NO22 しばらく、捜索を続けていた4人だったが、 「ね、疲れたよ」 萩原の言葉に島田は足を止めた。 「なんだよ、疲れたのかよ」 「だって、ここ数日実験続きでろくに食べてないし…」 「確かに、萩原の言うとおりかもな。俺もちょっと疲れ気味だ」 石田が肩を竦める。 「なぁ、島田。少し休んだ方がいいんじゃないか?」 良知は、願ってもないチャンスとばかりに、島田に切り出した。 「良知君まで…」 「だって、疲れてきたら石田の能力だって発揮しきれないかもしれない。だったらゆっくり休んでから捜索を再開した方が、効率がいいんじゃないか?」 上手い具合に理由をつけてみたものの、本心は少しでも捜索時間を遅らせたかった。 多分、その間に鈴木や鎌田が兄に連絡を取ってくれるだろう。 そう、考えての言動だった。 「そうだな…確かにそうかもしれない。わかった。今日はゆっくり休んで明日から探そう」 どうせ、すぐ見つかるだろうし。 苦笑して、島田は萩原を振り向く。 「何食べる?」 「すぐ食べれればなんでも」 「じゃあ、最初に見つけた店に入ろう」 そういって、彼らは歩き出した。 しばらく歩くと、郊外とは違って賑わった場所に到着した。 「ココにしよう」 そう言って、彼らが入っていったその場所は、かつて、屋良が埋もれていたファーストフードだった。 ++ ++ ++ 「ふぅ…」 電気を消し、ベッドに腰を下ろして溜息をつく。 他の3人にはわからないようにしていたが、実際島田もかなり体力を消耗していた。 実験続きでろくに休息もなく、そのままあの森を抜けてきたのだ。 平気な方がおかしい。 いくら能力や体力を改良したとはいえ、限界がないわけではない。 隣を見ると、萩原がすでに寝息を立てていた。 「ったく、呑気なヤツだな」 苦笑してベッドに寝転がる。 目を瞑ったが、眠くなる気配がない。 起き上がって、ベッド脇のライトをつける。 サイドテーブルの上に置かれたPCを手に取る。 「…NO.004」 マイクに向い呟くと、映像が飛び出してくる。 その、映像を島田はじっと見つめていた。 「…屋良、朝幸か」 自分と同じ能力を持つ相手。 それだけでもかなり興味があった。 一体どのくらいの能力を持つのか。 失敗作だと聞かされた時、実は少しショックだった。折角友達になろうと思っていたのに。 だが、もっとショックだったのは監視人の言葉だった。 『ヤツらは確かに欠陥品。失敗作だ。だが、突発的な能力値は凄まじいものがある。お前達以上の力を発揮する事もある。特に…NO.004は測定不能な数値を弾き出したほどだ』 …欠陥品が自分よりも凄い力を持っている。 それが、何よりもショックだった。許せないと思った。その上、真都から逃げ出すなんて…。 そこまで考えて、島田は不図疑問を持った。 …何故、真都から逃げ出してはいけないんだ? それに…彼らは能力が高いのに何故欠陥品なんだ? 瞬間、激しい頭痛が襲ってくる。 いつもそうだった、真都の事や能力の事、そして逃亡者の事に対して、ほんの少しでも疑問を感じると激しい頭痛に襲われる。 PCの電源を落とし、ベッドにもぐり込む。 ガンガンと痛みが襲ってくる。 もう…忘れよう。 疑問になんて、思わなければいい。彼らは欠陥品。俺達は完成品だ。誰よりも素晴らしい能力を持っている。 …それで、いいじゃないか。 キュっと目を瞑り無理やり眠りにつく。 体力を…回復しなければ。 島田は布団にもぐり込み、深い眠りの底へと沈んでいった。 ++ ++ ++ やっと落ちついた町田は、皆の所へ戻ろうと立ち上がった。 掴んでいた大野の手を離そうとすると… 「大野?」 軽く、掴み返された気がした。 「…まさか、な」 呟いて、手を離し、部屋を後にする。 急いで皆の待つ部屋へと向う途中、電話がなった。 「もしもし」 「町田…よく聞いてくれ」 「鈴木?」 「真都から…追っ手が放たれた」 「何?」 「能力者だ。前に言ってた第2世代だ」 「そんな…」 「彼らの能力値は計り知れないものがある」 「何人、いるんだ?」 「4人だ。その中には…」 「なんだ?」 「…真次がいる」 「なん、だって…?」 「彼も実験体として、能力を植え付けられた一人だ」 「そんな…っ」 「だが、彼は敵じゃない。他の子は催眠によって洗脳されてるが、彼はかかってないんだ」 「…真次が」 「町田…しっかり聞け!真次はお前達の味方だ。今は敵として動いてるが、お前の味方だ。真次や屋良達と力を合わせて乗り切ってくれ」 「鈴木達は…どうするんだ?」 「俺達は…とりあえず、今は能力を抑える試薬開発に没頭するさ。その後は…ちょっとした悪戯でもして、真都を驚愕させてやるか」 子供のように笑う鈴木。 「なぁ、大野は無事だったか?」 鈴木の言葉に町田は少し間を置いて答えた。 「あぁ…無事だったよ。また逢えて良かった。必ず助けてみせるよ…」 「その調子だ。頑張ってくれ。俺達も…何とかやってみるよ」 「あぁ、すずっくんも…鎌さんも頑張って」 あえて、昔の呼び名を使った町田に鈴木は少し苦笑して、そして…すぐに神妙な声で呟いた。 「これが…最後の電話になるかもしれない。…声を聞けるのは最後かもしれないな。薬は、開発出来次第、PCに詳細データを送るから」 その言葉に、町田は首を振る。 「何言ってんの。縁起でもない。もう…誰も失いたくないよ」 だから… 「生き延びて。二人とも…」 町田の真摯な願いに、鈴木は電話口でコクっと頷いた。 「わかった。また、逢おうな」 「うん、またね。すずっくん」 そうして、受話器を置く。 真都が…迫っている。 恐怖が…迫ってきている。 でも… 「誰も…失うわけにはいかない」 強い意思を持った目で、町田は正面を見据えた。 もう…間違えない。 自分のするべきことを。 もう…逃げたりしない。 決心を胸に、町田は皆の待つ部屋へと向かった。 ********** 22話です 今回も追っ手側の視点でした。 つーか、島田さん視点ですね。彼らもどういう心情なのかってのをおり込んでいきたいんで…。 もうすぐです。もうすぐ出会います。 …って、前回も言ってたなぁ、私(苦笑)。 や、でももう時期です。ホントに。 あー!!そんなことよりも!!!私、大きな間違いを(汗)。実は最初屋良っちの年齢設定を15歳にしていたんですが、画像を作った時、すずっくんの誕生日を決めた段階で、計算が合わなくなっており…(汗)、町田さんが16歳設定になってますんで、屋良っちは14歳という事になってしまいます〜(汗)って事で、背景のデータをすずっくん、まーちん、屋良っちと全部作りなおし(苦笑)。 ちょい焦った…。 ≪≪TOP ≪≪BACK NEXT≫≫ |