++第6話++

「はぁ…」
良知は大きく溜息をつくと、窓の方を見た。
澄み切った空。雲ひとつない青い空。
なのに…
「どうして、僕の心は晴れないんだろ」
そう。良知は沈んでいた。
町田の事件以来、依頼人は全く現れず…
それを機にしばらく勉強に打ち込もうかと、思っていた矢先に待っていたモノ。
溜息の原因がまた増えた…。
「…まぁ、楽しいからいいんだけどね」
苦笑して、良知はまた机に向かった。
その時、
「暇そうだね〜」
と、ドアを開けて入ってきたのは
「そう、じゃなくて暇なんだよ。だから、来ても何もないよ?島田」
「何もないから、来たんじゃん。良知君、一人じゃ暇でしょ?」
ニィ〜っと笑った島田に
「お心遣い、感謝します」
とワザとらしく頭を下げる。
その時、
「すいませ〜ん!!!お客様ですよ〜!!!」
と、ヒョコっと覗く幸人。
「お客様〜??」
思わず声を揃えて叫ぶ島田と良知。
その後ろから、見え隠れする眼がオドオドしている。
「あ、すいません。驚かせましたね。大丈夫です。怖くないですから…さぁ、こちらへ」
ソファに案内すると、少しビクビクしながら、腰を下ろす。
「お名前は?」
「…」
「あの…お名前」
「・・・・・・」
「ねぇ、」
幸人が良知をつついてきた。
「何?幸人」
「無理だよ。だって…」
幸人は良知に耳打ちする。
「喋れないみたい、彼」
「え!?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった良知は、依頼主に向かい
「すいません」
と謝ると、幸人に言った。
「紙と、鉛筆用意してくれる?」
++ ++ ++
「とりあえず、お茶飲みましょうv今日はチャイですvv」
と、紙と共に運ばれてきた紅茶に口をつけ、良知は依頼主に紙と鉛筆を差し出した。
「お名前だけ、先に教えていただけますか?」
依頼主は、コクっと頷くと、名前を書き出した。
「…屋良さん、ですか」
コクっと頷く。
その時、
「重いのじゃ〜!!!疲れたのじゃ〜!!!」
と、溜息の新たな原因が帰ってきた。
「ちょっと、ラッチってばこんなに買出し頼むなんてひどくない?重いじゃん。俺か弱いのに」
ぶつぶつ文句を言いながら入ってきたのは町田慎吾。前回の依頼主である。
「ひどいも何も、慎吾何も持ってないのじゃ!!!全部僕が持ったのじゃ」
怒っているのは大野智。町田の親友である。
何故、この二人がここに暮らしているか、というと…
前回の依頼料を町田は支払っていなかった。
最初に、その事に気がづいたのは島田だった。

「金、もらったっけ?」
夕飯時に呟かれたその一言で全員が「もらってない!!」と立ち上がり、良知は急いで町田に連絡を取った。
その時、町田が告げた一言は…
「あ、お金…ないです」
唖然として黙り込んだ良知の手から、受話器を取り上げた石田は
「明日から、ココでバイトします?それで依頼料返してください」
と良知の許可も得ず勝手に決めてしまい、翌日なぜか大野も連れて町田がやってきたのだ。
「通うの大変なんで住み込みで」
といきなり町田に言われ
「慎吾一人じゃ不安だから僕も住むのじゃ〜」
と大野に迫られ、
「楽しくなるね〜vv」
と幸人にニッコリと微笑まれ…
結局居候が二人も増えてしまった。

だいたい、買出しが多い多いって文句を言っているけど、その大半が居候である彼らの胃袋に入るのだ。文句を言われる筋合いはないんじゃないか。
と、思ってはみたものの、それを言っては島田や幸人、石田だって同じじゃないか!!と逆ギレされて余計面倒な事になるので、黙っていた。
「あれ…?」
不図、町田が依頼主を見て止まった。
その声に、クルっと振り向き、猫のように眼をクルクルさせた屋良は椅子から飛び上がり町田に飛びついた。
「やっぱり、屋良っちだ。どうしたの?」
返事はない。
「ラッチ、今度の依頼主、屋良っちなの?」
屋良を抱えたまま尋ねた町田に
「知り合い?」
と聞くと
「後輩」
と答えが帰ってきた。
「まだ、詳しい話を全然聞いてないから、依頼が何なのかもわからないんだけど」
聞かせて、もらえますか?
尋ねた良知に屋良はコクっと頷き再度紙に文字を書き始めた。
その文字を見て…
「マジかよ…」
島田の呟きと同時に、全員が驚愕の表情をみせた。



                 『探してください…僕の、声』


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第6話です。
やっとのことで新たな依頼(苦笑)。
実はこの依頼、町田さんの依頼を書き始めた頃からずっと考えてたんです。
あっためすぎ(爆)。あっためた割りに何も育ってないし(自爆)。
それにしても、すごい勢いで書きました。
所要時間20分ほど!!!
勢いです、勢いで生きてます(笑)。

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