++其の十++
「俺らが図書室に向かおうとした時だったんだよ」
萩原の家に呼び出された風間は、一緒に七不思議を体験した生田も連れてきていた。
「俺らの後ろの方から足音が聞えた気がして、振り向いたんだ」
でも、そこには誰もいなかったという。
「それって何時ごろ?」
尋ねた石田に、風間は少し考えながら答える。
「正確な時間はわからないけど…確か、昨日の風紀委員会が終わった後にどうしても読みたい本があって…」
「委員会、ちょっと長引いて、終わったのが19時位だったから、その後すぐだったと思うよ」
生田が答える。
「で、その足音はどうなったの?」
島田が続きを促す。
「振り向いても誰もいなかったから、また歩き出したんだ。そしたら、また聞えてきて、」
「怖くなって振り向かずに歩きつづけてたら、僕らを抜いていったんだ」
思い出すだけでも鳥肌がたっちゃうよ…
と、怖そうに話す生田。
「確かに、俺らの横を通りぬけていった感じがしたんだ。で、その足音は図書室のドアの前あたりで消えたんだよ」
「で、実際風間達は図書室に入ったの?」
良知が聞くと同時に生田が叫ぶ。
「行くわけないじゃん!怖くて入れないって」
「そっか…じゃあ、実際その足音の主が図書室で本を飛ばしたりしてるのを見たわけじゃないんだ」
と、チョコレートを頬張りながら呟く萩原。
「確かに、図書室で、実際にそういう事が起きていたかはわからないけど…」
「でも、足音が消えたのは図書室で間違えないと思う」
声をそろえて力説する二人。
「あとは、実際に見てみるしかないね」
いつになく積極的な屋良。
「どうしたの、やる気十分じゃない?」
良知が笑うと、
「だって、早く解決すればもう怖い思いしなくていいもん」
長くなると、体もたないよ。
ため息混じりに呟く。
「確かに、早く解決しないと夜、安心してゆっくり寝れないよねぇ」
幾つ目かわからないチョコを頬張りながら、切実な顔をする萩原に
「…てか、いっつも電話したら寝てんじゃんっ」
思わず突っ込みをいれてしまう島田だった。
+++++++++
「で、19時に目撃した霊と会うのに、どうして夜中なわけ?」
不満そうな屋良に
「夜中の方が会える確立は高いと思うよ」
先を進む良知が答える。
別に会いたくはないんだけど…
と、一気に弱気な屋良をよそにもうじき渡り廊下にさしかかろうとしていた。
「なんだか、イヤな空気だな」
石田がボソっと呟く。
「確かに、ちょっと寒い気がする」
島田も辺りを見回しながら答える。
時期的には、夜中だといってもそんなに寒くはないはず。
それに、ここにたどり着くまでは、さして寒いとは感じていなかった。
が、渡り廊下の近くに来たとたん、空気が変わった気がする、いや、確実に変わっている。
「やっぱり…怖いんですけど」
怯む屋良を振り向き良知が言う。
「…ここで、待ってる?」
少し考えた屋良は…
「そっちのが怖い」
と、仕方なく後ろからついていく。
渡り廊下の真中にさしかかろうとした時、島田が突然立ち止まった。
「…聞える」
全員が止まる。
「聞えるよね、今」
微かに、後ろの方から足音が聞える。
今、ここには自分達しかいない。全員が立ち止まっている中、足音が聞えるわけがないはず…。
「近づいてきてるよね」
萩原が呟く。
「そろそろ念願のご対面ってところかな?」
そう、笑っておどけてみせた良知は、言葉とは裏腹に真剣な眼差しで後ろを振り返った。
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すいません…ひっぱりすぎ?(笑)
この小説、楽しみにしてくれてる方、こんな内容で怒ってませんかねぇ(汗)。
やっと4つ目と5つ目の不思議に到達しようとしておりますが、まだまだ先は長いです。
最後の方には、またあの「声の主」が登場してくる予感(笑)。
…とにかく、頑張ります。
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