++キセキの夜++

「とりあえず…クリスマスといえば、パーティーでしょ」
という石田の提案で、全員で良知の家へ。
ひとしきり食べてハシャいだところで、大堀がヒカルに尋ねた。
「なぁ、なんかやりたい事とかないんか?」
「やりたい事…あるけど…でも…」
「何??言うてみ??」
「でも、無理だから…」
「大丈夫、全部叶えたる言うたやろ?」
「…じゃあ、言うね!私、海で花火がしたい!!!」
「…花火ぃ??」
大堀の叫びに、全員がいっせいに注目する。
「何??何が起きたの?」
尋ねる良知に、
「…海で、花火したいらしいんやけど、」
どないすればええかな??
尋ねられた良知は少し考えてから…
「屋良っちさぁ、花火余してたりしない?」
「あー、夏に大量に買ったやつ?いっぱい余ってるよ」
「じゃあ、それ持って来て」
「へ??今から家に取りにいくの??」
「行ってくれるよね?」
優しく静かに尋ねる良知。
「よけー迫力あるんですけど」
呟いた屋良が立ち上がる。
「行ってくるよ。花火だけでいいの?」
「うん。よろしく」
「一人で行くの??」
「子供じゃないんだから…」
ちょっと呆れた良知に
「違うの!!花火いっぱいあるから一人じゃ持てないかもって!!!」
「あ、俺一緒に行きますよ」
立ち上がる島田。
「島田、やっさし〜vv」
誰かさんとは大違い…
と呟く屋良に良知は満面の笑みを浮かべて言った。
「二人とも…急いでね」
++ ++ ++
「さみ〜!!!」
屋良の叫び声が響く海辺。なんだかんだいって、彼らが一番はしゃいでいる。
そろそろ花火も無くなってきた頃、、大堀はヒカルと一緒に線香花火に火をつけた。
「綺麗〜!!!」
ヒカルが目を輝かせる。
「線香花火、初めて?」
近づきながら尋ねる萩原にヒカルはコクっと頷いた。
「そっかぁ。じゃあ、少ないけど楽しもうね」
にっこり笑う萩原にヒカルも笑う。
「人生って…こんなに楽しい事がいっぱいあったんだね。私、全然知らなかった」
「ヒカル…」
隣にいた大堀が切なそうに呟くと、ヒカルは慌てて付け加える。
「違うの…そうじゃなくて。今日、こうして色々体験する事が出来て本当に嬉しいって事を言いたかったの!!」
「ホンマに?」
「うん。すごく嬉しいの」
「良かった…俺なんかでも、人の役に立てんねやな」
「本当に…ありがとう。ね、名前なんて言うの?」
「そうや、言うてなかったな。俺、大堀治樹」
「大堀…治樹かぁ。イイ名前だね。治樹って呼んでもいい?」
「えぇよ」
「って、もう呼ぶ機会もないと思うけどね…」
寂しそうに呟いたヒカルの手に握られた最後の線香花火がポトリと落ちた…と同時に
「ラスト〜!!!」
という屋良の掛け声と共に打ち上げ花火が放たれる。
「お終いだね」
寂しそうに呟くヒカル。
「あぁ…終わりやな」
切なそうに呟く大堀。
そんな二人に向かって言いにくそうに萩原が告げる。
「…そろそろ、時間なんだ」
イブは、もう終わりなんだよ。
「せやかて、まだまだやりたい事あるやろ??」
尋ねる大堀に
「ううん…もう、十分。私、すごく幸せだった」
「けど…」
「ありがとう。あなたと逢えて良かった。楽しかった」
そろそろ、行かなきゃ。
そう言って立ち上がったヒカルに萩原が言う。
「もし良かったら…僕が送るけど」
「送って、もらえるの??」
「うん…せっかく友達になったから…僕の手で」
「ありがとう…お願いします」
近づくヒカル。萩原はヒカルの頭上に手を翳し呪文を唱えようとする…と萩原の手を一瞬遮り、ヒカルは大堀の前にやってきた。
「夢、全部叶えてくれるんでしょ?」
「あぁ、全部な」
「だったら…キスしてくれる?」
「え?」
「だって、もう出来なくなるんだもん…」
最後に1回くらいしておきたいよ…
涙が一筋零れ落ちる。
ヒカルが初めて見せた涙。
大堀は、ゆっくりと近づいた。
「えぇよ」
ほら、眼ぇ閉じて…
「ありがと…」
そう言って目を閉じたヒカルの頬に大堀が顔を近づける…
「クスッ…嘘だよ〜」
「はぁ??」
「優しいんだね、治樹。でもね、キスは好きな子としかしちゃダメだよ」
だから、遠慮しとくね。
そういって笑ったヒカルは、萩原のところへ行こうとする。
「ちょ、待てって」
大堀が駆け寄って…
「治樹!?」
「好きに、なりかけたから…とりあえず頬っぺたにな」
もっと好きになったとき、ちゃんと、しよ。
そう言って笑った大堀に、ヒカルは一瞬抱きついて…
「約束、だよ?」
と呟いた。
「もう、行かなきゃね」
萩原に向って呟く。
ゆっくりと手をかざした萩原が呪文を唱える。
「雪、結局降らなかったなぁ…」
お母さんに、見せてあげたかったのに…
そう言いながら、ヒカルはゆっくりと浄化していく。
「ありがとう。あなたに逢えて、本当に良かった」
その言葉を最後に、光が満ちて、ヒカルは消えていった。
と、同時に…
「あ、雪や…」
大堀の手の平に、雪が…
雪はどんどん降ってくる。
「すごいねぇ〜。今日は降りそうもなかったのに…奇跡的じゃない?彼女の、力だね」
萩原が笑う。
「やるなぁ〜、雪まで降らせるなんて」
そう言って笑った大堀の目が少しだけ潤んでた。

そんな中、起きていたもう一つの奇跡を彼らは知らない…。
雪に紛れて、一筋の光が…ヒカルのお母さんのお腹に降りていった、新しい生命の誕生という奇跡が起きた瞬間を。


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終わりです!!
ヒカルは幸せになれたのか、微妙に不安ですが…。何とか書き上げることが出来ました。
この子、すごくイイ子でしたね〜。
私が書いたキャラとは思えません(爆)。
とにかく、世界中が彼らのようにステキな時間を迎える事ができますように…Merry Christmasvv

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