NO29 石田が島田を抱え、ホテルを出た。 何とかして島田を助けたい。 今、彼らの思いはそれだけだった。 「ねぇ、どうして彼らなの?」 暫く無言で歩き続けていた萩原の突然の問いに良知は振り返った。 「向こうに着いたら…詳しく話すよ。簡単に説明できる話じゃないんだ」 良知は決めていた。 二人に、真都の全てを話そう、と。 洗脳されている二人が、簡単に真実を受け入れるとは思ってもいなかったし、それによって、彼らと敵対する関係になってしまうかもしれない、とも覚悟していた。 それでも…真実を、告げたかった。 例え、戦うことになろうとも、結果的に彼らを救う事が出来るのであれば…。 僕は…一時の戦いを選ぼう。 表面上の「仲間」よりも、本当に「仲間」として彼らを助けるために。 暫くすると、彼らの待つ場所が見えてきた。 ココが…全てを握る場所。 真都の存続も…僕らの存在も。とにかく… 「彼らに…全てを託そう」 良知は、真っ直ぐに見据えて言った。 ++ ++ ++ しばらくして、慎吾は顔を上げた。 「ごめん、泣いてる場合じゃないよね」 ばつ悪そうに苦笑する慎吾。 「たまには、いいんじゃない?いつもいつも、張り詰めてたら…壊れちゃうよ」 そう告げると、慎吾はふわっと笑い、僕の頭を撫でてくれた。 「ありがとう、朝幸。僕は…いつも朝幸に救われてるね」 ビックリした。 助けられてるのは僕の方だと思っていた。 いつもいつも、慎吾に助けられて…何も恩返し出来て無いと思っていた。 「僕が?慎吾を助けてる??」 「そうだよ。朝幸の言葉に、いつも助けられてる」 笑って慎吾は先に行ってしまった。 思わずまっさんを見ると… 「自分では、気付かないうちに、人に影響を与える事は多々あるもんだよ。いい事も、もちろん悪い事もね」 屋良っちは…優しいから。 まっさんもニッコリと笑った。 くすぐったい感じがして、僕は思わず首を振った。 その時… 「近くに…来てる!!!」 誠君が駆け込んできた。 「どうしたの!?」 「声が…聞こえる。助けたい…って」 「助けたい?」 「うん、彼らの…声だと思う。島田を、助けたがってる」 誠君は、少し眉を顰め、さらに深く声を拾おうとする。 「僕らに…助けを求めてるみたいだ」 その言葉に、あとから追いかけてきた尾身っちが言う。 「都合よすぎんじゃね?誰のせいで俺達…」 「尾身っち…彼らだって僕らと一緒だよ…」 良侑が俯きながら告げた。 「わかってる。わかってるけど…」 尾身っちも下を向いてしまった。 わかる…。二人の言う事はどっちもよくわかる。 尾身っちだって、彼らが被害者だって事ぐらい、わかってる。 それでも…彼らに当たってしまう気持ちもすごくよくわかった。 けれど、僕は良侑と同じ気持ちだ。 「助けて、あげられるよね?」 後ろに、静かに佇む慎吾に尋ねた。 「助けて、あげたい」 弟も…その友達も。 慎吾の言葉に、僕はしっかりと頷いた。 「僕らに、出来る事をやろう。僕らの敵は…真都だ。彼らじゃない。鈴木君達と、力を合わせて戦う為にも…仲間は多い方がいいよ」 「鈴木君達??」 尾身っちの驚いた声に、誠君も良侑も目を丸くした。 「鈴木君達が…どうかしたの?」 尋ねる良侑に、慎吾が答える。 「メールが来てた。あと、松本君のところにも…手紙とROMが」 「ROM??」 「とにかく、ゆっくり説明しよう」 お茶でも、淹れるよ。 そう言って、僕らを台所へ促そうとしたその時。 「助けてください!!!」 悲痛な叫び声がした。 「…兄さん。お願い、助けて欲しいんだ」 慎吾の弟の声。 「…行こう」 厳しい表情で、慎吾は僕らに向かって告げた。 僕らは、慎吾に続いて彼らの元へと向かった。 一体、どうなるだろうか。 彼らを助ける事は出来るのだろうか。 そして…真都と戦う為に、 一体、僕は何をすればいいのだろう? ********** 29話です 更新しました。短めですが、きりよくココで…。 あまり進んでなさげで申し訳ない(汗)。 でも、もう時期やっぱり終わるような予感がしてきました。 もうすぐ真都との戦いですね。 そろそろ大詰め… だと思う(爆) ≪≪TOP ≪≪BACK NEXT≫≫ |