NO7.再会・回想

「僕のことから話そうか」
慎吾は僕の前にカップを置くと、向かいの椅子に座った。
「そして、僕の話を聞いてから、朝幸は決めればいい」
「何を?」
「僕を、信用するかどうか」
ガラス玉のような慎吾の目に見つめられ、思わず息を呑んだ。
と、その時、車の音が聞こえた。
「もしかしたら」
慎吾は椅子から立ちあがりドアへ向かう。
来客の予定があったのだろうか。
ドアをノックする音。
慎吾はドアの向こうを確認して、
「今、あけるよ」
そういってドアをあけた。
すると…
「あの、町田、慎吾さんですよね」
聞こえてきたその声は
「良侑!!」
思わず椅子から立ちあがる。
「屋良っち!?」
「なんでココにいるの?」
驚く誠君と良侑に走っていって抱きつく。
「逢いたかった…」
良かった、ちゃんと逃げれてたんだ。
「屋良っち、どうしてココにいるの?」
驚く良侑に慎吾が説明をしてくれた。
「僕がね、偶然拾ったんだよ。とりあえず、入りなよ。お茶、入れてあげるから」
椅子に戻り、座る。
二人の分のカップもテーブルに置かれ、慎吾は再び椅子に座った。
「さて。二人は僕の事を聞いてきてるんだよね?」
「…メモ、渡されただけだから」
ポツリと誠君が答える。
「え?メモ、渡された時、聞いてない?」
「…とにかく、ココに行けっていわれて」
ちょっと待って。
「それ、僕知らないよ?いつ言われたの?」
そんな話、知らなかった。
「屋良っち、入院してたじゃない。話す機会がなかったんだよ」
申し訳なさそうな良侑。
「まぁ、いいけど」
無事に逢えたから。
「で、慎吾の所に来てどうしろって話だったの?」
尋ねると、二人は顔を見合わせる。
「ただ、ココに行け、としか言われてないんだよ」
困ってしまった二人に慎吾は苦笑した。
「じゃあ、自己紹介しよう。お互いにね」
いい?
聞かれて三人そろって頷いた。
++ ++ ++
2100年…今から5年前。東京のある区域に新たに「真都」と呼ばれる都市が出来た。東京、と言ってもそこは都心からは隔離されたような場所にあった。
2050年。東京では無くしてしまった自然を取り戻す事を目的とし、人工的に森を作りだした。その森の中に、「真都」は作られたのだった。いくつかの「棟」に分けられた都市。そこの「居住棟」に住む事ができたのは、政府から指定された家族のみ。住民は一人一人耳にピアスのようなIDチップをつけられ、年に一回都市の中心にある「住民管理棟」へ、IDに自動的に記録された個々の生活状態を提出していた。完全な監視体制の元での生活を余儀なくされたのである。耐え切れずに逃げ出す家族もいたが、その際、足手まといになる子供達は置き去りにされる事が多々あった。その子供達は「生活棟」に送られ、育てられる。
その「生活棟」の中から、2102年、数名の少年達が「研究棟」へ「研究員」として移動する事になった。
この都市では就職も「住民管理棟」で管理しているIDの記録によって、政府から指定される事になっている。その記録の中で、IQの数値が高い住民を「研究棟」へ移動する事になっていた。
2102年、選ばれたのは全て「生活棟」の少年達だった。

「町田慎吾・鈴木康則・大野智・鎌田淳」

彼らは、14〜15歳という若さで「研究員」としての生活をはじめる事になる。

当初は、組織の培養・モルモットへの投薬等、助手的な仕事を担当していたが、持って生まれた才能で、数週間後には「遺伝子研究」の特別研究員として、「特殊研究棟」への配属となった。
そこで、彼らが行ったのは「能力の人為的植え付けによる順応状態と能力値の測定および遺伝子配列による能力変化について」だった。
表向きは潜在能力を投薬、手術によって目覚めさせ、優秀な人材を作るための実験と、遺伝子を組替える事によって起きる能力変化の測定とされていたが、研究を続けていくうちに彼らの中から、疑問が生まれた。

「おかしいよ。このデータを見る限り、普通の潜在能力の研究とは思えない」
プリントアウトされたデータを指ではじきながら大野が言った。
「でも、実際能力は上がっているじゃないか」
鎌田が言う。
「上がってるのは…特殊能力じゃないか。この実験は元々語学の能力や運動能力等を引き出すためのものだったんじゃないの?それなのに、出てくるデータは全て「特殊能力」の数値が上がってる」
「そんなわけないだろ!俺達の作ったサンプルを投与したマウスは早さにおいて能力の向上が見られたじゃないか」
鈴木の反論に
「僕達の作ったサンプル段階ではそうだった。でも、それは僕達が投与した結果だ」
「どういう事?」
町田が尋ねると
「…混合投与しているのかもしれない」
大野が呟いた。
「え?」
「僕らの作ったサンプルはまだ試薬段階だ。その為、不完全な部分がある。なにか他の薬と混ぜると効力が変化する可能性だって十分あるんだよ」
「でも…」
「能力を上げるための薬がどうしても欲しかった。俺達にそれを開発さえさせればデータを解析して手直しするくらい他の研究員にだって出来るさ。大野が言うように、混ぜるってのも手だな」
鎌田が吐き捨てるように言った。
「何の為に…」
「わからない。でも、コレが人間に投与されてしまったら…」
「ヤツらを止めないと!!」
鎌田が部屋を飛び出そうとする。
「待ってよ!」
鎌田の肩を大野が掴んだ。
「僕が行く。とにかく、全員が行くことはない。皆は研究を続けててよ。何か、新たにわかるかもしれない」
そう言って、大野が部屋を出る。
「大野!」
町田の呼びかけに大野は振り向いて
「大丈夫だよ、慎吾」
と静かに微笑んだ。

…それが、大野の笑顔をみた最後だった。



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7話です…書いてて自分でも頭痛くなってきた今回(苦笑)。
つーか、知識ないんでウソばっかり書いてると思いますんで皆さん読み流してください(汗)。
はぁ、今回説明ばっかでめっちゃ疲れた(ヲイ)。
次回も回想シーンが続きます。…てか、疲れたからこの辺で区切ってしまいました(ぇ)。
ので、続きはまたすぐ書くと思います。


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