++キセキの夜++

「とにかく、その子に会ってみないとなんとも言えないよね」
良知の言葉に萩原も同意する。
「そうだねぇ、話してみないとわかんないよねぇ」
「じゃあ、とりあえずココにいても仕方ないから、その子に会いに行く?」
石田の提案に、屋良が口を挟む。
「でもさ、治樹。その子とどこで待ち合わせたわけ?」
「…そう言えば、決めてへん」
「じゃあ、会えないじゃん」
治樹ってそういうところ、詰め甘いよね〜。
屋良の言葉に大堀が苦笑する。
「そんなん言うの屋良君くらいやわ。でも、その通りやねんけどなぁ」
「じゃあさ、どうする?」
島田が良知に尋ねる。
「俺に聞くの?」
「だって、こういう時は、良知君が一番的確な判断してくれるから」
「島田は俺の事買い被りすぎ」
「でもさ、萩原とかに聞いたらとんでもない事言いそうじゃん」
「…ていうか、なんで例えが僕なわけ」
少し不満そうな萩原の頭を良知がヨシヨシと撫ぜる。
「そんな事ないよな。萩原は一番頑張ってるもんな」
「俺は??俺だって頑張ってるよ??」
身を乗り出す石田に良知は苦笑しながら答える。
「まあね、石田も頑張ってるよね」
言われて満足そうな石田を見て、
「ホント、いつも張り合ってくるよな…」
溜息をつきながら、島田は良知にもう一度問いかける。
「で、どうする?」
「うーん…」
少し考えた良知は、
「でも、その子の方から現れてくれるんじゃないの?」
とりあえず、昨日会った場所に行ってみる?
良知の提案に全員が頷いた。
「その前に、ケーキ食べてもいい?」
…萩原を除いては。
++ ++ ++
昨日、少女に出会ったのと同じ時間にその場所に行ってみると…
「あそこに居る子?」
萩原が指差した先に、少女が立っていた。
昨日よりもはっきりと見えるその少女はまるで生きているように見えた。
「間違いない。昨日はもっと透けてたけどな」
「ふーん、じゃあ今日は大堀君とデートしたくてちょっと頑張ってるのかな?」
そんな事をいいながら、萩原は近づいていく。
「俺達も行こう」
良知の声で全員が少女のそばへ。
「こんばんは」
萩原の声に少女が振り向く。
「こんばんは」
にっこりと笑って答えてくる少女はとても愛らしい感じがした。
「あ!!昨日の人!!!良かった〜」
ホッとする彼女に大堀が尋ねる。
「何が、良かったん?」
「だって、今日どこで待ち合わせるのか決めてなかったから、もう会えないかも〜ってすっごく落ち込んでたの。皆さんお友達ですか??」
・・・・・・
「治樹と同じくらい詰め甘いんじゃないの?」
笑う屋良。
「同じって…まぁ、認めますけど」
苦笑する大堀に少女が問い掛ける。
「考えて頂けましたか??今日、付き合ってくれます?」
聞かれて、どう答えていいものか…と助けを求めるような目で良知と萩原を見る。
「ねぇ、どうして大堀と今日付き合いたいのか、詳しく教えてくれる?」
良知が優しく問う。
「それによって、僕らも協力できるかもしれないし。とりあえず名前は何て言うの?」
萩原もにっこりと笑った。
「えっと…私ヒカルって言います。先月病気でこの世を去りました。…って、実際まだ去ってないですけど。だからって別に恨みがあるとか、そういうわけじゃなくて。遣り残した事がいっぱいあるんです。で、とりあえず最低限叶えておきたい夢があって…」
「夢??何やの?」
たずねた大堀の目を見て彼女は語り出した。
「素敵な人と恋人になりたいってずっと思ってたの。小さい頃から心臓の病気で、入退院を繰り返してたから、彼氏なんて出来たことないし。もちろんクリスマスイブを好きな人と過ごすなんてした事なかったから。最後にどうしても普通の女の子みたく、男の人とデートしたかったの。で、どうせデートするならクリスマスイブに素敵な人としたいなぁって思って…そしたら目の前にあなたがいたの。なんか光輝いて見えちゃって。もう、絶対運命!!って思っちゃったの。だから・・・今日だけ、今日だけでいい。とにかく、最後に素敵なイブを過ごしてみたいの。それだけでいいの。」
「そっか…そうやったんかぁ」
呟く大堀に少女は続ける。
「あとね、もう一つ。私のお母さんもね、病気で亡くなって…お父さん、この間再婚したの。相手の人はお父さんよりずっと若くて。でね、その人すごくいい人なんだぁ。お姉さんみたいで、すごく優しくしてくれた。けど、私病気だったからすごく迷惑かけて…ゆっくりお父さんとデートした事もないと思う。だから、その人にも素敵なイブを過ごして欲しい。その二つが私のどうしても叶えておきたい夢かな〜。今日、雪とか降ったら綺麗だよねー。お母さんに見せてあげたいなぁ」
楽しませてあげたい、と大堀は思った。
ヒカルは、自分が死んでしまった今も、家族の幸せを願っている。
自分の状況に落ちこむ事なく、家族の幸せを考えてあげられるその気持ち。
純粋なその心を、幸せで満たしてあげたい。
そう、思えた。
「よし!!付き合ったるわ」
「ホントですか?」
「僕らも一緒にいい?」
良知が聞く。
「皆さんまで??」
「いい男はいっぱいいるに越した事ないだろ?」
ニヤっと笑う島田。
「一番の思い出になるクリスマスにしようよ!」
石田が言う。
「行きたいとこ全部行ってぇ、食べたいもの全部食べてぇ、贅沢いっぱいしよッ」
屋良が楽しそうに言う。
「…嬉しい。もう十分過ぎるくらい嬉しい。ありがとうございます!!!」
深深とお辞儀する少女に大堀が言った。
「俺と二人もいいけど、大勢ってのも楽しいもんやで?」
「…はい!…あの、本当に夢が叶っちゃうんですね」
「ホンマや。夢は全部叶えたる」
そう言って、大堀は少女の手を握った。

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はぁ…PCクラッシュしたおかげで途中まで書いてたのに書き直しですよ(苦笑)。
とりあえず、なんとかUP。やっぱり終わらんかった…。
ヒカルちゃん。私結構好きですね〜。名前の由来はね、ヒカルって名前結構好きなんでつけてみました。ええ、単にそれだけの理由です(笑)。あ、でもラストの伏線になってる名前でもあります(微妙にネ)
次回はクリスマスイブに更新予定。完結です!!
今回はまったく怖くないです。だってね、クリスマスにわざわざホラーじゃなくても…ねぇ(笑)。

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