第5章 何時の間にか眠っていたらしい。ふと、眼を覚ますと隣で屋良が寝息を立てている。 …可愛いな。 とても同じ歳とは思えない。俺のシャツをしっかりと掴んで、ネコの様に擦り寄って眠っている姿は甘える子供のようだった。 顔にかかる髪を払おうとして、手を動かしたとたん 「ん…」 眼をこすって、俺を見る。 「お、はよ。早いね」 …早いのかは時計を見ない限りはわからないが。 「今、何時かな」 「時間?そんなもの気にするの?」 不思議そうに屋良が問う。 「僕らは、起きた時が朝なんだよ」 そういうと屋良はちいさくあくびをする。 まだ、眠いや… そう呟きながら両手を伸ばし、深呼吸する。 「おきよっか」 上目遣いで覗き込まれる。頷く事しかできない。 「フフ…らっち。今日も一緒に寝ようね」 ベッドから降りると、屋良は振り向いて笑う。 「らっちの事、とっても気に入ったの」 +++++++++ 「おはよう」 降りていくと、そこには良侑、誠一郎、町田くん、すーさん、原くんがそろっていた。 「あれ?まだ大ちゃんと尾身っちは起きてないの?」 あきれたように屋良が尋ねる。 「そう言うなよ。だいたいお前だって起きたの今じゃねぇか」 原くんが笑う。 「そうだけどさぁ…。ま、いいや。今日はどうする?」 屋良が問いかけると、誠一郎が手をあげる。 「俺、ちょっと情報仕入れちゃったんだけど…」 「何の?」 「あいつら、そろそろこの街にも侵入しようとしてるらしいよ」 「…ふ〜ん。生意気じゃん」 町田くんがソファーに座りながら言う。 「それで?」 良侑が聞く。 「それでって…この街への侵入だよ?俺達のところをつぶしに来るのだって目に見えてる」 「あのぉ…」 思わず、口を挟む。 「何?良知くん」 「あいつらって…誰?」 全員がいっせいに俺を見る。 「聞いてないの?屋良っちに」 「…なんにも」 「昨日一緒にいたのに?」 「…うん」 ばつ悪そうに頷くと、背後からいきなり肩を掴まれる。 「一緒にってどういう事?」 振り向くと、そこには尾身君がいる。 「え?一緒にって…別に」 「新入りなのに、もう一緒に眠ったの?」 「だ、め?」 あまりの勢いに流され、思わず引いてしまった俺に 「屋良っちは本当に気の許せる相手の前じゃなきゃ寝ないんだ」 尾身君が寂しそうにいう。 「…そんなことより」 今まで黙っていた屋良が口を開く。 「あいつらは一体どこまで手を伸ばすつもりなの?」 「情報によると、あの公園までだ」 「公園?」 「そ、あの公園を拠点にするつもりらしい」 「…」 公園。もしかして、俺と屋良がであった場所だろうか… 「ねぇ、公園って…」 屋良に尋ねると、屋良が首を振りながら答える。 「らっちはまだ知らなくていいんだよ。らっちにはまだ、危なすぎる」 とても優しい眼で俺を見つめ、抱きしめてくる。 「らっちは…大事な…なんだから…」 「屋良…」 よく聞き取れなかったけど、屋良が俺を大事にしてくれてるのはわかった。 俺を放すと、屋良は原くんに言う。 「原っち。大ちゃん起してきて」 「了解」 「やっさん」 「…その呼び方やめろって」 「…すーさん。電波状態は?」 「良好良好。感度バッチリ充電完了」 「誠ちゃん、マーチン、尾身君?」 「俺達は何時でもどこでもOKだよ」 誠一郎が笑って言う。 「良侑。大丈夫?」 心配そうに良侑を見つめる屋良。 「…大丈夫。もうほとんど治ってるよ」 屋良に笑って見せる良侑。 「…な、に?何が始まるの?」 怖くなって問いかけた俺に 「僕らの生活を邪魔する人達が現れたら。らっちならどうする?」 と屋良が尋ねる。 「え…??」 答えられない俺に屋良は屈託のない、しかし氷のような微笑みを浮かべて言い放った。 「壊せばいいんだよ」 「らっちは…大事な…部品…なんだから…」 |