+第11話+

「邪魔、なんだよ」
その言葉を繰り返しながら、良知君…いや、良知君の影は近づいてくる。
そして、俺の手の下の良知君は、全く身動きする事なく、ただ空を見つめている。
ふと、俺の首に影の手が伸びる。
「お前なんて、消えればいいんだよ」
その手は俺の首を捕らえ、ゆっくりと力を加えてくる。
「く…るしッ」
必死でその手をよけようとする。が、もの凄い力で締付けてくる。
「苦しい?それ、どんな気分?」
ニヤっと笑った影はゆっくりと手を上に持ち上げる。
同時に持ち上げられる俺の体。足が、床から離れる。
もがく俺に向かって、影は更に笑いかける。
「教えてよ。俺が俺になる為に…色んな感情を知りたいんだ」
そう言った影はそのまま手を振り下ろした。
床に叩きつけられる。
「痛ぇ…」
「…痛い?それってどんな感じ?」
影は俺の腕を掴み、そのまま捻りあげた。
「…ッ!!」
声にならない痛みが走る。
骨が軋む音が聞こえる。
…折れるッ!
「ねぇ、痛い?」
子供のように残酷な笑みを浮かべ、瞬間力を込めた。
「う、ぁ      ッ!!!」
俺の右腕は…ありえない方向に曲がって…骨が砕けた音がした。
「ずっと…一番傍にいたんだ。誰よりも傍にいたのに。俺よりも、お前の方が、楽しそうに…仲良くして…許せなかったんだ。俺は、ずっと一緒にいるのに、見てもらう事すらない。存在すら忘れられたりする。許せない…許せないよ」
だから…
「真次になろうと思ったんだ」
「…良知、君に?」
「そう。本人になってしまえば、そんな思いしなくてすむ。誰よりも近い存在になれる。…その為にも」
お前は、邪魔なんだよ。
影は、俺の首に再度手を伸ばす。
俺は、右足で蹴りをかました。
…が、当る直前、力を抜いてしまう。
「フフ…無理だよ、お前は俺を攻撃できない」
そう…コイツは、良知君なんだ。
例え影だとしても、別の人格だとしても…良知君の姿をしてる。
全力を出す事を、脳の奥が無意識に制御する。
友達に本気で攻撃なんて出来ない…。
「でもね、俺はお前をどんな目にも合わせる事が出来るんだよ」
折れた腕に向かって、影は足を蹴り降ろした。
         ッ!」
痛さのあまり、意識が遠くなりかける。
「ねぇ、俺の今の気持ちはなんて言うんだろうね」
笑いながら近づく影。
そして、項垂れた俺の顔を覗き込み、ニィっと笑った。
「きっと、「楽しい」って言うんだろうね」
ほら…立てよ。
「まだ、遊ぼうよ」
襟首を掴まれ、片手で持ち上げられ、良知君の上に投げ出される。
「ねぇ…今、どんな気持ち?」
上から降る、背筋が凍るような視線。
あぁ…ここ数週間、俺が感じていた視線は、間違いなくこの視線だった。
突き刺さるような、それでいてどこか寂しさを含んだような…体中に纏わりつく視線。
俺は焦点の合わなくなってきた眼を、なんとかその視線の主へ向けて、答えた。
「お前には、一生理解できねぇ気持ち」
「…なんだよ、それ」
「人間って複雑だからさ…気持ちを一言で表すのって…難しいんだよ」
痛みをこらえながらも、なんとか口を開く。
「どういう、事だよ」
「…ムカついてるし…辛いし…痛いし…悲しいし…でも、可哀想な気持ちもある」
「可哀想?」
「お前が、可哀想だ」
だって…
「こんな事したって…お前は、良知君にはなれねぇよ」
そう言った俺に、影は一瞬眼を見開き…
「ウルサイッ!!やっぱり、お前、邪魔だよッ!!!」
瞬間、俺の首は影の両手に捕らえられていた。
++ ++ ++
「ねぇ…連絡、こないね」
ボソっと萩原が呟いた。
連絡を待つ為、萩原は家に帰らず、島田の家にきていた。
「なんにも、なかったのかな?」
独り言のように呟く萩原。
島田は、嫌な予感がしていた。
何もなければ、そう連絡がくるはず。
こんなにも連絡がないのは…
「連絡、出来ない状態になってんのかも」
「へ?」
「萩原…急ごう」
そう言って、部屋を飛び出した。
「ちょ、待ってよ島田!!どこ行くの!?」
後ろから聞こえてきた萩原の問いに
「良知君ン家に決まってんだろッ!」
と、振り向かずに答えながら靴をはく。
「なんか、あったの?」
追いついて靴をはく萩原に
「わかんねぇから確かめに行くんだよッ」
ほら、急げよッ!
萩原の手を掴んで走り出す。
「ちょっと!まだ、靴はけてないってばぁ〜!!」
そんな萩原の声は無視して走り続ける。
向かった先は近所の駐車場。
「島田?なんでこんなトコに?」
尋ねたと同じに島田は立ち止まった。
「家に置いてると親にバレんだろ」
そして…
「ほら、コレ」
と、渡されたのはバイクのメット。
「へ?」
「いいから、かぶれっつーの!」
「ハイ!!」
その間に、島田はバイクにまたがるとエンジンをかけた。
「…ってか、いつの間にバイクなんて」
「いいから、乗れッ!!」
「ハイッ!!!」
「落ちんじゃねぇぞ」
落ちても助けねぇからな。
そう言った、島田の言葉に
「…ホントに助けてくれなさそう」
と、呟きながら後ろに乗る。
「しっかりつかまってろ」
島田の声に、萩原が返事をする間もなく、もの凄いスピードでバイクは走り出した。



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第11話です!
きゃ〜!!!島田のバイクに乗りたい〜(爆)。
って事で、なんでバイクかっていうと…
1.急いでるのに、そのまま走っていくのはどうかと思う…
2.かといってタクシー乗っちゃうのもどうかと思うぞ…
3.だからって、自転車はちょっと…
って事で、バイクにしちゃった(笑)。
…そんな事より石田さん!!石田さん!!!いやぁ〜!!石田さんがぁ〜(叫)。
って言ったところで、書いたのは私(爆)。
そろそろホントにエンディングです。果たして、どうなるのでしょうか…。


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