+エピローグ+

萩原が、俺の前から消えて2年が経つ。
どんなに時間がたっても、忘れられない。いや、時が立てば立つほど、萩原の事を思い出す。
何があっても忘れてはいけない。だって、俺は…萩原に何もしてやれなかった。
俺のせいで、萩原は…
「島田!」
ふいに肩をたたかれる。
「石田…」
「なんだよ、元気無いじゃん」
「そんな事、ないけど」
「…ていうかさ、お前。萩原がいなくなってからずっと暗いよ」
辛いのも、わかるけど…
そういって、黙ってしまった石田に、笑ってみせる。
「大丈夫だよ、俺は」
そう、大丈夫。こうして心配してくれる仲間がいる。
あの時。
萩原が消えて、俺が泣き崩れていた時、石田と良知君は、黙ってずっと傍にいてくれた。
何かを言うわけではなく、ただ黙って傍にいてくれたんだ。
それが、何よりも暖かかった。
俺には、本当に心を許せる親友がいる。

…でも、萩原は一人だ。

++ ++ ++
休日、朝早くから俺は出かけた。
その日は、とても晴れた日で…そう、遠い昔の記憶と同じ。
萩原がいなくなったその日に、俺はあの公園へ向かった。
引っ越してから、一度も来ていなかったあの公園へ。
「すっかり、変わっちゃったな」
昔の面影といえば、よく二人で競い合ってこいだブランコくらいだ。
「なつかしー」
ブランコに腰かける。
ふと、視線を向けた先に小さな子供がいた。
母親が見守る先で、公園に咲く花に囲まれて座っていた。
「ダメよ、お花摘んじゃ」
言いながら母親がその子を抱える。
ふと、母親と目が合った。
「こんにちは」
お辞儀されて、思わずつられて頭を下げた。
「なんか、暗い顔してる」
そう言って、その人は隣のブランコに腰掛けた。
「や、ちょっと…」
「やな事、あった?」
「そういうわけじゃ…」
「…そっか、ならいいけど」
あんまり暗いから心配になっちゃって。
お節介だよね。
その人が笑った時、抱かれてる子供がふと俺を見る。
「いくつ、なんですか?」
「2歳なの」
そっか、2歳か。
「いつも、来るんですか?ここ」
尋ねると、少し寂しそうな顔で呟いた。
「ううん、今日は特別」
弟の、逝ってしまった日だから。
「…え?」
驚いて、顔を上げると、子供が俺に手を差し伸べた。
その小さな手には、さっき摘んだ花。
「フフ…あげるって」
貰ってやって?
言われて、花を受け取る。
「その花、名前知ってる?」
「いや…それより、」
さっきの言葉…。
「あッ!!大変、もう行かなきゃ。ゴメンネ、突然話しかけちゃって」
その人は立ちあがって、去っていく。
「ちょ、待って…」
呼びとめても、その人は振り向かなかった。
その時、

『元気、だして…いつまでも、友達だよ』

風が、優しい風が通り過ぎていった。
ふと、昔の記憶が蘇る。



「ね、島ちゃん。この花かわいいよね」
「…花、好きなの?」
「うん。僕ね、この花の名前しってるよ」
「ふーん、なんて言うの?」
そう尋ねた俺に、萩原はとても嬉しそうな笑顔で答えた。







                  「あのね、勿忘草っていうんだよ」







*****
とうとう終わりました〜!!!
なんだか、すごく苦労した作品でした。
結局ラストも、2通り用意していたわりに、新たに考えたものを採用したり…。
しかも、エピローグも、もっと余韻を持たせたような感じにしたかったのに、すごいわかりやすい展開になっちゃたし…。イマイチ不満は残りますが、なんだかんだいって、自分では結構気に入ってます(笑)。
読んで下さってた皆様はいかがでしょうか?
こんな拙い連載、読んで下さってありがとうございました!!

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