++其の十四++
『昔の私とは違うの』
少女は笑いながら近づいてくる。
『もう、あんた達なんかに負けない』
キッと良知を睨みつけた少女。
『今度こそ、復讐してみせる』
彼女の髪が襲いかかる。
その髪は容赦なく、島田の腕を切り裂き、石田の頬を掠めて、大堀や福原へと襲いかかる。とにかく、全ての人間を見境なく襲っているのだ。
「このままじゃ、彼女救われない」
良知が言う。
「彼女、見えなくなってるんだ、周りが。気づかせてあげないと…」
良知が少女に何か言いかけた時、少女の髪が良知の体を貫いた。
「っ…」
蹲る良知。全員が駆け寄る。そんな中
「ふざけんなよっ」
そういって少女の前に飛び出していったのは屋良だった。
突然飛び出した屋良に動揺する少女。
「聞いてりゃ勝手なこといいやがって。昔と違う??どこがだよ。全然変わってねぇじゃん。関係ない人間巻き込んで、自分の復讐の為にさぁ。だいたい、自分の事ばっかじゃん。可哀想だとは思うよ?でもさぁ、ちょっとわがまま過ぎない?だいたい、復讐なんてその男だけにすればいいじゃん。俺ら関係ないし。それにさ、気づいてる?君、めちゃめちゃ醜くなってるよ?顔が、とかじゃなくてさ。女の子として、や、人としてまずいんじゃないの?せっかく助けてくれた大野君の努力もムダにしちゃってさぁ。こんなに君のこと心配してるラッチ達まで怪我させてさぁ。ムカツクんだよねぇ。自分ばっかり不幸だとかさ、何もかも人のせいにしたりとか。君のやってることってさぁ、たんなるヤツあたりだよねぇ。そんなんじゃいつまでたっても救われないんじゃないの?」
…と、一気に霊に向かって説教する屋良。
全員あっけに取られていたが、一番驚いていたのは少女だった。
『な、なによぉ…。だって、そうやってずっと生きてきてたのよ?全部人のせいにすれば楽じゃないっ。あの時だって…死んでやるって言ったのは勢いだったのに。あの男、だったら窓から飛び降りろよって。怖くて、躊躇してる私の背中押したのよっ!なんとか窓に掴まって助けてっていっても、あの人見てるだけだった。それでも、私が悪いっていうの??』
泣き叫ぶ少女に屋良は続ける。
「たしかに、その男は最低だよ。でもさ、だからってその後、君がしてきた事を正当化する理由にはならないと思う」
今からでも遅くないから…
「やりなおそうよ」
その一言に崩れ落ちる少女。
そんな少女に萩原が近づく。
「僕ね、復讐には手を貸せないけど…君がやりなおす為には手を貸すことが出きるよ。どうする?このまま、僕らと戦う??」
優しく諭すような萩原の言葉に少女の心は浄化されていく。
『今まで、誰も私の事怒った事なかったの。だから、間違えちゃったのかな?悪い事してるって思ってても…誰も、止めてくれなかったの』
怒ってくれてありがと…
そう言って少女は眼を閉じる。
その少女に手をかざし、萩原はゆっくりと呪文を唱えた。
+++++++++
「まったく、初めてだよ。霊に説教する人なんて」
見たかったなぁ。
そう言って笑っているのは、大野についてきた町田。
「だって。頭に血ィ昇って…気がついたら怒鳴ってたんだもん」
そういって拗ねる屋良に
「でも、今回は屋良くんのおかげで助かったようなもんだし」
と萩原。
「かなり強かったよ、あの子。僕の力だけじゃ勝てなかったと思う」
うん、皆の力だね
と微笑みながらお菓子を口にする。
「…だいたいさ、俺ら今回怪我しにいったみたいじゃない?」
ふくれる島田。
「なんにもイイとこなしじゃん」
石田も不満そうだ。
「そんなん、俺らなんてどないすんねん!!」
イイ迷惑や…
呟く大堀に
「ま、時計もなおった事やし、ヨシとしようや」
と笑う福原。
「それにしても…どうせ来てくれるならもっと早く来てよね、大野君」
屋良が視線を送る先には、良知の傷口を癒す大野の姿。
「だって…お腹空いてたから…ご飯食べてたのじゃ」
そんな大野の答えに苦笑しながら良知が言う。
「ま、おかげでたいした怪我にならなくてすんだし。それより、なんで町田君いるの?」
「…なんだよぉ、酷くない?その言い方。俺、今大野の助手してんの。ほら、大野1人じゃ頼りないでしょ?だから…」
「町田さん一緒じゃあ、もっと頼りないじゃん」
怖がりのクセに…
そういって笑う屋良。
「あー!!そういう事いう?屋良っちだって人の事言えないじゃん!!!」
言い返す町田。
そんな光景を見ながら、萩原が大野に言った。
「…大野君が出てきたって事は、最後は今まで以上に危険だって事だよね」
だから、助けにきたんでしょ?
不安そうな萩原。そんな不安を拭い去るように、大野が笑って答える。
「そればっかりは、やってみなくちゃわかんないのじゃ」
ま、なんとかなるでしょ。
そう言ってお菓子を食べる大野の目は、言葉とは裏腹に真剣だった。
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十四でーっす(笑)。
今回は屋良っちメインでお送りいたしました。
逆ギレしたら一番説教たれそうなのは屋良っちかな…と(爆)。
一応、幸人が主役っぽいですが、全員それぞれに活躍する場面が欲しかったんで。
これで、全員活躍した…よね?(笑)。
そして!!とうとう登場、大チャン&町田(笑)。
ということで、そろそろ話も大詰めになってまいりました。
もう、終わらせたいです(爆)。
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