう優しさ大好き。 全然恩着せがましくなくて、適度に心地良い。 「すげー、悩み事」 「ウソッ!黙ってないで相談しろよ!!一人で悩むのって良くないよ」 ほら、親身になってくれるでしょ?人の事なのにさぁ。 ホント、いい人。 「ウソだよ。別に悩んだりしてない」 いい人だから…大切な親友だから…心配させたくない。 「ホントか?俺に出来る事、ない?」 「大丈夫。困ったら真っ先に良知君に相談するから」 …多分ね、出来ないけど。 「それならいいけど…」 納得してない良知君にさりげなく話題転換。 「ね、ところでさ。何か用だったの?」 「あ、そうだった。なぁ、今日暇?」 「暇だけど?」 「じゃあさ、飯食って帰ろう」 ・・・ていうかさ。 「帰りのお誘いをわざわざ昼休みに後輩のクラスまでしに来たの?」 「だって、石田終わったらすぐ帰っちゃうじゃん」 今、言っておかないと。 少しムっとした良知君。 「確かにね、俺帰るの早いからね」 「だろ?」 「わかった。じゃあ、帰り迎えに行くよ」 「俺の教室まで?」 「あ…」 「3年の教室くる勇気、ある?」 「…すいません。ないです」 良知君は別として…3年の教室って迫力あって怖いんだよなぁ。 「俺が、迎えにくるから。先に帰ったりしないように」 「了解」 「じゃあ、後で」 そういって、良知君は戻っていった。 悩み事…打ち明けたら、楽になるだろうか。 でも、打ち明けたからと言って、どうなるわけでもないだろうし。 「はぁ…」 大きく溜息をついたら、後頭部を叩かれた。 「痛ぇなッ!!」 振り向くと 「暗いんだよッ!!コッチまで滅入るだろ」 と、島田が言う。 「だからって殴るなよ…」 「殴ってねぇよ、軽く気合入れてやったんだって」 「ったく…俺は激しく悩んでんだからそっとしておいてくれよ」 「…なんだよ、やっぱり悩んでんじゃねぇか」 あ…しまった。 島田って…こういう事聞き出すのすげー上手いよな。 「あぁ、悩んでんだよ」 開き直った俺に、突然前にきて… 「石田君ズルイよ。良知君にはイイ顔だけ見せてさぁ。僕らにはそんなアンニュイな顔してんの」 そう言って俺のほっぺたをうにぃ〜っと引っ張る萩原。 「いひゃい…はなひぇよ…」 「悩み話すまで離さないもんねぇ」 にっこり笑う萩原。 つーか、離してくれなきゃ話せないっつーの。 「萩原ぁ…お前がそうやってる限り石田は話せないんじゃねぇの?」 あきれる島田。 「あ、それもそうか」 島田…お前が冷静で的確な判断ができるヤツで良かったよ…。 「痛かったぁ…」 と呟く俺に 「あのな、石田。いい加減何悩んでんのか白状しないと、今より数倍痛い思いさせんぞ」 「…俺さ、空手やってんだけど?」 「関係ないでしょ、そんなの」 ニヤっと笑う島田。 ったく、絶対俺より弱いと思うけど…でも、強く思えちゃうんだよな。 なんていうか…迫力あるし、しかもそれがハッタリじゃなくて、実際頼り甲斐あるし。 まぁ、本人には口が裂けても言わないけどさぁ。正直カッコイイと思うよ。男としてね。 「ここ数日ずーっとアンニュイだったもんねぇ」 と、俺を覗き込む萩原。 なんか、癒し系だよなぁ。居るだけでその場が和む雰囲気っていうの? 萩原のそういうとこ好きだなぁ。 …まぁ、時々わけのわからない行動をとるけどね。いきなり奇声発したりするし…。 「っていうかさ、俺が悩み相談したところでお前ら何してくれんの?」 「…そんなの、聞いてみなきゃわかんねぇよ」 そりゃもっともだ。島田の言う事はぶっきらぼうな口調でもいちいち説得力があるんだよな。島田のそのはっきりした性格は好きだ。 俺って、すげーいい友達持ってんだな…。 と、考えていたら… 「おめぇ、聞いてんのかよ!!」 と、また頭を叩かれた。 「ってーな!!!いちいち殴んじゃねぇよ!!」 「おめぇが聞いてねぇから悪いんだろ!!」 言いあう俺達の横から 「ねぇねぇ、今日どこ行く?」 と、唐突な萩原の質問。 「「はぁ?」」 声をそろえてたずねた俺達に 「だって、悩み聞かせてくれるんでしょ?だったらご飯食べながらじっくり話さなきゃねぇ」 何食べよっか。 と、あくまでもマイペースな萩原。 ………。 「俺、今日良知君と約束あるから…」 また、今度な。 そう言うと、萩原はにっこり笑う。 「だったら、良知君も一緒に行けばいいじゃん」 「それはダメ」 「なんで!!!」 「だって、それじゃあ、良知君にも悩みばれるじゃん」 言いきった俺に島田が少しあきれた顔をする。 「なぁ…なんでお前そんなに良知君には弱い部分見せないようにしてんの?」 「だってさ、あの人イイ人だから、人の悩みなのに自分の事みたいに考えちゃうじゃん」 「あぁ…そういうとこあるよな」 「だからさ、あんまり心配かけたくないんだよ。それでなくても最近体弱ってんのに、心配かけたらそれこそ倒れそうじゃん、良知君って」 「…たく。どっちが年上なんだか」 島田が苦笑する。 「それにさ、微妙に俺の悩みに良知君絡んでるかもしれないし」 「どういう事?」 首をかしげる萩原。 「俺も、よくわかんない」 「なんだよ、それ」 わけわかんねぇ、って顔の島田に 「とにかく、今日はパス。明日にでもじっくり相談させてもらうよ」 「絶対だぞ、お前、逃げんじゃねぇぞ」 凄む島田。だから、怖いっつーの。 「逃げねぇよ」 答えた俺に、萩原が言う。 「何食べるか、考えといてね」 …ホント、萩原って和ませてくれるよな。 ************* あぁ…また勢いのみで新連載を始めてしまった…(バカ)。 なんと!!!今回主役はいっちゃんでございます♪ でも、この「KAGE」はですね、久しぶりにシリアス話が書きたくて始めてしまったものなので、ちょっとシリアスかも…。 第一話はとりあえず、人物紹介を交えたプロローグ的なものになってます。 さて、これからどうしようか(ヲイ)。 << TOP NEXT >> |