++第3話++

良知は町田と向かい合わせに座り、順を追って質問を重ねていく。
「じゃあ、4日前の夜、何処にいたか思い出せますか?」
「…えっと、何処だろ」
「3日前の朝はあの公園にいたんですよね?それは思い出せたんですよね?」
「はい。あの公園でベンチに寝てました」
「だとすると、4日前の夜は公園に向っていたか、すでに公園にいたんだと思われるんですが、思い出せませんか?」
尋ねる良知に、町田は少し首を傾げながら考え込んだ。
しばらくして、町田がハッと顔を上げる。
「そうです!!あの公園に向ってました。間違いないです。僕は4日前の夜、公園に向って歩いてたんです。で、ベンチを見つけて座って休憩しようと思って…」
「それで、ベンチで寝てたわけですね」
「そうです」
うん、うん。と良知は頷き、質問を続ける。
「じゃあ、その日の昼は何をしてたんでしょうか?」
「…昼、ですか?」
「まだ、公園には向ってなかった。では、何処に居て、何をしてたんでしょうか?」
「うーん、」
町田はまた考え込んでしまった。
が、しばらく考えても一向に顔を上げない。
そんな町田の様子を見て、良知は「ふぅ…」と息を吐き、優しく語り掛けた。
「町田さん、疲れてきたでしょ?少し休憩しましょう」
その言葉に、町田は申し訳なさそうに顔を上げ、頷いた。
と、相変わらず良いタイミングで幸人がお茶を持ってきた。
「今度はアールグレイにしてみました〜。しかもなんと!!ケーキ付き♪」
さぁ、お茶しましょう♪
ニッコリ笑う幸人に町田もつられてニッコリ笑う。
お茶を飲みながら、さっきまで黙って横で見ていた島田が口を開いた。
「なぁ、一体、どの辺まで記憶を遡るつもりなわけ?」
「どの位までだろうね」
他人事のように呟いてお茶を一口飲む良知に、島田は思わず詰め寄る。
「良知君、そんなんでホントに見つかんの?」
「どうだろ、やってみないとなんとも言えないけど」
ニッコリと微笑む良知に、それ以上は何も言えず、出かかっていた言葉を紅茶と一緒に飲み込んで島田は「はぁ…」と溜息をついた。
そんな二人を見て、町田は申し訳なさそうに項垂れる。
「すいません…僕のせいで何だか険悪な雰囲気に…」
と、謝る町田に
「大丈夫。島田はいつも険悪なの」
と幸人が答える。
「オイ、それどういう意味だよ」
詰め寄る島田に
「そういうのが険悪だっていうんだよ」
と言い返す幸人。
「…まぁ、二人ともケンカしないの」
と、やんわりと島田をソファに引き戻し、良知は石田に問い掛ける。
「なぁ、探偵さんってやっぱり現場検証…っていうか、歩き回るのがお仕事なわけだよね?」
「まぁね、自分の足で真実を掴めってのが親父の遺言だから」
「…って、石田の親父さん亡くなってないから」
良知のツッコミをさらりと笑顔でかわし、
「まぁ、何事も実際に歩き回ってみると何か新しいものが見えてきたりするもんじゃない?」
「そうだね、やっぱりそうだよね」
ウンウン、と頷いて、
「ありがと、石田」
と、ニッコリ笑うと、良知はクルッと町田の方を見る。
「町田さん、休憩が終わったら実際にアナタの行動を遡って行なってみましょう」
「は?」
目を丸くする町田に
「実際に、アナタの記憶を行動していってみた方が思い出しやすいと思うんです」
だから…
「公園まで思い出しましたよね?ですから、公園に行ってみましょう。公園のベンチから、また記憶を探る旅をスタートさせれば、きっとさっきよりも思い出しやすいと思います」
「はぁ…」
「きっと、町田さんは何もかも忘れてしまいたいくらいの衝撃的な出来事に遭遇したと思われます。それで記憶が消えてしまった…いや、あえて消してしまったんだと思うんです」
「…僕が、ですか?」
「はい。自ら記憶を消し去ってしまったんだと、僕は考えてます」
まっすぐに見据えられ、迫力に負けた町田は少し身を引いた。
「わかりました…あの、頑張って記憶取り戻してみます」
「そうです。その意気です。アナタのやる気が全ての鍵なんです」
一緒に頑張りましょう。
手を差し伸べた良知と、町田はしっかりと握手を交わした。
++ ++ ++
「…ってか、なんでお前も一緒についてくるわけ?」
滑り台やらブランコやらを見つけてはキャッキャとハシャイで遊んでいる幸人に向って、島田がぼやく。
「だって、僕お手伝いさんだから」
答える幸人に
「それ、答えになってないし」
と溜息をつく。
だいたい、コイツは何者なのか。
良知君の家に住み込みのお手伝いとして突如現れた幸人。
良知君が「見つけ屋」を引き継いだのと同じ位に「見つけ屋」に現れ、何時の間にか学校も一緒になり…俺達と同じクラスに加わっていた。はっきりいって、正体不明なのである。
「しかも、良知君、けた違いにコイツに甘いしな…」
何か、秘密があるのかもしれない。
…でも。
秘密にしたいのなら、あえて詮索するような事ではない。
そんな無粋な真似をするのは男としてかっこ悪い事極まりない。
そう思っている島田は、あえて深くは触れずに幸人に接してきているのだ。
「おい、お前等遊んでないで来いよ」
石田の声がして、もう1度滑り台へと向おうとする幸人の襟首を掴まえて引っ張っていく。
「あ〜、もっかい滑りたい〜」
駄々をこねる幸人に
「また今度な」
と、一言告げて、石田達の所へ向う。
「…今度っていつ?」
引き摺られながらこちらを見る幸人に
「…明日、とか?」
適当に答えた島田に
「じゃあ、島田も一緒にこようね、明日」
ニッコリと笑う。
…なんで俺が。
そう思いながらも
「仕方ねぇな。わかったよ」
と答えてしまう辺り、自覚は無くとも、島田もけた違いに幸人に甘かったりするのだ。
「町田さんが昼、何処に居たか思い出したから移動するぞ」
皆の所に辿りつくと、石田がそう告げた。
「え?思い出したの??」
「昼は、ファーストフードでずっと座っていたらしい」
「…ずっと?」
「うん、なんか考え事でもしてたんじゃないかな」
良知の言葉に町田が少し首を捻る。
「多分、考えてたんだと思うんだけど…何を考えていたかは…」
「それを、思い出しに行きましょう」
そう言って、良知は先を歩きはじめた。

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第3話です。
いや、すっかり長い話になって…(苦笑)。
あの、1つのテーマあたり3話くらいで完結させようと思ってたんですけどね、全然終わってませんね(汗)。
まぁ、気ままに頑張ってみます(笑)。
えっと、今回伏線で幸人にも触れてみましたvv
謎の人物幸人vv果たして彼は何者なのか??
実は全く考えてません(爆)。

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