+第10話+

学校に居る間、俺達は交代で良知君につきっきりだった。
やはり、良知君は授業中に倒れたりを繰り返していた。
それでも…学校に出て来れている間は良かった。
俺達の目の届くところにいたから…。
1週間がたったある日、寝坊してしまって、ギリギリに学校に来た俺は、机に鞄を置いた途端、島田に肩を叩かれた。
「石田…」
「あ、おはよ。なんだよ、暗い顔して…」
なんか、あったのか?
尋ねた俺に、島田はゆっくりと告げた。
「良知君が…来てないらしい」
「え?」
「俺さ、今、屋良君に会ったんだけど…まだ、来てないっていうんだ」
「良知君、いっつも早く来てるじゃん」
「そうなんだよ。屋良君も言ってた。いつも自分より早く来るのに…って」
もしかして…これない状態なんじゃないだろうか。
真剣な眼差しで言われ、俺は背筋がゾクっとした。
来ることが出来ない状況…それって…
慌てて、教室を飛び出そうとした俺は、見事に先生につかまった。
「石田。お前、最近授業に出なさすぎだぞ。このままじゃ進級させないぞ」
「つーか、そんな事より大事な事があるんだよ!」
「話は後でじっくり聞く。とりあえず席につけ」
言われて、机まで連れ戻される。
椅子に体を投げ出して、溜息をつく。
こんな事…してる場合じゃないのに。
…と、突然。
「すいませ〜ん」
萩原の声。
「なんだ、萩原」
先生の問いに…
「なんかぁ〜、島田君が唸ってます〜。具合悪いみたい〜」
「大丈夫か?島田?」
先生に問われ、島田は苦しそうに答える。
「や、ちょっと…気持ち悪い…」
「保健室、行くか?」
「…けど、歩くの…辛い」
そう言った島田はチラっと俺を盗み見た。
あ、そういう事か。
「先生〜」
「なんだ、石田」
「俺、連れてきます。保健室」
「お前が?」
「だって、島田歩けないって言ってるし。男一人軽く抱えられんの、この教室で俺くらいだと思うし」
「…だがなぁ」
渋る先生に向かいまたしても萩原が。
「せんせ〜い」
「なんだ、萩原」
「僕、一緒に着いてきます。それなら、いいでしょ?石田君、見張ってますからぁ」
その言葉に、先生は渋々頷いた。
「よし、石田。島田を保健室につれてってやれ」
「は〜い」
俺は、気持ち悪いくらいイイ返事をして、島田を抱えあげた。
そして、そのまま教室をでる。
後ろから、ヒョコヒョコと萩原もついてくる。
そして…教室から少し離れたところで…
「いつまで抱えてんだよッ!!降ろせっつーの」
と、睨む島田。
「あ、ゴメン」
「いいから、早く行けよ」
「けど…バレたら、お前達も怒られるじゃん」
「大丈夫、保険医には貸しがあんだよ、俺」
ニヤリと笑う島田。
…怖いけど、ありがたい。
「じゃあ、俺行くわ」
「なんかあったら、すぐ連絡よこせよ」
島田の言葉に、俺は深く頷いて急いで学校を出た。
++ ++ ++
「ただいま戻りました〜」
ドアをあけて入った萩原に先生が問い掛ける。
「萩原、石田どうした?」
「なんかぁ、島田がとっても具合悪いみたいでぇ、保険の先生が、とりあえず連れて帰れって言ったから、そのまま連れて帰りました〜」
「何?」
「で、僕も二人の鞄届けるんで帰ります〜」
そう言うと、萩原は石田と島田、そして自分の鞄を手に、教室を出た。
先生はただ呆然と萩原を見送ってしまった。
そのまま、保健室に向かい、ドアをあける。
「島田ぁ〜。持ってきたよ〜」
「おお、サンキュ」
そう言って、島田は鞄を受け取ると、
「さて、帰ろうぜ」
と、萩原の手を引いた。
ドアをあけて、思い出したように振り向くと…
「じゃあ、よろしく」
と保険医に向かってウインクした。
ドアを閉めて出ていった島田に、
「ったく、教師を脅すなんて、イイ度胸してるよ」
と、保険医が溜息をついたのは言うまでもない。
++ ++ ++
「良知君!!」
鍵はかかっていなかった。
そのまま、中へ入る。
良知君を探して、部屋を順番に奥へと進んでいく。
ある部屋のドアをあけようとする…と、背後に人の気配がした。
振り向くと、そこには…
「良知君!」
ビックリして叫ぶと、ニヤリと笑う良知。
「…良知、君?」
様子が、おかしい。
後ろ手にドアをあけ、少しずつ、後退りする。
と、ゆっくりと近づいてくる。
目の前に居るのは、確かに良知君の姿。
…でも、違う。
何かが…違う。

一体…何が?

ずっと後退りしていた俺は、何かにぶつかってそのまま座り込んだ。
そこは、良知君のベッドで…そして、とっさについた手は、ベッド以外の感触を感じとった。
恐る恐る、視線をベッドの上に落とす。
そこには…
「どうして…」
良知君が、居た。
真っ青な顔。体温を感じない体。
そして…何も映していないかのような眼。
…一体、何が。
島田の言葉を思い出す。

『多分良知君になりたくなったんだと思う』

まさか、本当に…?
視線を目の前の良知君に戻す。
すると、ゆっくりと俺の傍に近寄ってきて…
「邪魔、なんだよ。お前」
と、不敵に笑う。
それは…紛れもなく良知君の声だった。


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第10話です!
えぇ…多分、お気づきだとは思いますが…現在思いっきりスランプですわ、私(爆)。
でも、頑張りました〜。無理やり繋がった気がしないでもないですけど許して下さい(汗)。
そろそろエンディング迫る!!!
今回は、島田さんとゆっちんの息の合ったコンビネーションが光ってましたね(ぇ)。
それにしても…目の前に、同じ人物が二人居たら…怖いですよね。
いっちゃん…どうなってしまうんでしょうか?そして、ラッチは一体どうなってしまったのか!!!
…以下、次号(笑)。


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