NO14 ドロドロの赤い水の底から…這い上がろうと必死にもがく僕。 そんな僕に…もう、楽になろう…と囁くもう一人の僕。 僕は、それでも必死に這い上がろうとしてる。 だって、上には…皆が待ってる。 どんなに辛い世界でも…皆が、いるから… 必死に這い上がる僕の目の前に、突如広がる眩しい鮮やかな光。 「タイプ004覚醒!」 光は…僕を照らす無数のライトだった。 体には、チューブがいっぱい繋がれていて… だから…すぐにわかった。 あぁ…僕は、戻ってきたんだって。 長い間見ていた夢から覚めて…戻ってきたんだ。 この…悪夢のような世界に。 「瞳孔正常。脈拍通常値を示してます」 周りがバタバタと走り回っている。 そして… 「予定より2週間のロス。早急に投与実験にかかります」 そんな声がした。 考える間もなく、僕の腕に指し込まれる針。 僕の中に…新しい何かが植え付けられる瞬間。 「尺側皮静脈への投与開始。データの摂取開始して下さい」 ドクッ… 心臓が…高鳴る。 ドクッ… 血液を逆流して…何かが僕を侵蝕していく… ドクッ…ドクッ… 僕が…僕じゃなくなっていく。 ドクッ…ドクッ…ドクッ… 「感情データがレベル9を記録」 「投与完了。先に投薬したP-16との混合も確認」 実験は…無事終了です。 ドクッ…ドクッ…ドクッ…ドクッ… 僕は…僕は… 「感情データが上昇しつづけてます!!」 「バカなッ!!」 「このままでは…」 ドクッ…ドクッ…ドクッ…ドクッ… 壊れる…怖いよ…怖い…怖いッ!!! 「危ないッ!!」 突然、実験器具が粉々に砕け散る。 「物凄い能力値です」 次々と物が破壊されていく。 怖いッ!!怖い!!! 「タイプ004の精神状態を安定させろ!」 「このままでは、破壊し尽くされます」 「ココまで凄い能力が出るとは…」 これは…僕の力なの? 僕は…一体…どうなってしまったの? 怖いッ!!! ガシャンッ!!!! 病室の窓が割れる。 「安定剤を投与します」 首に突き刺される針… 僕は…どうなってしまうの…? 意識は、そこで途絶えた。 ++ ++ ++ 「そんなに…酷い目にあってたなんて…」 慎吾は、信じられない、という顔をして僕らを見ていた。 「しばらく、僕らは別々に…ずっとデータを取られつづけてた。それはすごく辛い実験だったけど…」 でも… 「すぐに、鈴木君と鎌田君が助けてくれたんだ」 「鈴木達が?」 「そう…彼らが、僕らを救ってくれた」 ++ ++ ++ 屋良の実験が行なわれてから2週間。彼らは自由時間すらも削られ、毎日個別にデータを取られつづけていた。 完璧なまでの孤独。そして、溢れつづける不安。 精神状態が不安定になればなるほど、彼らの能力データは上昇する。 …全て、真都の筋書き通りだった。 そんな中、彼らは一斉に呼び出された。 担当員に連れられ、向かった先は「特殊研究棟」。 担当員はある部屋のドアをあけてこう言った。 「プロトタイプ連行完了致しました」 「ありがとう」 そういって振り向いた人は…一瞬寂しそうな目で、4人を見た。 「彼らを置いて、君達は席をはずしてくれ」 もう一人が担当員に向かって言う。 「ですが…」 反論しようとする担当員に、切れ長の目で睨みつけた彼は冷たく言い放った。 「出て行け、といってるんだ。わからないのか?」 「…失礼します」 担当員は全員出ていった。 残された4人は何を言っていいかもわからず、ただ立ち尽くしていた。 「ようこそ」 さっき、担当員を怒鳴りつけた人とは思えないほど、柔らかい口調で微笑みかけてくる。 「呼び出して、すまなかったね。俺の名前は…鈴木。鈴木康則。で、こっちが…」 「鎌田。鎌田淳だ。よろしく」 そう言って、彼らは4人に座るよう進める。 4人は、空いている椅子に適当に座った。 「…まず、僕らは、君達に真っ先に言わなくちゃいけない事がある」 鈴木が言う。 「…何?」 屋良が恐る恐る尋ねると… 「すまなかった…君達をそんな目にあわせてしまったのは…俺達の責任だ」 「どういう、事だよ」 尾身が挑戦的に尋ねた。 「…知らなかったとはいえ、俺達の開発した薬が、結局君達に投与された事になる」 謝っても…謝りきれない事だ。 「…あなた達が、この薬を?」 植村の問いに、鎌田が辛そうに答える。 「元々は…ただの能力向上実験だったんだ。それが…俺達の知らないところで、超能力の研究として進められていた」 「…本当に、申し訳ない。そのお詫び…といってはおこがましいが、俺達は、君達の力になりたい」 「僕らの…?」 高木が首を傾げると… 「君達は…自分自身で能力をコントロール出来ないはずだ。その為、24時間力の為に苦しんでる」 「そうだよ…今も…辛いんだ」 高木の言葉に、鈴木は強く頷く。 「…そこで、俺達は能力を抑える薬の開発を進めていた。そして、まずは一定時間能力を抑える事の出来る薬の開発に成功した。将来的には、完全に能力を抑える薬を開発するつもりだが…それまでの間、この薬で乗りきって欲しい」 そういって、鈴木の手から薬が渡された。 「…信用、してもいいのかよ」 今だ挑戦的な尾身に、高木が口を開いた。 「…この人達、とても苦しんでる。すごく、辛い事があったんだよ…信用、しても大丈夫だ」 そして、自ら進んで薬を飲んだ。 数分で効果が現れる。 「…すごい。全然声が聞こえてこない」 嬉しそうな高木の顔に、鎌田はつられて笑顔になる。 その時、鈴木が4人に向かって話始めた。 「今日から…君達は、俺達の専属の研究対象になってもらう」 「専属?」 「そう…表向きはね」 「表向き…?」 「俺達の専属、という事になれば…他のヤツ等は手出しが出来ない」 君達の実験は…今日で終わりだ。 鈴木の言葉に、屋良は何度も尋ね返す。 「本当に?ホントに、もう実験しなくていいの??」 「あぁ、君達は今日から、特殊研究棟内の実験室に4人で生活してもらう事になる」 「4人で、暮らせるの??」 嬉しそうな屋良に向かって、鈴木は優しく微笑んだ。 「そうだよ。俺達が、君達にしてやれる事は…今はこの位しかないからな」 アイツとの…約束を守らなきゃな… そう呟いた鈴木が見せた微笑みは…とても、切なげだった。 ********** 14話です。 回想シーン。いつまでたっても終わりそうもなかったんで中略しました(ヲイ)。 まぁ、元々書くつもりのないところだったんでいいんですけど… つーか、この辺、考えてなかったからどうしていいか自分でもわかりません(ぇ)。 次回で、彼等が逃げるところまでの回想に繋がって…それから、現在にもどります。 逃げている尾身さんたちも、どうなってるのか気になるでしょ?(私が・笑) そして、いよいよ真都が動き出しますね…多分(爆) ≪≪TOP ≪≪BACK NEXT≫≫ |