第6章

「らっち。ココにいてね」
屋良が言う。でも…
「一緒にいっちゃダメかな?
そう尋ねた俺に、屋良は困った顔をする。
「危ないんだけど…じゃあ、原っちと一緒においでよ」
「俺の出番か?
振り向くと、原くんがいた。さっきまでいなかったのに…
「らっちの事、しっかり守ってね」
「まかせとけ」
いったい、これから何が起きるというのだろう。
+++++++++
俺達が向かったのは、やっぱり屋良と出会った公園だった。

「まだ来てないね」
良侑が言う。
「来るよ、必ず。だって…見える」
誠一郎が眼を閉じて呟く。
「見える…?
問いかけた俺に、原くんが優しい口調で答える。
「誠はな、予知の力もあるのさ。少しだけな」
「予知…」
「ま、少しだけだから。人が死ぬ時期とかがわかるわけじゃないけどな…多分。」
「…そう、なんだ。でも、いっつも先の事が見えるのって、辛くないのかな?
呟いた俺に、原くんが笑う。
「いつも見えてるわけじゃないさ。自分でコントロールしてる。見たい時だけ、力を使うんだ」
「え?そうなの??自分で好きなように見れるの?
「良知だって、力をコントロールできるだろ?」
「まぁ、少しは…」
「大野だって、いつも人の心を読んでるわけじゃない。皆、時々は力が暴走する事があっても、普段は自分で調整してるのさ」
「…だいたい、いつも人の心を覗いてたら気がくるうのじゃ」
横から大野くんが笑う。
「でもね、どんなに頑張っても読めない心があるのじゃ」
悔しそうに呟く大野くん。
「どんな心?
尋ねた俺の耳元で大野くんは囁く。
「屋良っちの心だよ」
+++++++++
「遅いなぁ…」

屋良が呟く。
「ねぇ、良侑。わかる?
屋良が聞くと同時に、良侑が眼を閉じる。
「…来る。もう、すぐ傍に来てる」
「ねぇ、原っち。やっぱりらっちは連れて帰ってよ」
屋良が不意に言う。
「なんで?
問いかけると、屋良は俺に近づいて来る。
「危険なんだ。それに、まだらっちには早すぎる」
だから、戻っててよ…
俺を抱きしめながら屋良が囁く。
「良知くんにはまだ刺激が強すぎるんだよ」
笑いながら町田くんが近づいて来る。
「おとなしく帰ったほうがいいよ」
誠一郎が静かに、諭すように告げる。
「誠一郎くん…」
「僕には漠然としかわからないけど、きっと屋良っちには、はっきりと見えてるんだ」
「何が??
問いかける俺に、誠一郎はそっと耳打ちする。
                  
「君が、死んでしまう光景(みらい)だよ」

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