NO3

「ここ、どこだろう」
不安を抑えきれずに尋ねる。
「とりあえず…研究所の監視範囲からは抜けたと思うんだけど」
「…監視範囲ってどの辺までなわけ?」
「わかんないけど…でも、結構遠くまで来てるよ?僕ら」
覚束無い足取りで何とか前に進む。
「そうだよな…歩きつづけて4日だもんな」
屋良っち…どうしてるだろ。
あの時、ほんの少し眼を離してしまったために…。
迷路のような森の中、少しだけ僕らより遅れてしまった彼の姿は、あっという間に見えなくなっていた。
「無事かな…」
同じ事を考えていたらしい。
「大丈夫だよ、多分…」
きっと、大丈夫。
「そんなに遠くには行ってないよね、屋良っち」
「そう思う。屋良っち、一番体力落ちてたから…」
2週間くらい点滴を打たれてベッドの上で生活してた彼は、逃げ出したとき、足元がふらついていた。
「探さなきゃね」
「そうだね…なぁ、薬どのくらい持ってる?」
「えっと…とりあえず、20はある」
「…あんまり、無駄にできないな」
「ギリギリまで飲むのは抑えた方がいいかもね」
「…でも、俺ちょっと辛い」
そろそろ、薬が切れてきているらしい。
街中にたどりついた俺達の周りには、研究所の周りと違い、人が溢れかえっている。
聞きたくもない声が、次々に頭の中に侵入してくる。
「…僕の薬回すよ。高木は飲んだほうがいい」
「でも…」
「大丈夫。僕の場合、そんなに薬を必要としないから」
「ありがと、良侑」
と、すれ違った人に肩が触れた。
「あ、すいません…」
『なに、この人達…汚い』
脳にダイレクトに伝わるその言葉。
成す術もなく脳を侵略される不快感に吐き気がする。
「…良侑、とりあえずこのままだと俺ら目立つよ」
薬を無理やり飲み込みながら、良侑に言った。
4日歩きつづけて、服も汚くなっている。
「お金、どのくらいあるの?」
「結構渡されたから…」
「じゃあ、まず身形を綺麗にしようか」
「あと、食事もな」
…屋良っち、何か食べれているだろうか。
お金は全部俺が預かっているから…。
塞ぎ込んだ俺の肩に良侑が優しく手を置いた。
『大丈夫…』
そう聞こえてきた。
++ ++ ++
「さて、」
車に乗り、エンジンをかける。
「どの辺を探そうか」
呟く慎吾に、僕は答える言葉がない。
だいたい、ココがどこかも僕にはわからない。
「とりあえず、朝幸をみつけた場所から探してみようか」
聞かれてコクっと頷く。
ゆっくりと走り出す車。
「二人とも…どこに居るんだろ」
無事に逃げれただろうか…
それだけが、気がかりだ。
「ねぇ」
唐突に話しかけられてビクっとした。
「そんなに、怯えなくても大丈夫だよ」
クスっと笑った慎吾が続ける。
「朝幸、いくつ?」
「何が?」
「歳が」
「あぁ…えっと、15」
うん、確か…
「え?15??」
「何?なんか、変??」
何故だかオドオドする僕に、慎吾は笑いながら言った。
「ゴメン、もっと小さいかと思ってた」
「…酷いよ」
「だって、見えない」
どうせ、僕は研究所の中でもいつも子供に間違われてたし。
小さいとか、女みたいとかからかわれたりもしたけど…
そんな時、いっつも良侑や誠君や尾身っちが助けてくれた。
…皆、どうしてるだろ。
塞ぎ込んだ僕に、慎吾は優しく話しかけてくる。
「大丈夫、きっと逢えるよ」
「うん…」
少しだけ、涙が浮かぶ。
泣いてる場合じゃないのはわかってる。でも、不安と寂しさで押しつぶされそうだった。
今だけ…。
慎吾に見られないように、僕は窓の向こうの景色に眼を向けた。


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どうしたの、私(笑)。すごい早さの更新ですvv毎日書いてるよ…。
ま、そろそろ力尽きそうだけど(ぇ)。
やっと出てきましたねvまずは良侑と誠君ですv名前だけ尾身っちも登場。
さて、彼らは一体何物なんでしょうか。研究所とは一体…ってだいたいわかるとは思いますけど(苦笑)。
えー、この小説、私の中ではBGMはBUCK-TICKになっております(笑)。しかも、出来るだけドロドロしてるやつ(爆)。

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