++キセキの夜++

街中に恋人達が溢れ、幸せそうな笑い声が響くであろう、この日。
良知は朝から頭を悩ませていた。
「でね、今日さ。良知君の家行ってもいい?」
朝、整理する書類があったので生徒会室にこもっていた良知の元に、突然駆け込んできた島田。
驚く良知にかまいもせずに言いたい事だけ一気に吐き出して、最後に言ったのがこの台詞。
目を輝かせた島田に、良知は溜息をつく。
「ダメだって言ってもくるでしょ」
言い出したら、引く事を知らないんだから、この男は…。
「えー!!俺のが先に約束したじゃん」
どこから盗み聞きしていたのか…ドアが開く音と共に不満そうに訴えてくる石田。
……
「あのね、石田。島田は別にクリスマス祝おうって言ってるわけじゃないんだから」
わけのわからないところで張り合おうとしないでくれる?
「だって、俺良知君の家でご馳走食べんの楽しみだったのに〜」
「俺の家じゃなくてもご馳走食べれればいいんでしょ?」
「いや、それは…」
「自分の家でも食べれるだろ?」
「でも、良知君の家がいい!」
「…ていうかさ、石田も呼ぶつもりだったんだけど」
島田が言う。
「え?行ってもいいの?」
「だって、萩原も呼ぶし、屋良君も呼ぶよ?」
「…それってもしかして」
訝しげな石田の問いにニヤリと笑って島田が答える。
「そ、事件発生」
++ ++ ++
「え〜、今日はケーキ食べるから早く帰るつもりだったのにぃ」
HRが終わったと同時に迎えにきた島田に、萩原が訴える。
「…ケーキならいくらでも買ってやる」
「ホントに?」
「ホント。だからさ、良知君とこ行こう」
皆、待ってる。
「ね、島田。僕、チョコレートケーキがいいなぁ」
「はいはい、何でもいいよ」
すっかり餌につられた萩原を連れて学校を出る。
途中、ケーキを買って良知の家へ向う。
そして、携帯を取り出して呼び出し。
「あ、俺。OKだよ。良知君の家に集合。」
それだけ言って電話を切る。
「…誰?」
尋ねる萩原。
「今回の相談者」
「…だから、誰?」
「大堀治樹」
「またぁ??」
大堀君も、物好きだねぇ…
呟く萩原に、島田も頷く。
「ホント、憑かれやすいヤツ…」
++ ++ ++
「またぁ?」
部屋に入ってきた大堀を見たとたんに、石田の口から出た言葉。
「治樹、…好きだねぇ」
呆れたように呟く屋良。
「霊に好かれ易いタイプなんじゃねぇの?」
島田の台詞に萩原も頷く。
「…五月蝿い!!俺かて好きで付きまとわれてんちゃうわッ!!」
キレかけた大堀を良知がなだめる。
「とにかくさ、何があったのか説明してよ」
ほら、座って…
と、促す。
「なんか、ようわからんのやけど…」
首を傾げながら大堀は話始めた。
「昨日の夜やねん。家帰ろう思うて、一哉と別れて歩いてたら…」

『明日だけ付き合ってください』
突然目の前に、女の子が現れた。
15〜6歳だろうか。
ビックリして固まった大堀に、女の子は更に続ける。
『クリスマスイブだけでいいんです。一緒に過ごして欲しいんです』
真剣に詰め寄ってくる女の子。
大堀は、ちょっと引きながらふと足元を見た。
「うそやろ…」
足が、透けていた。
「お前…生きてへんやろ…」
…慣れてしまったせいか、それとも女の子の雰囲気のせいなのか、怖さを感じずに、普通に会話している自分に少し驚く。
『ハイッ!!1ヶ月前に…でも、大丈夫!!なんの支障もありません!!』

「お前になくても俺にあるやろ…」
『…ダメですか?』
切なそうな眼に、ダメとは言いづらい…。
「や、ダメってわけやないけど…」
『だったら、明日付き合ってくれます??』
「…なんで、明日だけ?」
『それだけで十分だから』
「せやったら、なんで俺?」
『運命を感じたんです』
はぁ?
「運命??」
『とにかく、お願いします!!』
困り果てた大堀は、ふと思いついた。
相談しよ…。
「ちょ、待って…。明日の、夕方まで待って」
『夕方?』
「そ、夕方。や、待てよ…夜まで。君、夜しか出て来れへんのやろ?」
『…そうですけど』
「夜まで考えさしてくれへん?」
とにかく、彼らに相談しよう。
何がなんだか、もうわからへんし…
混乱する大堀に、女の子はニッコリ笑って答えた。
『わかりました!いいお返事期待してます』

「そう言って消えていったんや…」
な?わけわからへんやろ?
大堀の言葉に全員がコクリと頷いた。





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やっぱり書き始めてしまいました、クリスマス番外編(笑)。
えぇ、皆様の予想通り勢いで書いてます(苦笑)。
えっと、長くなりそうなんで、また続きモノで…。
続きも既に考えてるんですぐ書けるとは思いますが…
クリスマスに合わせてUPしようかなぁとも考えてます。
うっかり3話くらいいくかもしれないんで(ぇ)、1週間に1話のペースでいけばちょうどいいかなぁと。
あんまり怖くない感じで進めていきたいと思ってます。
ちなみに、タイトルが全然浮かばなくて…(苦笑)。何回か付け替えてコレに。でも、今のところ頭の中で描いてる内容にあってない気がする(ヲイ)。

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