第12章
「永遠の孤独…」
そう、確かに僕はずっと孤独を抱え続けてきた。
屋良も…。
でも、それが「永遠」と言いきられてしまうと少し辛い。
このまま、ずっと孤独なままなのだろうか…。そして、屋良はそんな孤独なまま存在を終えてしまうんだろうか…いや、それは屋良には限らない。…僕かもしれないんだ。
「それにしても…」
屋良が実際に存在していない人間だなんて、とても考えられなかった。
助ける方法とは、一体どんな方法なのか?
「原君は、どうすれば助ける事ができると思う?」
尋ねると、原君は苦笑する。
「実際は、俺にもわからない。でも、良知なら助ける事ができるって確信はある」
どうして、だろう。なぜ、僕なら屋良を助ける事が出きるのだろうか。
「なんで?原君は確信が持てるの?」
尋ねると、原君は静かに笑って僕の頭をそっと撫でる。
「良知がさ、純粋だから。屋良と同じくらい純粋だから」
少し、眠った方がいい…
そう言うと、原君は僕をベッドに押しこみ、離れようとする。
「原君ッ」
少し怖くて、思わず名前を呼んでしまった僕に
「大丈夫、ここに居るから」
そう言って原君は電気を消した。
+++++++++
翌朝、僕はドアのノックの音で目が覚めた。
「原君、原君」
…良侑の声だ。
「どうした?」
原君がドアを開けた。
「…ご飯、出来たんだけど」
「あ、今行く」
「…屋良っちが、出てこないんだ」
いくらノックしても返事もしてくれない…。
「…良侑、今はそっとしといてやってくれ」
あとで、俺が様子を見にいくよ。
原君はそう言って、良侑の頭を撫でた。
「原君…最近、屋良っちおかしくない?」
「良侑?」
「…前の、屋良っちと少し違う」
何かが、違う気がするんだ…
「そろそろ…話すべきかな?」
原君が呟く。
「…屋良っち、大丈夫かな?」
泣きそうな良侑の肩をポンっと叩き、原君が僕を見る。
「とりあえず、飯にしよう」
屋良は、大丈夫だよ…
自分に言い聞かせるように原君は呟いた。
部屋を出て、1階へ向かう。
階段を降りながら、ふと思う。
屋良は本当に大丈夫なんだろうか…
振りかえり屋良の部屋を見る。
「あッ…」
ドアが微かに開いていた。そこから屋良の眼が覗いている。
その眼は、多分本来の屋良のモノだろう。
なぜなら、その眼は、赤くて恐怖を誘う眼ではなく…
寂しそうに、悲しそうに潤んでいたから…
「…良知君?」
良侑に呼ばれて慌てて階段を降りる。
もう一度振り向いた時には、ドアはしっかりと閉じられていた。
…助けて、あげたい。
屋良を、孤独から…そして、恐怖から助けてあげたい。
そう、心から思えた瞬間だった。
それほどまでに、屋良の眼は…深く悲しみに沈んだ色をしていた。
|